見出し画像

東海道行脚 清水〜静岡編

うれしいことに、この日月曜日の連休、旅行できることになり、東海道を歩きました。

東海道行脚を始めたキッカケは、何気なく用事のついでで、静岡のひと区間を歩いたことから、他の区間も歩いてみるか、と用事のついでに歩いているうちに、本格的になったものです。

一番最初はいつだったのか、昔のFacebook投稿を検索すると、清水から興津でした。

静岡の芸術劇場での演劇を観るのに、前夜の夜行バスに乗ったのですが、静岡駅で降ろされたのは午前5時。

やることがないので地図を見ると、清水駅まで始発電車で戻れば、そこから浮世絵で有名な薩埵峠を越えて、桜えび漁の由比まで行けそうなので、歩くことにしたのです。


街道沿いは、江戸時代からのお寺も多く、旧跡名所がたくさんで、気に入ってしまいました。

これが2016年の11月。それから今年で7年かけて、東京の日本橋から、愛知県の豊橋の先まで歩きました。

と、思っていたのですが、歩いた記憶と、投稿がない区間に気づきました。

清水から安部川です。

距離にして18kmくらい。

そんなに歴史を感じるような区間じゃないから歩くのはいつでもいいや、と思っていたのですが、今回の突然の2日のフリーにはピッタリの行程でした。

先月体調を崩してから余り運動をしていないし、まだ暑いので、余り無理は出来ないのが一つの理由。

もう一つは、ある天ぷらの仕込みに、静岡の杉錦さんの日本酒を各種買って試してみたい、とも思っていて、まさにピッタリのタイミングでした。

今朝は4時に起きて準備し、始発の各駅停車を乗り継ぎ、午前八時過ぎに清水へ到着。

少しでも涼しいうちに歩き始めます。

コースは全く昔の面影がない旧道をひたすら歩きます。

東海道らしい写真が一つもない。


江尻宿の近くの橋のオブジェ
旧道東海道が、長い幅の線路の下をくぐる形になっていて、影がきれいだったので。


アップ

前回の石巻旅後に体調を崩した反省から、正午には目的地に着く(暑さのピークを避ける)ようにプランをたてた。

最近運動をしていなかったので、たった13kmくらいでもかなり足に来た。歩道橋すら苦しい。

それでも正午ちょうどに、ゴールの静岡駅に着く。

どこも飲食店は混雑していて、朝から何も食べていなかったので思考能力も落ちて、サイゼリヤに並んでしまった。

ピザと豆の前菜とドリンクバーで900円って、本当にすごい。

静岡駅周辺は、どこで何をして良いのか分からず、宿泊地である3駅先の焼津に向かった。

焼津までくるとビジネスホテルの値段がかなり安くなる。そして、大好きな飲み屋さんがある。

薩埵峠を歩いた翌年、沼津から富士まで旧東海道を歩いた時は、夕方に静岡芸術劇場の野外でタニノクロウさんの舞台があり、その時はゴールデンウィーク中で静岡市内で宿が取れずに、焼津に来たのが初めてだった。

夜の10時前にようやく焼津駅にたどり着いて、駅前が真っ暗だった時には愕然とした。

飲み屋さんがないんじゃないか、と。

そんな失意の中、ここしかない!と飛び込んだお店が最高だった。

ツマミも良かったが静岡の日本酒がたくさんあり、お燗もしてくれる。

そこでびっくりするような日本酒の出会いが、「杉錦」。

なんとも言えない複雑な味。米の味が見事にじっくり酸味に変化している感じ。

キレイでスッキリした日本酒とは全く別の世界。

今回もう一度、ここで杉錦を飲みたい、と焼津にやってきた。

ホテルのチェックインまであと1時間。

日陰のベンチで目をつむって、音楽を聴いて時間を過ごす。

静岡よりも凉しい。

少しずつ、気持ちも楽になってくる。

焼津のメインの商店街、前に来たときよりもなんか明るくなって、新しい店が少し増えている。

最近、自分の好きな街が、何年かぶりに行くと少し明るくなっている感じが多くて嬉しい。若い人達がセンスの良い店を出し始めてるのかな。


こんな写真じゃ分からないだろうけど、ひっきりなしに若いお客さんが入っていた。

チェックインの時間になったので部屋に入ってエアコンをかける。

外でも1時間のクールダウンをした上で、静かな部屋で一人きりになると、本当に落ち着いた静かな気持ちになる。久しぶりだ、この感覚。

行きたかったお店が開店する少し前には、かなりお腹が空いてきた。ただただ楽しみだ。

ホテルと同じブロックにそのお店はあり、人気店なので、開店直後に行き、無事に入ることができた。


どれもとろりと濃厚で旨い。生姜もちゃんとすってくれている。

生ビールの後、焼津の酒、磯自慢本醸造をまず。
キンキンに冷えていたので、手で温めながら少しずつ飲む。ぬるいくらいのほうが、自分にはいいかな。

次に、杉錦の山廃純米天保十三年をお燗で頼む。


全部静岡の酒

いや~、杉錦、酸味や米味の深いバランスが最高だ。


この色もたまらないです。

この味には何が合うだろうか、何を頼もうか考えて思いついたのは、野菜の自然な苦みかなと、甘長とうがらしの炭火焼を頼んだ。

割と合っているが、何か違う。

何だろと、考えながら、あれっ、ひょっとしてと、甘長とうがらしに添えられていた、おろしたての生姜をひとつまみして杉錦のお燗を飲むと、見事に決まった。これで良いのか!なんてシンプル。

杉錦さんは江戸時代から続いていらっしゃる酒蔵で昔の工法を大切にされているそうなんですけど、そうか、昔の人のツマミなんて、質素なものだったはずで、こういう組み合わせだったのか、と思わされた。お新香とか、塩とかでも充分美味しかったのは、こういう味だからだ。

いい経験をしたなぁ。

店がMAXに混んできた。そろそろ俺は仕上げだ。

最後に、カツオのヘソ(心臓)の煮込みを頼み、せっかくなので初めて見た杉錦さんの焼酎をお湯割りで頼む。


静岡の芋だそうです。

香りが立ちすぎない程よい味わいで、煮込みと合わせていただきました。口の中でスープになる感じが良い。

最後になって気づいたが、大きなコの字形のカウンターのお客さんは男女カップルばかり。一人で飲んでいるのは自分だけだった。

こういう地域性ってあるのかな?
一人で飲んでるなんてアリエナイ、みたいな。

酒腹八分目まで飲んだので、帰ることにする。

高級感があるお店なのに、一杯あたりのお酒の量が多いこともあり、安く感じられた。良いなあ。

少し遠回りして、川沿いを歩いてコンビニへ。


久し振りに、のんびりした旅ができている。

明日は、残りの安部川から静岡まで、たったの5キロ。

ゆっくり歩こう。

明日は静岡市で、杉錦を買って帰るのだ。