【怪奇小説】『サナトリウムに』-最終回-
町外れの山道や食堂などを転々と車で移動しながら、宇野は夜が訪れるのを待ち続けていた。ようやく陽が暮れだし、辺りが暗くなり始めると、宇野は人気の少ない場所にあるコインパーキングに車を停め、座席をリクライニングさせ、持参していた帽子を顔に被せ、顔を隠しながら寝たフリをして時間を潰した。これからやることを考えたら、なるべく雨里の住人に顔を見られたくはなかった。
田舎町の夜は静まり返るのが早い。午後十一時を過ぎる頃には、雨里の町中を往来する人はほぼ皆無となっていた。宇野は周囲に