【怪奇小説】『サナトリウムに』-第四回-
「市役所の方?」
女が聞いた。
その声で、棒立ちで気の抜けた顔をしていた宇野は我に返った。女の方に向かって歩きながらおもむろに名刺入れを取り出し、中に入れておいた名刺の中から一番状態の良い物を選んで抜き出す。それを差し出しながら、
「いいえ。市役所からリゾート開発の依頼を受けて調査に来た、リゾート会社の者です」
宇野は咄嗟に、調査の一環としてやって来た態を装った。
女は名刺を受け取り、黙って文面を眺めている。
「青い鳥・・・・・・有名なトコですね。このサナト