【怪奇小説】『サナトリウムに』-第一回-
中部地方の内陸に位置する山間部に、竹泉市という人口三万人に満たない小さな地方都市がある。自然に囲まれ、澄んだ空気と、夏場でも涼しく過ごしやすいことから、この竹泉市を――正確には、市の北側にある雨里という地域を――全国から観光客を呼びよせる避暑地としてリゾート化する案が、市の町おこし計画として立案されたのは、お盆を控えた七月の半ば頃のことだった。
その町おこし計画は都内のリゾート開発会社に持ち込まれ、数日のミーティングを経たあと、実際に集客を見込めるリゾート地に成りうるか