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これ、WEBデザイナーに足りてなくない? 視覚表現に必要な基礎力とクリエイティブに対する姿勢

元WEBデザイナーが、noteで目にして気になった事をつらつらと書いていきます。今回はWEBデザイナーに不足していそうな基礎力、クリエイティブの仕事に対する姿勢について語ります。職業訓練・スクールで学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。


その1 造形的感覚・造形的表現力

「絵やイラストは描けません」と言ってしまうWEBデザイナーは多いと思います。描けなくても仕事はできますし、「情報デザイン」に限れば、絵を描く必要、絵を描くことが上手くなる必要はありません。

色彩表現に関しては、理論を学べばシステマティックに色を使えるようになるので、誰でもある程度はできるようになりますし、UI設計においてはシステマティックな色使いの方が好ましい事もあります。

一方でモノのカタチの良し悪しに対する感覚、抽象的概念・思考をカタチにする力を必要とする仕事をする際、美術の基礎を学んだことがない、絵が描けない、まともに描いた経験がないのはデメリットになります。

自身の造形的感覚・造形的表現力を試したいのなら、ロゴまたはアイコンのデザイン、タイポグラフィをやってみる事です。自分の思い通りのカタチ、イケてるカタチを表現することができますか?

また、グラフィックデザインに対して「難しい」等の苦手意識を抱くWEBデザイナーも多いと思います。その原因は造形的感覚・造形的表現力の不足にあるのかもしれませんよ?

芸大美大のデザイン科受験生は、専攻科目に関係なく基礎実習としてデッサン(観察力、描写力の訓練)、平面構成(色彩感覚、演出・表現力の訓練)、立体構成(空間的・立体的造形感覚、演出・表現力の訓練)に取り組みます。なぜならそれらが造形的感覚・造形的表現力を養う基礎訓練だからです。

そういった基礎訓練を飛ばして、デジタルスキルとデザイン理論だけを学んだWEBデザイナーに、造形的感覚・造形的表現力が欠如しているのは仕方のない事だと言えるでしょう。

その2 演出・訴求力、それらを追求しようという姿勢

数か月でデザインスキルを習得することを売りにしているスクールの出身者、実務未経験からいきなりフリーランスになったデザイナー、低価格帯の案件ばかりを請け負っているデザイナー、UI/UXと集客・販促を一緒くたにしているデザイナーに多くみられる特徴です。

演出・表現力に欠けるアウトプットのほとんどが、テンプレートに写真、文章を当てはめただけで、表現に対する創意工夫、作りこみ、こだわりに欠けた作りになっています。

その理由として、フロントエンド技術の不足、良質なインプットの不足、こだわりの欠如(予算の問題、モチベーションの問題等)、アイデアの欠如、経験不足等、様々な要因が複数からんでいるものと思われます。

大手企業や広告代理店の案件では演出力、訴求力、品質、どれも高いものを要求されますが、低価格帯の案件ではクライアント側の品質に対するこだわりが低い、クリエイティブに対する知識、経験が乏しい場合が多く、経験豊富なデザイナーでも、低予算のためにそれに見合った水準に提案内容、アウトプットの質を落としがちです。

デザイナー側に実務経験が不足している場合、自身にできる・知っている範疇の提案、アウトプットをしてしまいますが、クライアント側の知識や質に対するこだわりが低いと、提案に対する修正要望もなく、低水準な品質のまま採用されてしまうという事態が起こります。

楽だから、予算が低額だから、という理由でノーコードツールの既製品テンプレート、既製品Wordpressテーマを未加工のまま利用して、写真と文字をテンプレートにはめ込む作業は、料理で例えるなら「プロの料理人」を名乗っておきながら、既製のお惣菜を買ってきて、皿に盛りつけてお客様に提供する事と同じと言えるでしょう。そのような質の仕事で幾つ実績を積み重ねようと、デザイナーとしての価値は高まりません。

低品質な実績ばかりを積めば積むほど、当然ながら高価格帯の仕事は獲得しづらくなりますし、条件の良い企業への就職を希望しても、採用されるのは難しくなります。

UX/UI設計と集客・販促では求められる資質、スキルが違う

UI設計において重要なのは「わかりやすさ」「使い勝手の良さ」、注力すべきは情報設計、導線設計で、集客・販促において重要なのはユーザーの「モノ・サービスを知る機会を与える」「購買意欲を掻き立てる」事、注力すべきはコンテンツの作りこみ、表現、演出ではないかと筆者は考えます。

UXに関しては情報設計、集客・販促どちらにもまたがっている、それらより上位のレイヤーに属するものといえます。UI設計、集客・販促どちらをやるにしてもUXは意識すべきことですが、方向性、ゴールはそれぞれに違います。そして、UXそれ自体は「視覚的表現を必ずしも必要としない」「カタチにする必要がない」、概念を設計すれば目的達成になるので、美術的素養・基礎は必要なかったりします。UXに必要なのは美的センス、表現力ではなく、おもてなしの心と情報分析、論理的説明力ではないでしょうか。

WEBデザインのなかでも、特に広告的要素の強いデザインを志向する人はUX/UI設計との違いを明確に意識し、必要なスキル、知識、感覚を養う事を心がけましょう。

WEBデザイナーは中途半端?

最近はUI設計、広告の方向性の違いを理解し、それぞれに特化した人も増えていますが、それでもなお「WEBデザイナー」はWEBの幅広い分野を網羅する「なんでも屋」的な立ち位置を求められ、WEBデザイナーを目指す人達も「そういうもの」だという認識でいると思います。

「なんでも屋」「便利屋」という立ち位置も悪くはないと思いますが、より長く仕事を続けたい、収入を増やしたいと思うのであれば、得意分野に振りきるか、特定分野に強みのあるWEBデザイナーを目指すのが良いのではないでしょうか。

まとめ

WEBデザイナーだからといって、美術の基礎が不要というわけではない。「思考、アイデアをカタチにするための絵を描く」等々の造形的感覚・造形的表現力を養う練習も必要。ただし、超絶に上手くなる必要はない。

演出力・訴求力を高めるためのスキル向上、インプット収集を心がけよう。低予算、低品質な案件ばかりこなして、その水準に慣れてしまうとデザイナーとしての自分の価値を下げる事になりかねない。

自分のやりたい事はUX/UI、情報設計なのか、集客・販促等の広告関係なのか、はたまたそれ以外の上流工程なのかを見極めよう。やりたい事によっては方向性、求められる資質・スキルが全く異なる場合もある。

自分のデザイナーとしての仕事の価値を高めたいのであれば、中途半端な「なんでも屋」「便利屋」からは早々に抜け出そう。


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