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私の好きなドビュッシーピアノ作品ベスト10を発表する

私は、クラシック音楽の作曲家の中で一番ドビュッシーが好きです。初めて聞いたのが、今から20年くらい前です。

クラシック音楽全般というよりも、私自身ピアノが好きだったこともあり、ピアノ作品ばかり聞いているのですが、じゃあ「ドビュッシーの中で好きな順に並べるとどうなるだろう?」と思ったとき、20年間一度も考えたことなかったので、今回初めて作ってみました。


このランキングの意図について

今回作るランキングは、完全に「私が好きかどうか」。ただそれだけです。「音楽的に優れているか」「音楽史として価値のあるものか」とかそういう小難しい話でもなく、「私以外の人におすすめできるか」とかそういうものでもありません。ガチで私の主観です。

余談ですが、ドビュッシーは、ロマン派の作風が色濃く現れる初期の作品から、徐々に自分のスタイルを確立していくので、作曲時期によって作風が結構異なります。そのため、「ドビュッシーおすすめランキング」というのをつくるのが結構難しいです。難しいと言うか、クラシック初心者、近現代音楽初心者など、「誰におすすめするか」で結構変わるかなという感じです。

では実際にランキングを

ちょうどドビュッシーのピアノ作品全集ということで、以下のアルバムを最近自分のApple Musicのライブラリに追加したところだったので、曲名に関してはこちらに収録されている和訳に従います。私が昔聞いていたピアノ作品全集は別のピアニストで、以下のアルバムにはそこに収録されていないものもありました。このアルバムでは、ドビュッシーのピアノ独奏作品は87曲ありました。

では以下、実際のランキングです。参考までに全曲YouTubeのリンクも貼っておきます。なお作品の作曲年はこちらのページを参考にしています。
https://enc.piano.or.jp

1位:12の練習曲 Deuxieme livre XI-組み合わされたアルペッジョのための (作曲年:1913年)

ドビュッシーの曲の中で知名度が高いわけではありませんが、私が最も好きな作品がこれです。「12の練習曲」は1913年に作曲されたドビュッシーの最晩年の作品であり、これまで以上に近現代音楽の特徴が現れているので、ドビュッシーの中でも比較的とっつきづらい部類です。

ただ、その中でもこの「組み合わされたアルペッジョのための」は明確な変イ長調の調性を持ち、近現代音楽特有の不安定な和声中に垣間見られるロマン派の香りのバランスが絶妙な美しい音楽です。

(12の練習曲は、私の技術がなくてピアノで弾いたこともないので、音楽的にどんな特徴があるかは、すみません全く無知です)

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=08w3XPE1od0lFthA&t=17621

2位:映像 第2集 葉ずえを渡る鐘の音 (作曲年:1907年)

この曲は「ドビュッシーの作風とはどんなの?」というのを説明するのに一番最適な曲と言っても過言ではない、私が思う「一番ドビュッシーらしい作品」です。語弊があるかもしれないので、正確に言うと、ドビュッシーが使われていた技法がわかりやすく出てくるので説明しやすい、という感じでしょうか。

絵画的で描写的な音楽表現はもちろん、教会旋法、対位法、東洋の香りが漂う5音音階、全音音階、和音の平行進行などドビュッシーが愛用した技法がこれでもかというくらいたくさん盛り込まれています。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=MN5E2TbyhkgLHA0d&t=7094

3位:ピアノのために トッカータ (作曲年:1896年)

ドビュッシーがロマン派音楽から近代音楽へ変わり始めた分岐点ともいえる「ピアノのために」の第3曲目です。これは「ドビュッシーらしさ」という点では、「映像」や「版画」ほど個性はありませんが、このトッカータは純粋に技巧的でかっこいい曲です。個人的にそこが気に入ってます。16分音符の高速な指の動きが、冒頭1小節目から最後までほとんど止まらず演奏される非常に疾走感のある曲です。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=MN5E2TbyhkgLHA0d&t=4178

4位:映像 第1集 水の反映 (作曲年:1905年)

これは「近代音楽の祖であるドビュッシー」という側面で捉えた際のドビュッシーの代表作品の1つ「映像」の第1曲目です。ドビュッシー自身も「映像」の仕上がりには、相当な自信を見せていたことが知られています。

「水の反映」という情景を想起させる表題がつけられており、それが音楽で巧みに表現されています。水に関する作品だと、似たような作風でラヴェルの「水の戯れ」が有名ですがが、こちらは純粋な水に着目したような表現に対して、ドビュッシーのほうが、水を含む周りの景色を含んだような表現のように思います。映像第2集に見られる5音音階や全音音階はこの曲ではあまり出てきません。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=vk1-f4rSViG6n2Ge&t=6169

5位:ベルガマスク組曲 パスピエ (作曲年:1890年)

ベルガマスク組曲といえば、最も有名なのが「月の光」でしょう。ただ、私は月の光よりもこの4曲目のパスピエを気に入ってます。ベルガマスク組曲は基本的にロマン派の作風ですが、このパスピエでは、教会旋法の使用などによって従来の明確な調性感を薄めています。その意味で、ドビュッシーらしい表現も垣間見られます。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=bjJQ3q6viXCBh9WL&t=2449

6位:映像 第2集 そして月は廃寺に落ちる (作曲年:1907年)

映像第2集の1曲目「葉ずえを渡る鐘の音」に続く2曲目も、情景を音楽的に描写した素晴らしい作品です。ある月夜に佇む人影がなく寂れた東洋の寺およびその静寂を表現した音楽です。盛り上がりがなく淡々と進む曲ですが、「葉ずえを渡る鐘の音」と同様、5音音階が使われており、ドビュッシーらしさがわかりやすく聞けます。

私はこれを中高生の頃に初めて聞いたとき、「何のドラマもなくつまらない曲だなぁ」と思ったのですが、あとから好きになりました。ピアノで実際に弾いてみるとなかなか楽しいです。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=U8wPNKa9P8zejAay&t=7348

7位:版画 塔 (作曲年:1903年)

こちらもドビュッシーを象徴する作品です。作曲年は「映像」よりも前であるためか、「版画」のほうが一般人にとっては聞きやすくおすすめです。ただ単に「塔」と訳されていますが、TowerではなくPagoda、つまり「仏塔」を指しています。

映像第2集を含め、ドビュッシーは東洋の趣を醸し出す5音音階を各作品の中に部分的に取り入れていますが、この「塔」は部分的ではなく5音音階を主体とした主題となっており、誰が聞いても明らかに「東洋っぽいな」と感じる音楽です。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=oRP_78fUDDI1NaFQ&t=4688

8位:12の練習曲 Deuxieme livre X-対比された響きのための (作曲年:1913年)

これはなかなか野心的な作品だと思っています。今回挙げたベスト10のなかでも「最も一般人受けしない曲」なのは間違いないのですが、音楽的に非常に興味深いです。タイトルが示すように、音と音の調和というより、「一見合わないであろう、この音とこの音を組み合わせたら不思議な響きになる」というのを模索してでき上がった曲のように思います。その意味で、少し多調性的な音楽に近いものを感じます。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=4JTFAEKFlqjnhr4Q&t=17315

9位:前奏曲集第2巻 V-ヒースの茂る荒れ地 (作曲年:1910年)

前奏曲集はドビュッシーの後期の作品であり、「版画」「映像」よりもさらにとっつきづらい作品ですが、その中でも聞きやすく美しいのがこの曲。ちなみに前奏曲集は全部表題が当てられ、どれも非常に個性的な仕上がりになっています。

ちなみに前奏曲集のなかで最も調性感を残しており聞きやすいのは「亜麻色の髪の乙女」ですが、その次に位置するのがこの「ヒースの茂げる荒れ地」でしょう。調性感は曲の中で終始明確ですが、主音へのわかりやすい解決はあまり見られず、それによって生じるなんとも言えぬ浮遊感はロマン派音楽に近いものを感じますが、それよりもさらに近代音楽に近づいた調性音楽です。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=OJadp2V2eBJQGCI6&t=12140

10位:レントよりおそく (作曲年:1910年)

これはドビュッシーの中では、あまり注目に値しない小品に過ぎませんが、ドビュッシーのなかでイージーリスニング感覚で聞ける作品。そこまで特徴はないのですが、逆にここまで紹介した作品よりは癖が強くないので、一般人的には聞きやすいです。ドビュッシーが初期の作品から後期の作品まで愛用してきた7度音程の並行進行が見られます。

調性感が強く残り音楽的にも難しくないので、わりと初期のほうの作品と思いきや、版画、映像、さらには前奏曲集第1巻のあとという後期の作品。この時期になぜこのような曲を作曲したのかは不明です。

▽YouTubeリンク▽
https://youtu.be/MZY_P6O28c0?si=4AMEDFryztNo4Nk8&t=11248

最後に

以上、ただ私の好みをただ列挙するランキングでした。せっかくなので最後にドビュッシーを聞きたい人に向けて個人的なおすすめを書いておくと、

近現代音楽はどうでもいいから、ドビュッシーのいい感じの曲を聞きたい、という人は、1896年以前の作品から聴いてください(今日のランキングにほとんどありませんが)。今日は独奏曲だけ紹介しましたが、4手連弾の「小組曲」も可愛らしい作品で非常におすすめです。

ドビュッシーの音楽の真髄を聞きたい、そこまで難しいのは避けたいが近現代音楽に入ってみたい人は、「映像」「版画」「前奏曲集」を聞いてください。

という感じです。参考になれば幸いです。


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