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【雑記】ドビュッシーは好きだがラヴェルは苦手

私は大学時代に人文科学科に所属していて、音楽学(Musicology)を最終的に専攻し、西洋のクラシック音楽に関する学問を少しかじっていました。この専攻を選んだのは、当時クラシック音楽に結構ハマっていたからです。

クラシック音楽、とはいいつつも私の聞いていたのはかなり限定的で、フランスの(主にピアノ)音楽でした。

基本的にクラシック音楽といえばその発展に大きく貢献してきたのはドイツの音楽家たちです。バッハしかり、モーツァルトしかりベートーヴェンしかり…

私はそうした音楽をほとんど聞かず、ひたすらフランス音楽を開拓してました。別にドイツ音楽が嫌いとか興味がないとかそういうわけではないです。

自分は音楽に限らず、主要どころを広く浅く、という楽しみ方よりも、あるものを起点にその周辺を深く、という「狭く深く」という開拓の仕方をすることが多いので、結果的にそうなったんだろうと思います。

じゃあ具体的にフランスのクラシック音楽って何?という話なのですが、ここで具体例をあげてピンとくる作曲家が少ないくらい、クラシック音楽の歴史の中でフランスの作曲家は影が薄いのです。

だいたい私は人にクラシック音楽の趣味を説明するとき、「フランスのクラシックを聞いています。例えばドビュッシーとかラヴェルとかです」と答えています。こう答える理由として、実際にドビュッシーは一番好きな作曲家として昔からずっと聞いてきたというのもあります。あと、フランスの作曲家で一番有名なのが、おそらくドビュッシーなので、そう答えるのが相手もピンときやすいという理由もあります。

実はラヴェルは好きじゃない

「ドビュッシーとかラヴェル」と書きましたが、ドビュッシーといえば絶対にセットで出てくるのがラヴェルです。お互い作風は似ており、ドビュッシーが好きな人はラヴェルも好き、という人は多いだろうと思います。実際に「フランスの近代音楽よく聞いています」というと「ラヴェルとかですか?」と聞かれることもあります。

その際、話がめんどくさくなるので「そうですね」と答えることも多いのですが、この回答は実際誤りで、ラヴェルはほとんど聞いてません。

私はフランス音楽は、ラモーやクープランのバロック音楽からメシアンの現代音楽までいろいろ聞いてきましたが、たぶん私が持っているフランス音楽の作曲家の音源で、再生していないランキングNo.1なのはラヴェルかもしれません。それくらいラヴェルは聞いてないのです。

なぜかというと単純にラヴェルの音楽が好きじゃないからです(※注意:ほぼピアノ作品しか聞いていないので、その話に限定しています)ドビュッシーは死ぬほど好き、感動するくらい好き、尊敬するくらい好き、大半の曲が好き、というくらいなのですが、ラヴェルの音楽は何度聞いても好きになれない。もちろん中には好きな曲もありますが、何度聞いてもやっぱり最初から印象は変わらないです。ドビュッシーは好きで、ドビュッシーに限らず近現代音楽の作風が好きなのに。本当不思議です。

ラヴェルのピアノ音楽が好きになれない理由

じゃあなぜラヴェルのピアノ音楽は好きになれないのか。詳しく書くと長くなるのですが、私の直感的な印象を言うと、「冷たく無機質」な音楽だからです。

ドビュッシーは、音楽的な特長として描写的、絵画的な作風がよく言及され、それは私も完全に同意しています。私がドビュッシーを好む理由であもあります。

ドビュッシーの音楽を聞いていると、頭の中に情景が表れ、すごく想像が膨らみます。例え絵画を連想させるタイトルがついた曲でなくとも、です。

一方でラヴェルの音楽はまったくもってそういうものを私は感じることがでできないのです。そもそも「水の戯れ」など一部の曲を含め、絵画的な標題音楽をそんなに多く書いていない、という理由もありますが、いろんな作曲家の音楽からは伝わってくる「音以外の何か(感情や、風景、描写などなど…)」がラヴェルからはまったく私に伝わってこないのです。

ドビュッシーの音楽を聞くと、自然の中に咲くきれいな花を見ている気分になるのに、ラヴェルの音楽は室内に置かれた造花を見ているような気分になります。

ラヴェルの中で好きな曲もある

ラヴェルはほとんど聞かないのですが、例外的に好きな曲があります。

「水の戯れ」はやはり彼の代表曲なだけあって、これは私も気に入ってます。

あと、「ラヴェルの中で好き」というレベルではなく、私が好きなクラシック音楽の楽曲のかなり上位に食い込むくらい好きな曲もあります。

それが「ピアノ協奏曲 ト長調」です。この曲全体が好きというより、実質的には叙情的な第2楽章が好き、といったほうが正解ですが。

この曲はラヴェルの晩年の曲で、「水の戯れ」のように近代音楽的な要素はまったくなく、むしろ非常に古典的な作風で書かれた、いわゆる新古典主義の作品です。

なので、近代音楽的な作品がほとんどだったピアノ作品で感じたラヴェルへの印象とはまた違ったもので、だからたまたま私の好みにヒットしたのかもしれません。

ただ、その例外的な作風を好きになる、ということは、言い換えればやっぱりラヴェルの王道的な作風は私に合わないんだろうなと思います。

ここまで書いてみて、アンチ・ラヴェルみたいな話になってしまいましたが、これはあくまで私の主観的な好みにすぎないので、決してラヴェルを貶めているわけではありません。本当に人の好みとは不思議なものです。

近代音楽が苦手だからラヴェルは苦手、という人がいれば、それはわかるのですが、ドビュッシーを含む、フランスの近代音楽作曲家の作品は好きなのに、ただ1人ラヴェルだけ苦手、というのは、本当に不思議だなと思っています。

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