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減量秘密兵器「鍋キューブ 濃厚白湯」

朝の失敗

今朝は7時に起きてジムで筋トレをした。仕事がしんどくなると相対的に仕事以外なんでも楽しくなるのか、ジムに行くのが楽しみになってきた。変態だ。だが筋トレは「こんなことをしても何の意味もない」と後悔する率が低いのが長所である。意味なんて幻想だが、無意味だったと後悔させられるものは無数にある。全ては自分次第だ。
だが、有名なマッチョには元鬱の人がたくさんいるらしい。恐らく脳内刺激以外にも意味のあることをやっている気がするからではなかろうか。

ベンチプレスをやってみたが故障が怖いしまだバランスがうまく取れなくて35キロでやった。アイシールド21で言うと小泉花梨というキャラと同じらしい。早くセナを超えたい。だが重りが怖くてしょうがない。俺は強くなれなくていい。優しくありたい。

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アイシールドめっちゃ面白いよ。こんなやつおったか?

朝起きてすぐにいつも体脂肪率を測るのだが、最近全然減らない。停滞期というやつかもしれない。なので朝ごはんは冷凍庫にあったシナモンロールを食べた。バタートーストも食った。ふざけるな。俺は自らを追い込んでいくタイプである。朝は頑張ったからいいけど今日はもう脂質を取らんからな。覚悟をしろ。

4時間後、俺は死ぬほど後悔していた。何であんなバカなことを…と絶望していた。俺は本来は美味しいものが何より大好きである。だからなるべく、食べる量を減らさないように有酸素運動やら筋トレをやって消費カロリーを増やそうとしているのだ。
食事は人生の楽しみである。つまり今日の俺の1日には楽しみがない。午後を生きる希望がない。生きる価値のない1日だ。


つらい、かなしい、やめてしまいたい。
いろんな負の感情が俺を襲う。もう鶏胸肉なんか食べたくない。ロースとんかつが食べたい。すると部屋の隅っこから視線を感じた。死んだ鶏の霊が俺を恨めしげに睨んでいる。ブラジルで殺された、可哀想な鶏。例えば名前はミゲル。彼にも人生があっただろう。友達がいて、家族がいて、世界を旅する夢を見ていたかもしれない。お前だって俺なんかに食われたくないだろうに毎週2キロも食われて。たぶん月換算2羽くらいのペースだよな。カルロスもごめんな。
ごめん、ごめんな。美味しく食べなきゃ、いけないよな。
ミゲルがうなずく。

俺はミゲルを細かく切って片栗粉をつけて茹でておいたものを冷蔵庫から取り出す。
今日私がいただくのは鶏白湯です。
そして、棚から鍋キューブを取り出す。

秘密兵器

「なあアンタ、鍋キューブ…って知ってるか?
プチッと鍋じゃねえ、鍋キューブだよ。プチっとの方は俺は食ったことがねえ、高いからな。4つで300円は俺たち下層民には手が出せねえ。だがこっちは8個入で300円ちょっとで出回ってる。だからまあ一回50円だ、それでバチッとキマるってんだから、やめられねえよな。

『鍋キューブ 濃厚白湯』はここだけの話、熱力学を無視した完全に存在しちゃいけねえ物質なんだよ。一個30kcalしかないのに普通に豚と鶏の白湯の味がするんだ。こんなに濃厚なのに30kcalな訳がねえ。だがそう感じさせる何か絶対にやばいブツが入っている。AJINOMOTOはその超えちゃいけない物理法則、または法の網を通り抜ける方法を見つけちまったのさ。依存性が強いから俺は週に2〜3回に留めるようにしてるよ。歯止めが効かなくなっちまったやつらの話もちらほら聞いてるけどな。

こいつをお湯で溶かして、皮なしの鶏肉とキャベツやネギ、できればニンニク、ショウガもぶち込んで茹でて毎日の晩飯にすれば、必ず痩せるし、いい気持ちになるはずだ。カロリーってのはそういうもんさ。〆のラーメン?〆るな。痩せてからにしろ。
ちなみにハナマサで買った極太麺を茹でて入れた時はマジで狂っちまうかと思ったね。早く一玉食べれるようになりたいよ。炭水化物は贅沢品さ。

色々バリエーションはあるけど俺はやっぱりこの白湯が最強だと思ってる。一度試したがキムチ鍋も個人的には辛ラーメン感を感じて俺は好きだったよ。まあもちろん本物のラーメンには勝てないんだが、カロリー貧困層の俺らにはもうコイツがなきゃ幸せってモンすら感じられないんだよ。」

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冷凍ネギをスープに入れると見た目と食感の悪さに「いっそお前なんて入れなければよかった」とすら思ってしまうがそれでも何も無いより何かいた方が少し安心してしまうのは俺だけでしょうか。人間もそうやって創られたと言ったらどうでしょうか。

スープの最後の一滴まで飲み干すと、ミゲルも満足そうに成仏していった。午後の仕事をやりましょう。俺はマシンでコーヒーを淹れた。

※感想は個人のものです。

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