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質的研究法の研修をしてきた話②~当日の流れと様子~

質的研究法の研修をしてきた話①で述べたように、
kj法を対象とした研修の話になる。

kj法に対する私の理解やスタンスなどは前記事を参考にしてもらいたい。


〇0.はじめまして?

参加者の大半は身内で、普段接する学生たちと、先生。
後数名、卒業生や先生の知り合いの学校教員が2人参加していた。

私にとって初対面のお二人はさておき、
他の人は私のことを知っているのだろうか?

「私のことを知ってますかと聞かれたら、知っていると答えますか?」
そう聞くと、何名か手が挙がった。

「では知らないと答える方はいますか?」
これも、何名か挙がった。

「では、先ほどの答えを覆しても構いませんが、
 知っているか知らないのかわからない、と答える方はいますか?」

これも、何名か手が挙がった。
そのうち何名かは手を挙げ直していた。

時々関心をもって聞いてくる人が定期的に現れるのだが、
1年以上一緒にいても、私の個人的なことを急に聞き始めて、
しかし聞いてもほとんど何も納得できないまま
その時間がいつの間にか終わる、というのは
私にとってはよくあることだ。

私のしていることや考えていることを
自分の認識できる枠組みの中に放り込むことができない人はよくいる。
というかおそらく私に接する大半の人がおそらくそうである。

この「はじめまして?」のコーナーは数分程度だが、
重要な意味がある。


〇1.班づくりと自己紹介

班での活動をするので、
人数と多少の条件だけ示して班をつくってもらった。
みんな協力的で助かった。

班ができたら、自己紹介をしてもらった。
ほとんどは普段見知っている人だが、初対面の人もいる。

「自己紹介をする、と聞いて何を言う?」と問えば、
答えは名前、年齢、所属、趣味…などなどの
まあよくある一般的な感じの項目が挙がった。

そのような普通の自己紹介は私が別に望んでいないので、
自己紹介のやり方を設けておいた。

初期に書いた「自己紹介への抵抗」の内容にも関係あるだろうが、
それを聞いたところで相手のことはわかるのだろうか?
と思えるような自己紹介は望んでいない。

そこで、今回は私が示した10のお題からそれぞれ自由に1つ選んで、
お題に合うと思う物を研究室の建物内(小さな2階建ての一棟)から
4~5個集めて来てもらうことにした。

お題の一部は以下のようなものである。

・いたずらに使えそうなもの
・世界中どこでも重宝されていそうなもの
・好きな歌の歌詞に出てくるもの
・夢に出てきたらうれしいもの  など

お題に従って持ってきたものを紹介したり、
あるいは持ってきたものからお題を当ててもらったりなど、
自由に交流してもらった。


〇2.お遊び

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このお遊びが最も重要で、時間を十分割いた活動だ。
少しだけ複雑だが、以下のような活動である。

まず先に活動の概要を書いておく。

・班を捜索チーム回答チームに分ける(人数は最初は半々)。
・捜索チームは私からお題を受け取ってお題に見合うものを持ってくる
・回答チームは集められたものからお題が何だったのかを当てる


具体的な活動のプロセスとしては、次の①~③になる。

①捜索チームがお題を受け取り、
 研究室の建物内から1人1つずつものを持ってくる。
 最初は、お題を受け取った後に
 捜索チーム内での相談をすることはなし、とした。

②ものが揃ったら回答チームはお題が何かを考えて当てる。
 この時、捜索チームからの説明やパフォーマンスはなし
 リアクションは正解、不正解、惜しい程度
 正誤の判断や回答量の調整は班に委ねた

③次のお題をもらって①に戻る。
 お題に正解できなかった場合は、同じお題で再度①に戻ってもよい

※お題と次のお題の合間に、班内での作戦会議を可とした。
 チームのメンバーや人数の編成の変更や、細かいルールの整備
 ものの集め方の相談など、
 班に必要な場合はしてもらい、活動の調整をしてもらった。


お題は180ほど用意し、大きくは3段階に分けておいた。
最初は簡単なものから始めて、少しずつ難しいものを渡していった。

1つのお題でも簡単なものであれば5分もかからなかったが、
中々たどり着けない時はおそらく10分以上やっていたものもあっただろう。
不正解のまま諦めるということがなかったので、
お題によってはかなり苦しんでいる場合もあった。

気がつけば1時間があっさりと過ぎ去り、
しかしやめたがる様子もないので少し時間を延ばしながら遊んでもらった。

書いていただいた感想や、口頭で聞いた限りは
結構楽しくやっていただいたようだった。

(ここまでの活動はkj法研修でやったことだが、
 kj法の手法に直接関係あるわけでもないので詳細については
 授業づくりとして別の記事に書きたいと思う。
 特定の教科には依らないだろうが、普通に授業をする感覚に近い
 内容的には学校ではなく、どこかの企業や組織の研修やレクリエーション
 などにも使えるだろう。)

この後、他の班がもらったお題がどんなものだったのか、
集めたものだけから想像してもらい、その後全体で交流を行った。
(時間の都合で今回は次の『3』の感想を書いた後に行った。)

〇3.感想書きなど

”お遊び”の活動を一旦区切って、
それぞれに1枚便箋を渡して感想を書いてもらった。
長さなどは特に指定していないので、思い思いに書きたいように。

まあ単純に感想を知りたいという気持ちもあるが、
その後のkj法の体験・実践のために使う
なんらかの元データが必要となるので、それも兼ねている。

この後は、この活動の他班の感想について、班ごとにkj法をしてもらった。


〇4.kj法の簡単な説明後、実践

kj法のやり方自体をここで詳細に書く必要はないと思っているので割愛。

感想文の内容を見ながら付箋に書き分けていき、
似ているものを集め、グループ名をつけて…と言う過程を
班の進捗に合わせて区切りながら、様子を見て少しずつ伝えていった。

班にもよるが、全体的に作業への安易さはあまり感じられず
むしろいつまで経ってもなかなか進まない
とよくわからない人が見たら思うだろう、というくらいには慎重だった

作法や手法が完全に身についているわけではないのだが、
班での話し合いが、1つ1つのカードの中身に迫ろう
よく探っている感じがしたので大きいところでは安心できた。

時間の関係もあって図解化までいった班は3班中1班だけだったが、
その後簡単に交流をして、
他の参加者にも図解化した様子読み取ったことを見てもらったり、
中々進まなかった班にもどんな理由で停滞したか、
困ったかなどを話してもらったりした。


〇5.お話と質疑など

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気になったことは色々と質問してもらった。
(ちょっとあまりよく覚えてないのだけど…)

・安易にグループにすると迷っているものが消えてしまいそうだった。
・自分の先入観が入ってしまいそうだが、どうしたらいいのか。
・大勢のデータを扱う場合、同じ内容の付箋はどうするべきか。

など、記憶にある範囲で思い起こして書いておいた。

他にもいくつかあったとは思うが、
大きな違和感を持つような質問は来なかったからか、
それほど強い印象のものはない。

こうして書きながら振り返ってみると
自分たちの書いた付箋を扱い、グループにしていくことに
迷いや立ち止まりが生じている証のようにも感じた。

最後に、前日に用意しておいた書き物を配付して、
それを使いながらお話をした。

書き物のタイトルは「KJ法はなぜできるようにならないのか」
ここには概略だけ書いておく。

最初の自己紹介やお遊びの時間を過ごす事で、
自分の見えていないものがあること、
他の人には自分が思っていないような面があることなどを
感じ取ってもらえたと思う。

それに振り回されたり、助けられたりしながら前半の活動を行ったはずだ。
その時、自分の持たない視点を新たに得ることを
肯定的にとらえられる気持ちはKJ法を行う上でも非常に重要だ。

似ているという感覚を頼りに行う作業を不安に感じるかも知れないが、
では自分の理解しきった、わかりやすいものばかりを使うことは
新しい発想を得るためにそれほど見合った方法だろうか?

おそらく、KJ法を行う上で、自分のわからないもの、不安なもの、
しかし確かにあるものが含まれていて、
そこから自分にとって新しい世界やアイデアを描けることが大切だろう。

だから、はじめましてをたくさん見つけてほしい。

考え事や書き物に時間をより多く割こうとした時に、 サポートを受けられることは大変助かります。 次もまたあなたに価値ある投稿となるとは約束できませんが、 もし私の投稿の続きに興味や関心がありましたら、 サポートいただけると幸いです。