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アニメ映画「GODZILLA」は歴史の繰り返しから脱出したのか?

スターウォーズ」シリーズとかもそうだけれど、根強いファンがいる映画の新作を作ることは非常にハードルが高い。当たり前だが、ファンは過去の作品が好きだ。だからこそファンなのである。かと言って、過去の作品と似たようなものを作れば満足するかといえば、そうではないのである。それは過去の作品を上書きすることになるから、なのかもしれない。

世の中的には「シン・ゴジラ」は大成功ということになっている。確かに興行収入の面では良かった。しかし、その内容を考えてみると、ほぼリメイク作品といった感じで、新しさは無かった。1作目を基にしたストーリーなので、2作目以降の歴史がなかったことになっている。原点回帰とも言えるが、リセットとも言える。ゴジラ以外にも様々なユニークな怪獣が登場し、時にゴジラに日本が守られることもあるような、2作目以降の世界観が好きだった自分にとっては非常に残念だった。

しかしそれは仕方ない部分もある。ゴジラは大人向けの社会派映画に振り切ることも出来るし、子供も楽しめる怪獣バトル映画に振り切ることも出来る。その振り幅がゴジラの魅力だが、だからと言ってこの2つを1つの映画にまとめて表現することは不可能だろう。そう思っていたから、アニメ映画三部作「GODZILLA」のストーリーは衝撃的だった。

GODZILLA」三部作は、アニメかつSFということで、一見ゴジラの伝統をぶち壊すような作品に見えて、実はゴジラファンに寄り添っている作品である。大人向きの、シリアスで難解な話の中に、ゴジラ、モスラ、メカゴジラ、キングギドラという人気怪獣を登場させている。その他にも、双子の少女、誘導作戦、宇宙人(ゴジラには宇宙人も何度か出ている)といった、ゴジラ的なモチーフを入れ込んでいる。こうした、ゴジラの子供っぽい部分もわざわざ拾ってくるところに、作者の思い入れを感じる。

映画に登場する怪獣は、それぞれ物語において重要な意味を持っている。もともとこうした怪獣は、怪獣バトル要員だったこともあり、その意味について深く考えられてはいなかった。しかし、原作者・脚本の虚淵玄による新たな解釈によって、大人向けの話でも登場できるように新しく生まれ変わったのだ。ゴジラの持つ様々な要素を上手く1つのストーリーに収めたという点で、ゴジラの新たな歴史を作る作品になったのは間違いない。

確かに新たな歴史にはなったのだが、もう一つの軸、作者の創作物として新たな歴史を作ったのかと言われると微妙だ。後半になるにつれ、作者の過去の作品「魔法少女まどか⭐︎マギカ」のストーリーに近づいていく。まどかマギカも、今までの魔法少女ものというジャンルを、今までにない解釈で捉え直したことでアニメの歴史に名を残す作品になったが、結局今回のゴジラの捉え直しは、そのまどかマギカの焼き直しに過ぎない。

傑作でも、それをもう一度繰り返したものは、やはりオリジナルに比べて劣ってしまう。今回、ゴジラの繰り返しは脱したが、自身の作品の繰り返しからは脱出することが出来なかった。なかなか難しい問題である。