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ワークプレイスストラテジーってマニアックだけど高需要なお仕事。 (3)

こんにちは。ワークプレイスストラテジストのyuiです。
働き方改革と日本で叫ばれ始め、早2〜3年ほどでしょうか。

ワークプレイスストラテジーへの問合せの多くは、働き方改革を課題としたものが多く、まだまだ日本中のたくさんの企業が変革にもがいている印象です。

政府が推進する政策は、女性活用や残業削減、有休消化、テレワークなどが主ですが、これは働き方改革じゃなく組織文化の改革ではないかと感じています。女性が多い、残業が少ないからと言って、働き方が先進的だとは言えないですよね。
すなわち、女性雇用に偏見がない、定時で仕事を終わらせるように努めている、有給を取得しやすい、テレワークが認められている、というのは、組織に漂う雰囲気や文化、メンタルモデルに起因するのではないでしょうか。

働き方改革とは、もっとシステムやプロセス、メソッドの変革を指すのではないか。

(5) 組織の働き方改革を肉厚なものにします

このように考えたときに、ワークプレイスを通して、働くシステムやプロセス、メソッドの変革は可能だと思っています。
実は、ワークプレイス(オフィス)というのは皆様が思っている以上に多種多様なのです。

例えば、セールスにかかる経費を削減するために、
インサイドセールスを強化するショーケース型のワークプレイスを作ることもできるし、
フィールドセールスを効率化する他拠点展開型 X 空間効率最大のワークプレイスを構築することも可能です。

オープンイノベーションを狙ったコミュニティ型のワークプレイスや、ケイパビリティ別に集まってプロジェクトを行うような開発拠点、デジタルメディアを作り、配信するようなスタジオ型など、事業や働き方に合わせてきちんと施設を作ることで、生産性や効率性を向上させることができます。

このとき、各々の理想とする席当たり面積やロケーション、賃料、スペースプログラミング、運営方法というのは全く異なるため、このような戦略づくりを行うのが、ワークプレイスストラテジストの役割の一つとなります。

これらは決して、女性雇用の偏見をなくしたり、残業を削減したりすることに直結はしませんが、働くプロセスやメソッドの変革には有用だと思います。
(そしてもちろん、本記事第一回目に記載したように、ワークプレイスは組織文化やマインドセットを変える要素にもなりえます!)

また、働き方を変えるワークプレイスを作りたいときに、フリーアドレスやリモートワーク、ペーパーレスにチャレンジする企業は非常に多いと思います。これに関しては「デスクや収納の割合を決める」で解決します。
それ以上に、その活動をサポートするITソリューションを包括的に検討するすこと、と、どのようにメンタルモデルを変えていくか、に集中したほうが良いと考えています。

昨今のワークプレイス作りで、より深く検討してほしいな〜と思うのは、どのような事業をやっているのか、どのように製品やサービスを開発し、どのように販売するのか、そのプロセスを既存からどう変化させるのか。
これらを明確にする調査や分析、議論を通して、その企業に最適なワークプレイス戦略と働き方改革が描くお手伝いをするのがワークプレイスストラテジストだと考えています。


(6) 社員の方々に働くって楽しいことを知ってもらいます

最後にお話ししたいのが、「ユーザーエクスペリエンスデザイン」についてです。

・ワークプレイスで提供したいエクスペリエンスを定義する
・どのようなユーザーに対して提供するのか的を絞る
・各ユーザーがどのようにワークプレイスを使うか想定する
・各タッチポイントで必要となる空間・IT・運営を構想する

ということを観点に、ワークプレイスを設計・開発します。
ワークプレイスをプロダクトと捉えて開発するようなイメージです。
ユーザーはもちろん、社員や訪問者の方々。

従来のオフィスは「執務=作業」を基本目的として作られていました。
そして、打合せのために必要な会議室を設ける。

ここに変革をもたらしたのがGoogleです。
彼らはオフィスをユーザーつまり従業員を魅了する代物に変えるため、アメニティを取り揃えたり、色や素材を用いて楽しく創造性を掻き立てるような空間へと変えました。

ユーザーが、心地よく、楽しく働ける場所を観点にワークプレイスを構築し直した結果、人材獲得競争の激しかったIT業界で優秀なエンジニアを獲得・維持することができました。

このようなワークプレイスを構築する際に必要となる考えが「ユーザーエクスペリエンスデザイン」になります。Googleを例にとって説明してみます。

・ワークプレイスで提供したいエクスペリエンスを定義する
→ノートパソコン1つでいつでもどこでも執務が出来てしまうエンジニア集団にとって、ワークプレイスに求める体験は「執務ができること」ではなかったのです。(もちろん、特殊な環境が必要なエンジニアさん達もいらっしゃいます)

・お家のようにくつろいで仕事ができる
・優秀なエンジニア同士で情報交換できる
・ヒエラルキーを感じないカジュアルなコミュニケーションやチームワーク

このような体験をユーザーにしてもらえる空間が自分たちのワークプレイスであると定義づけることから新しいワークプレイス作りは始まります。

・どのようなユーザーに対して提供するのか的を絞る
→ 組織が必要とする人材のタイプをきちんと理解することは非常に重要です。ひと口にエンジニアというのではなく、求める優秀なエンジニアはどういうタイプなのか。

彼らがこれまでのシャキッとスーツを着たサラリーマンを描いていれば、ビビッドな赤や緑を使った空間は作らなかったでしょう。
彼らが定時で出勤・退勤する人を理想の従業員としていれば、仮眠室や休憩エリアはなかったかもしれない。

ターゲットとしている従業員にとってどういうものが就業における優先順位に上がるのかきちんと把握することで、人材雇用や獲得、満足度や生産性の向上の促進となるワークプレイスが作られます。

・各ユーザーがどのようにワークプレイスを使うか想定する
→さて、ちょっとギークで、TシャツとGパンがユニフォームで、ノートパソコンと自らのプログラミング知識が武器である方にとって、ワークプレイスはどのような施設であって欲しいだろうか。何をモチベーションにオフィスに来るだろうか。といったことを考えていきます。

例えば、人にもよりますが、エンジニアの方は夜型の方も多い。
そのため、朝はのんびりと、夜は遅くまで、働く人も多々います。

そんな彼らに提供したのが、かの有名なGoogleの飲食サービス。
東京ではあまり考えられませんが、実はアメリカのカリフォルニアやサンフランシスコは、オフィスの周りに飲食店などのリテールが一切ないことが結構あるそうです。そのため、彼らはコンビニ食や家で簡単に作ってきたものをランチや夕食としていたそうです。
どうせ同じような仕事をするのなら、飲食サービスのないY社よりGoogleの方がいいな、そんなことが実は社員に響いた。

また、一日、集中してコーディングできる場所があったり、その合間に休める場所があったり、同じギーク同士で盛り上がれる場所があったり。
一日中オフィスに缶詰だし、周辺には何のお店も無い!だからこそ、オフィスでのエクスペリエンスを充実させることが大切だったのです。

また、Googleには一切ICTツールを持ち込んではいけないエリアもあるそうです。それもまた普段、情報機器に囲まれた彼らならではの要望であり、工夫なのでしょう。

・各タッチポイントで必要となる空間・IT・運営を構想する
絞ったターゲットに提供したいエクスペリエンスを定義し、具体化していくことで、ワークプレイスの要件が決まっていきます。

要件定義の際に大切なのは、空間・IT・運営の3軸で考えることです。
このエクスペリエンスを提供するのに必要なのは、空間だけなのか、ITだけなのか、運営だけなのか、それとも全て必要なのか。

「会議室を作る」ための要件定義をするのではなく、「テレワークしているチームメンバーとストレスなくミーティングする」というエクスペリエンスを提供するために、
・音響設備の良い空間 (AV設計)
・防音や遮音性能の高い空間 (建築設計)
・快適な音声と映像を実現するwifiスピード (IT設計)
・モニターとPCの映像投影システム (ITソフトウェア)
・機器やITのトラブルシューティング対応 (運営)
が必要である、と要件を整理した方が包括的であり、より満足度の高いワークプレイスの構築が可能になります。

このような形で、ビジョンや新しい働き方に合わせたワークプレイスの要件定義まで作り上げていくのが、ワークプレイスストラテジストのお仕事のひとつとなります。

なんとなくエクスペリエンスデザインについて分かりましたか?
そのうちもっと体系的にまとめていきたいな、と思っています。

さて、全3回に分けてお送りした、「ワークプレイスストラテジーってマニアックだけど高需要なお仕事。」
ワークプレイスストラテジーというお仕事の内容が少しでもご理解いただけたのなら嬉しく思います。
何度、ワークプレイスって言うねん!と突っ込みたくなる記事でしたね、すみません。笑

画一的な現在のオフィス市場を、科学的に、戦略的に、そしてクリエイティブに変えていきたい。そんなことをモチベーションに日々、組織のこと、行動のこと、意識のこと、データのこと、デザインのこと、テクノロジーのこと、様々なことを考え、勉強しています。

これから、働き方改革や働く環境、組織、マインドセットなどについて、様々発信していければな〜と思っていますので、どうぞよろしくお願いします。