気の種類
気の種類は国家試験でも出題されるところですが、それほど多く出てくる訳ではないので、まずはシンプルに気の種類とその働きを理解しておくことがポイントになります。
特に気という用語自体が理解をしにくいですし、気の種類だけではなく、気の作用もあり、気の病証もあるので、混乱しやすいポイントの一つですが、それぞれしっかりと分けてまずは覚えてしまいましょう。
解剖学や生理学でも、肝臓であれば肝臓に関わる用語を覚えますよね?
東洋医学も同じです。気、気の種類、気の作用、気の病証を覚えます。
解剖学や生理学を学習できると、肝臓と消化器官や循環器系は関係しているという学習になりますし、病気の理解に繋がります。
東洋医学も同じです。気、気の種類、気の作用、気の病証だけではなく、臓腑や血、津液との繋がりをさらに学習して繋げていきます。
ということで今回は気の種類についてまとめていきます。
1.気には種類がある
東洋医学では気という概念が非常に重要になりますが、気という一つの用語だけだと、病気は気が原因、健康は気が必要と単純化しすぎてしまい、身体の状態を把握するのが大変です。
東洋医学は、いろいろな物を分類するために、陰陽、五行、三才など物事を分ける考え方があります。
なんだか分かりにくそうだと感じるかもしれませんが、お付き合いください。
気という用語だけだと、単純すぎるので、ここに陰陽論を足すと、身体の状態をより詳細に表現することができますが、どのように使っていくかですよね。物事を分類するのはシンプルな方がいいので、身体という構造物を考えていくのに、上か下、外か内にすればシンプルになります。
例えば、病気は気のせいで終わるのではなく、上の気が問題になっている、下の気が問題になっているという文章になると、「病気は気のせい」だったのが、「病気は上の気のせい」「病気は下の気のせい」と意味を持ってきますし、上を治療する、下を治療するという話に繋げることができます。
「病気は外の気のせい」「病気は内の気のせい」とすると、身体の外側の問題、身体の中側の問題として考えていくこともできます。
気の種類では、人の生命力や活動を4つの気に分けて考えていきます。これが気の種類になるので、一つずつ見ていきます。
①元気
・先天の気
・生命活動の原動力
・三焦を通る
・成長、発育
・下腹部
原気は先天の精が化生して生じるもので、下腹部にあります。生命活動の原動力ですが、下腹部にあるままだと、生命活動に関われないために、三焦を通って全身に輸送されることで、成長や発育に関係していきます。
②宗気
・後天の気
・胸にある
・身体の活動と関わるので動気と呼ばれる
・水穀の精微と呼吸の清気によって生成される
・呼吸、血の運行に関わる
宗気は飲食物と呼吸から得られる清気(呼気は濁気の排出、吸気は清気の吸収)によって生成され、呼吸との関わりがあるので胸にあります。宗気は、胸にあるので、呼吸や血の運行に関わるだけではなく、身体の活動と関わるので動気と呼ばれます。
③衛気
・後天の気
・活動性が高く動きも早い(悍気:かんき)
・脈外にある
・外邪の侵入を防ぐ
・全身を温める
・発汗調節に関わる
・全身を50周する
衛気は後天つまり水穀(飲食物)から得られるもので、水穀の中でも活動性が高いものと言われるので、水穀の悍気とも呼ばれます。活動性が高いということは、熱を生じることになるので、身体を温める働きがあり、外邪が身体に侵入しようとしたときに素早く対処するので、外邪の侵入を防いでいます。体温調節に関係する発汗調節に関わるので、腠理(そうり)の開闔(かいごう)に関与します。防御や発汗などの体表と関わるので、脈外にあります。
④営気
・後天の気
・脈内にある
・身体を栄養する
・血の生成を行う
・全身を50周する
営気は後天つまり水穀から得られるもので、身体に取っては栄養素となります。脈内を流れる血を生成したり、血を輸送したりしています。
⑤正気
原気や宗気などの具体的なものではなく、身体の持っている力になります。邪気の対立概念として、身体の抵抗力や回復力を表しています。
⑥邪気
邪気は、外邪が代表的に考えられるものですが、疾病を生じる原因として考えていくこともできます。
⑦精気
精気は精のことになります。精から化生されたものとして考えていくものですが、単純に精だと思っておく方がシンプルになります。
⑧清気と濁気
清気と濁気は、清が「必要」、濁が「不要」と言えるもので、呼吸で言えば、呼は濁気を吐き出し、吸は清気を取り入れることになります。飲食でも清濁があり、清は吸収されて、濁気は排泄されます。
2.気の種類のまとめ
3.気の種類の応用
気の種類は国家試験としては、4つの名前、別名、場所、生成するもと、働きをしっかりと覚えていく必要があります。理解が深くなればなるほど、便利でいいものになりますが、気の種類だけでいろいろと考えるよりは、気血津液弁証や臓腑を考えていく方が、治療しやすいので、単純に記憶しておくのがいいですね。
もし、理解を深くしたいというのであれば、下記を読んで頂くと参考になるかもしれません。
人の身体を気であるという前提で考えている状態では、「病は気のせい」という一言で終わってしまうことになりますが、気という用語と陰陽という分ける考え方を合わせていくと病能の理解が進みます。
身体は上や下、内や外というように区分して考えていくことができるのは陰陽の分ける考え方を利用しているからです。
ここに気の考え方を足すと、上の気は宗気、下の気は原気、内の気は営気、外の気は衛気になります。陰陽では、組み合わせになってくるのが大切なので、宗気と元気について考えてみます。
宗気は身体の上と関わり、元気は身体の下に関わります。これだけでも、上半身の問題は宗気、下半身の問題は原気として考えていくことができます。胸が痛くなったりしやすい、下腹部が痛くなりやすいという身体の特徴があれば、それだけでも宗気か原気かを考えていけます。
宗気は上なので陽、元気は下なので陰と考えられるので、陽は動、陰は静になります。人の生命は活動と栄養や落ち着いている状態、または生命力の2つに分けて考えることが出来るので、身体活動は宗気、身体の栄養は原気になります。
病は気の問題であるというだけでは、身体の状態を考えていくことも治療をしていくことができませんが、気を陰陽という2つに分けて考えていくだけで、体幹の上か下かを考えて治療していくことができます。
病の所在を身体の中、身体の外という2つの側面で考えていくのが衛気と営気になるので、病がなかなかよくならないのは、中の営気の問題であるという表現をすることができます。
陰陽は合わさることで、一つの存在としても成り立つので、気の種類で言えば、宗気と原気、衛気と営気で人体の活動全てを表していくことができます。さらに、宗気の問題である、身体の上部に異常がでていて、上部の営気にも異常が生じていると考えていくことになれば、病の所在について立体化していきます。
気の種類については、これだけでもいろいろと考えていくことができますが、気血津液や臓腑の情報の方が臨床では多くなり、治療についても考えやすいので、あまり使う人はいないのではないでしょうか。
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