カモフラージュ ／ 松井 玲奈

　元アイドルが書いた小説、と言うよりは、俳優、鉄道オタクの人が書いた小説という感じで手に取っていた。残念ながら鉄道の話は出てこない。
　7作の短編からなる1冊。異なるテイストの作品で作られている。
　インパクトのある作品が1話、2話に置かれている。「ハンドメイド」は二股をかけられている女の話。本命では無く2番目であると理解している。「ジャム」はホラー。薄気味悪い世界が展開される。
　気に入ったのは、読みやすく最後に希望を持たせてくれる作品。「いとうちゃん」「拭っても、拭っても」。他人の価値観に振り回されていた主人公が自分を取り戻す。
「完熟」も「リアルタイム・インテンション」も全然違う話で面白い。
　最終話の「オレンジの片割れ」はホラーともファンタジーとも取れるが、温かみがある、希望があるという意味では後者か。その発想がとても良かった。
　気にいる作品は人それぞれだろうが、おすすめできる1冊である。