車両装備品を手にする(1)~初めての実装品(SL函館大沼号)~
最近では少なくなりましたが、列車に乗る時には車両の側面に付けられている装備品を目にすることがあります。行先が書かれたサボ(行先板)や出入口そばにあるエンブレムと言われる標識、車両の号車を現す札など。
普通に列車に乗っているだけでは手に入らないと思っていたものでしたが、観光列車では抽選販売が行なわれていたり、記念品としてレプリカ品が作られていることがあることを知り、ふとしたキッカケで一つ現物を手にすることを覚えてしまったら、いつの間にか増えていった人の思い出話。
10年ほど前の北海道ではSL列車が函館・後志(小樽・ニセコ)・釧路の3区間で運転されており、その内の1つである「SLニセコ号」には近場ともあって乗りに行っていました。その車内の掲示ポスターから車両に付けられている装備品の販売が抽選で行われたことを知っていましたが、特に欲しいとは思わなかったので最初のうちは「そういうこと」があるという認識でした。
列車の旅でSLに乗る
2011年(平成23年)4月、大型連休を使って列車の旅をする際、札幌から特急や普通列車を乗り継いでいくとちょうど森駅から函館に戻るSL函館大沼号に乗車できるダイヤがあったことから、久しぶりにいつもとは違うSL列車に乗りに行こうと計画。
出発当日は札幌から長万部まで普通列車で移動した後に特急スーパー北斗へ乗り換え、森駅に到着。このときSL列車の客車はすでに待避線に移っており、SL機関車は駅構内の端で暫しの休息を取っている様子でした。
森駅の周辺でお昼ごはんを食べ、窓口ではSL函館大沼号の運行と10周年記念に合わせて発売されていたD型硬券の記念入場券を購入。
そしてSLの改札が始まったのでホームへ。函館から来たSL機関車の付け替え作業が行われていたのでわくわくしながら眺め、周りの人たちも同様に目を輝かせながらその光景を見ていました。
そうしている内に函館行きのSLの発車時間となり、列車は出発。SL函館大沼号の車内はボックス席であり、同じ区画の向かい側に座っていた旅行者さんから話しかけられると自然と話が盛り上がっていきました。
その方が缶ビール(サッポロクラシック)を買ってきて「一緒に飲みませんか」と誘ってきたので、せっかくなのでごちそうに。旅の愛好者同士、一期一会の出会いに楽しいところがありました。
装備品抽選に申し込んでみる
車内販売カウンターの近くへ行くと、装備品販売の案内が掲示されていました。それまでは何気なく過ごしていた場所であったのですが、この時はなぜだか「装備品販売」というものに興味が沸いてきていました。
抽選での販売品はSL機関車のナンバープレートや点検用のハンマー、運転ダイヤに加えて、車両の横に掲示されているサボやエンブレムも。ぼんやりと眺めていると、乗車した記念としてちょっと欲しくなりました。
値段を確認してみると、サボが3,000円でエンブレムが2,000円くらいと実使用品の鉄道グッズとしては良心的な価格。
装備品販売は指定席券にある座席番号を申込用紙に記載して備え付けられていた抽選箱に入れるという方式。旅の楽しみに気分が高揚していたこともあり、折角なので手が出せそうな金額帯のものに申し込んでみました。
抽選が始まった
終着の函館駅に到着して乗客の乗降が終わる頃、装備品販売の抽選に申し込んだ人は車両端に連結されていた緩急車に集合となりました。ぱっと見では20名ほど購入希望者がその場所に居たように見えました。
まずは1点ものや数の少ない物の抽選が開始されたことから、流れを確認するように見ていました。そうしているとサボの抽選が始まり、サボは客車4両の側面に1箇所ずつ付けられていたため、限定8枚となっていました。
申込用紙に記入された座席番号が呼ばれ始め、まずは「3号車の…」と。
違う号車の人だなぁ…と。まだ始まったばかりだし、それなりに数はあるのでまだまだこれから。
そして、「2号車の…」
おっ、自分の号車だ…と思うと「○番○席」
あぁ、違った…。
徐々に残り枚数が少なくなり、これはダメだったかなと思うようになっていきました。先ほどまで座席でご一緒していた方も抽選販売に申し込んでおり、この場所でも「まだ大丈夫ですよ…!」と声をかけてくれました。
諦めかけ始めたその時、ついに。
「2号車の、5番A席」
呼ばれた…!
心のなかでガッツポーズして、笑顔になりました。
サボが置かれている場所へ向かい、係員さんに指定席券を提示し料金を支払った後、購入するサボの選択へ。すでに3枚ほどしか残っていなかったのですが、「傷とかを確認してください」と言っていました。
見える範囲で確認した感じで綺麗そうなものを選んで、手続きを終えました。自分の前に呼ばれた人はじっくりとサボを見て、表面の具合を確認している様子でした。
購入したサボを持って笑顔で座っていた場所に戻ると、一緒に抽選に参加していた人から「良かったね!」と声をかけられました。
続いてエンブレムの抽選へ。これは1両あたり4箇所に装着されていたことから合計16枚なので、サボに比べると当たりやすいかなと思っていました。
何人か呼ばれた後に自分の座席番号が呼ばれ、こちらも当選。先程のサボと同じ手順でお金を支払って、現物を手にしました。
そうして抽選会は終わりを迎え、サボとエンブレムだけとは言え実際に乗った車両で先程まで使われていた装備品が自分の手にある。この事が良き思い出になると感じました。
手に入れてみて…
この日は函館駅前に宿泊していたのですが、入手にしたサボとエンブレムをホテルの部屋で眺めていると、改めて気持ちが高揚していきました。
そして、サボとエンブレムそれぞれの表面を改めてじっくり確認すると、ところどころに黒っぽいものが付着していました。どうやらSL機関車から飛んできたススが付いていた模様。こういうものがあることが、レプリカではなく実際に使用された「本物」ということを感じさせてくれました。
この装備品を手に入れたことで、SL列車という観光列車に乗るときの楽しみが1つ増えたように思えました。
そして、また機会があれば買ってみようかなとも。
次に乗るSLは同年秋に運転されるSLニセコ号。ここでも装備品販売に注目していましたが、運転の詳細が出たとき思ってもいなかったことが判明したのでありました…。