ONEPIECE FILM RED

※ネタバレあり

原作連載25周年、長く続いたワノ国編完結、最終章突入と勢いづくなか公開されたFILM RED。尾田先生が総合プロデュースを務めるのは2016年公開FILM GOLDぶり。

シャンクスが大スクリーンに何分も映る!!!!

今回はなんと言ってもこれ。
原作1話から登場、強烈な存在感を放ちつつ未だ謎に満ちたシャンクス。これまでの総活躍時間を軽く超えていく活躍ぶりで、これだけでもスクリーンで見る価値あり。


「ルフィの幼馴染」で「シャンクスの娘」、ウタウタの実の能力者「ウタ」が今作のメインキャラクター。原作にも登場するキーワード「新時代」を彼女なりに追求していく。この映画のために用意されたその場限りの後付けキャラとは思えないほど重要な立ち位置。

物語はウタの歌声から動き始める。世界で最も愛される歌手ウタはライブ会場に駆け付けたファンを楽しませるだけでなく、無料配信までしてる模様。観客もリモート参加してるかのような作りで没入感を演出する。「可愛いけどやっぱ登場が急すぎでは!?25年目にして急に幼馴染!?娘!?」という気持ちが拭えず正直すぐには馴染めなかった。

中盤からは映画らしくいろんなキャラが動き出す。なかでもブルーノとコビーは大活躍。ローは特に何の理由付けもなくルフィを助けてくれるし、たぶん映画制作者もローのことは仲間だと思ってる。

展開が加速していく終盤にタイトル「RED」に相応しくシャンクスが登場。限られた尺の中で娘への愛情を確実に表現してくる。予告で使われた「なぁウタ、この世界に平和や平等なんてものは存在しない」というちょっと不穏なセリフも、全体通して聞けば実は娘への愛の言葉だった。彼女を守るため置き去りにするシャンクスの目には涙さえ浮かび、これまで読んできた原作より何倍も人間味にあふれた姿が描かれる。シャンクスって泣くんだ……。
この頃になるともはや昔からウタがいたかのような錯覚に陥ってる。アニメの表現が上手いんだと思う。

そんな感じなので、鑑賞1回目より最初からウタの存在を受け入れた状態の鑑賞2回目の方がウタの言動を理解できるし、より物語に没頭できるので2回見たほうが良いです。

ラストバトルではシャンクスも大活躍。ただし原作未披露なので技名は出さないという配慮のかたまり。ルフィのギア5も解禁。ウタの作る仮想世界と現実世界という壁はあるものの麦わら海賊団との共闘シーンもあり。

鑑賞前は「麦わらの一味とカタクリが共闘したら熱い」くらいの心持ちで、あれだけ宣伝で「シャンクス」と「シャンクスの娘」が前面に押し出されていたにも関わらずまさかこんなに活躍してくださるとは思ってなかった……。ちなみにカタクリはヒーローみたいな登場シーンをキメるのでそれはそれでカッコよくて満足。


新時代を追い求めたウタの「どうして海賊王になりたいの?」という核心に迫る問いにルフィは「新時代を作るためだ」と返す。その後全てが終わりウタが亡くなったことを覇気で察しただろうルフィが改めて「海賊王におれはなる!」と叫んで物語は終わる。
綺麗にまとまってるけど原作に「新時代を作るため」という発言はないので映画でそんなセリフが出てくるとは思わずちょっと驚いた。でもウタがいる世界線のルフィはそう考えるのかも……この発言の趣旨が原作にも組み込まれていくかは不明だけど、シャンクスとロジャー海賊団の出会いなど、新情報が盛り込まれてるのも楽しいポイント。

ともかく「ウタのためにもシャンクスは新時代まで生き残って欲しい」「ルフィが初期から音楽家を求めていたのは赤髪海賊団に音楽家ウタがいたからか……」とかいう本来存在しないはずの希望や納得感すら産み出す魔の映画。こんなことは原作者が関わってないと流石にできないだろう。

ワンピース映画はあくまでパラレルで、今作も時間軸の整合性をとるのは難しい(無理やり当てはめるならワノ国直後?)が「シャンクス」「新時代」というテーマだったのでいつもより少し原作側に踏み込んだ作品だった印象。




「私の歌があればみんなが平和で幸せになれる」
というウタの言葉通り今作は「歌」がキーポイント。115分間にオリジナル楽曲が7つも用意されており、音楽劇と言っても過言じゃないレベル。

映画×音楽は記憶に残るヒット作も多い一方、相性の良いメディアとは言い難い。映画は基本的に1回の鑑賞で完結するけど、音楽は繰り返し聞くことによって馴染んでいく媒体だから。今作は大人気アーティストとタッグを組み「事前に一部楽曲を配信する」という新たな手段で成功に導く。
楽曲を聞いて歌詞を把握してから鑑賞し、物語が進むにつれ「そういうことだったのか」とパズルのピースがハマっていく感じ。一度は歌詞を読んでから鑑賞した方が物語への没入感が増すはず。

これまでの尾田先生プロデュース映画もそれぞれ面白かったけど、今作は音楽という映像作品のメリットを最大限活かしてこれまでとは違う満足感を得られる映画でした。

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