ブレット・トレイン

作家・伊坂幸太郎による殺し屋シリーズ第二弾「マリアビートル」が原作。原作の10倍くらい派手で物騒でアドレナリンドバドバ映画。


原作からの改変ポイントが多いものの、一見とっ散らかった物語が終盤にかけて気持ちよく収束していく、という特徴は完璧に再現されてる。そこにぶっ飛んだ映像の爽快感、とにかくデカい音量で流れるBGMが加わって約2時間を駆け抜ける。

原作は小説というメディアを最大限に活かしたジェットコースターみたいなもので、あえてテーマを掬い上げるなら「なぜ人を殺してはいけないのか」という台詞に行きつくという感想を持っていたけど、映画ではいつの間にか「家族」と「運命」がテーマとして濃くぶち込まれている。原作の檸檬と蜜柑は良いコンビだけど兄弟ではなかったはずだし、木村父は運命云々を語ったりしない。王子はただの傲慢野郎であって、ここにも家族の因縁はない。

今のところ家族に勝る人類共通のテーマはないんだろうけど、マリアビートルのような小説で、しかもR-15仕様の映画でもここまで家族の話を膨らませる展開になるというのは面白かった。ピクサーの血みどろバージョンか。

蜜柑に関する改変は映画に感謝したいレベルで良かった。おかげで最後の最後にもう一段階気分があがった状態で終われた。


予告で注目を集めた非実在ジャパンはいっそ清々しい。日本だとこういう「ハリウッド映画にしか存在しないジャパン」がもはや一種のジャンルのような扱いになっているけど、ハリウッドはどんなつもりで作ってるんだろうか。空想上のジャパンをあえて創作して楽しんでるのか、本当にあんなイメージのままなのか。とりあえず東京-京都間は新幹線で約3時間しかかからないという事実だけは旅行者に伝えたい。

インターネットのある世界でもこんなジャパンが出来上がるんだから永遠にこのままかもしれん。ともかくこのジャンルが好きな人にはたまらない映画だと思う、ここまで濃厚なハリウッド製非実在ジャパンを見れる機会はそうそうない。


チャニング·テイタムっぽい人がいるなと思ったら本当にチャニング·テイタムだったし、ライアン·レイノルズっぽい人が一瞬出てきたと思ったら本当にライアン·レイノルズだった。こんなに豪華で良いんですか。


この映画に関する2020年の記事。

この映画企画は日本からハリウッドに持ちかけ時間をかけて実現。日本の作家にはエージェントやマネージャーがいない、作品や作家を直接代理するビジネスがないためアメリカから容易にアクセスできなかったという。インタビューを受けた二人は作家を直接代理し権利を一元化、出版社の異なる全ての作品をベースに契約を結べる仕組みを作ったそう。
今後も伊坂作品が映像化されますように。



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