見出し画像

三浦龍司の目標は「順位(3位以内)を死守すること」だが

世界陸上オレゴン代表選考会の日本選手権が、6月9~12日に大阪市ヤンマースタジアム長居で開催される。
 男子3000m障害は東京五輪7位入賞の三浦龍司(順大・20)の2連勝が濃厚だ。この種目ただ1人の世界陸上標準記録突破者で、3位以内に入れば代表に内定する。昨年は日本新を連発したが、今季は世界陸上で最高のパフォーマンスを発揮することを目的に国内レースを走ってきた。日本選手権にはどんな課題を持って臨み、どんな代表の決め方をするのか。

【日本選手権プレビュー①】3000m障害の国内不敗継続中の三浦が、世界陸上オレゴンに向けて何を試すのか

●三浦の目標は「順位(3位以内)を死守すること」だが

三浦にとって日本選手権前最後のレースとなったのが、5月22日の関東インカレ5000mだった。“専門外”種目だが13分42秒35で圧勝。5000mでも学生間では、明らかに力が上だった。
 日本選手権の目標を問われると「世界陸上代表を決めるために順位を取らないといけません。そこは死守したい」と話した。代表選考規定では標準記録突破者が、日本選手権3位以内に入れば自動的に代表に内定する。
 三浦は順大入学後、3000m障害で国内選手に敗れたことはない。昨年は5月のREADY STEADY TOKYO(8分17秒46)、6月の日本選手権(8分15秒99)、7月の東京五輪予選(8分09秒92)と日本記録を3回更新し、東京五輪決勝は日本人初の7位入賞を成し遂げた。今季も5月のゴールデングランプリは8分22秒25で2位に5秒以上の差をつけた。
 日本選手権の3位以内は確実だが、仮に転倒などのアクシデントで4位以下になった場合、優先権が日本選手権3位以内の選手に移る(昨年は残り2周の水濠で転倒しても日本新で優勝した)。3位以内の選手が6月26日までに標準記録を突破した場合と、6月29日に発表される世界ランキングで世界陸上出場資格を得た場合は代表に決まる。
 三浦の「順位死守」は選考規定を踏まえてのコメントであり、油断はしないぞ、と自身に言い聞かせる意味もあったのだろう。

●ラスト1000mのハードリングに注目

今季は専門外種目を多く走ってきた。まずは4月9日の金栗記念1500mに優勝した。3分36秒59は日本歴代2位タイムで、3000m障害選手としてはけた違いにレベルが高い。同29日の織田記念5000mでは、この種目の東京五輪代表に競り勝った。そして関東インカレ5000mではラスト1周が54秒台後半と、これも世界レベルだった。
 今シーズン唯一の3000m障害は5月8日のゴールデングランプリで、ラスト1000mからスパートして2位に大差をつけている。
 専門外の種目に積極的に出場したのは、国内の3000m障害レースでは高いレベルで追い込めないからだ。1500mや5000mなら三浦といえども突出した存在ではないし、国内チーム在籍のケニア選手と争うこともできる。順大の長門俊介駅伝監督は「揉(も)まれるレース」をするのが目的だと話した。
 実際、金栗記念の1500mでは残り100mでは遠藤日向(住友電工・23)に約10mリードされていたし、織田記念5000mでもラストの直線まで松枝博輝(富士通・29)に先行された。
 日本選手権ではタイム的な目標は設定しない。東京五輪予選で出した8分09秒92を、国内レースで更新するのは難しいからだ。ゴールデングランプリでも2000mから勝負を仕掛け、しっかり勝ちきることがテーマだった。
 しかしゴールデングランプリではハードリングに課題が残った。
「(踏み切り位置が)合っていないところが感覚としてありました。本当であれば障害に足をかけずに最後1000mをまとめたかった。ラストを上げようとしている中ではスピードを殺していたと思います。技術的な練習もやっていく必要がありますが、(3000m障害レースの)場数を踏むことで距離感などを養っていきます」
 日本選手権をどんなレース展開で勝ちに行くのか。ハイペースで引っ張って勝ちきることも、ラスト1周でスパートしてスピードの違いを見せることも、今の三浦ならできるだろう。だがゴールデングランプリで残った課題に再トライするため、残り1000mからスパートする可能性も大きい。
 日本選手権で終盤のハードリングがスムーズだったら、三浦の世界陸上オレゴンへの期待がさらに大きくなる。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?