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【織田幹雄記念国際2022レビュー②三浦龍司】

東京五輪3000m障害7位の三浦が5000mでV
専門外種目での快走は世界の戦いをイメージするため

4月29日に行われた織田幹雄記念国際。男子5000mには東京五輪男子3000m障害7位の三浦龍司(順大・20)が出場、ラスト勝負を制して13分32秒42で優勝した。三浦は4月9日の金栗記念選抜中長距離熊本大会でも専門外の1500mに出場し、日本歴代2位の3分36秒59をマークして関係者を驚かせた。三浦が専門外種目に積極的に挑戦している理由、3000m障害で世界に挑むのに必要なことなどが、レース後のインタビューの中で語られた。

●レース展開と優勝タイムについて

最初の1000mはペースメーカーの走りが安定せず、特に最初の1周は59秒9とあまりにも速かった。2周目は66秒7、3周目は67秒6(すべて手元の計測)。その後は65秒台が安定して続いたが、設定されていたペースは1周64秒で3000m通過が8分00秒。実際には8分08秒2で通過した。ペースメーカーは力のあるケニア人選手だったが、この日の低温と強風で正確なペースを刻めなかった。
――レース展開と優勝記録についての感想は?
三浦 1周(400m)64秒、3000m通過が8分00秒の設定でペースメーカーが行く予定でした。1000mまでは安定しないレース展開でしたが、上手くレースの中でゲームメイクすることができたので、後半までしっかり走り続けることができました。狙っていたのは13分20秒よりも上のタイム。そこより落ちてしまいましたが、今日のレースコンディションを考えればまずまずのタイムだったと思います。これだけの風の中ではペースを刻めた方だと思うので、良かったと思います
――1000m以降はイーブンペース。もっと上げ下げをしてほしかったのでは?
三浦 そんな贅沢なことは言いません。今回は64秒設定でしたから。ただ、もっとハイペースな展開だったらどうだったか、経験しておきたかったとは思います。
――ラスト勝負で順大の先輩で、東京五輪5000m代表だった松枝博輝(富士通)選手に競り勝ちました。
三浦 最後で差し切るのは武器としている部分です。その展開を狙っていたわけではありませんが、勝ちきることができたのは、それはそれでよかったのかな。(松枝が残り1周で前に出て逆転できるか)微妙なところでした。自分の判断というか、スパートをかけるのが遅かったら負けていました。(先頭選手との差が約10m開いてしまい抜くのがフィニッシュ直前になった)金栗記念1500mの経験を生かすことができました。


●スピードと持久力について

3月に学内競技会の3000mに出場したが、本格的なトラックレースは4月9日の金栗記念選抜中長距離熊本大会1500mと、織田記念の5000mに出場。専門外の2種目でともに優勝し、特に1500mでは日本歴代2位と本人も驚く快記録を叩き出した。冬期は全日本大学駅伝2区(11.km)で区間賞、箱根駅伝2区(23.1km)で区間11位。箱根駅伝はどの区間も20km以上と三浦には厳しい距離だが、区間順位はともかく1時間07分44秒のタイムは目標通りだった。
――今大会の5000mに出場した狙いは?
三浦 冬期練習、鍛錬期の成果を見るところに意図がありました。(5月8日の)ゴールデングランプリの3000m障害に向けて1500mにも出ましたし、スピードと持久力の兼ね合いというか、そこに向けての調整になります。総合的な種目になりますから、3000m障害は。
――冬のどういう取り組みの結果が今に生きていると感じていますか。
三浦 箱根もそうですが、駅伝の走り込み、脚作りが生きていると思います。1500mで結果も出ていますが、あとは瞬発的なところや、スピード持久的な部分を研いていくことが必要です。
――5000mで持久的な部分を確認したと思いますが、中盤以降の余力はどのくらいありましたか。
三浦 今日は余力みたいなものがありましたが、序盤はペース変動がありましたし、外国人選手独特のストライドを感じました。気を遣っていた部分で、体力を消耗した部分もあった。スタミナ的なところでも場慣れが必要で、経験をしていかないといけないと感じました。
――1500m、5000mと専門外の種目を走った収穫は?
三浦 1500mは単にスピードっていうところもありますが、そのハイスピードの中での判断力、どこで仕掛けるか、ペース配分をどうするか、というところが5000mよりもシビアに求められます。1500mでは一瞬の判断力がすごく研かれると思いました。

●世界で戦うためにゲームメイクする力

三浦はどの種目も3000m障害につなげることと、3000m障害で世界と戦うことを突き詰めて考えている。5000mを64秒以上のペースで走ることや、1500mを3分30秒台のペースの中でどんな判断ができるかを考える学生選手はいない。そのくらい、三浦の意識レベルは高い。1500mと5000mへの挑戦も、単純なスピードやスピード持久力ということだけでなく、「ゲームメイクをするためのスピード」に結びつけようとしている。
――1500m、5000mと走ったことで3000m障害はどんな走りができそうですか。
三浦 似ているところ、つながるところもあると思いますが、まったく別ものでもあるんです。まだ3000m障害を走っていないので、不安も大きいですね。
――3000m障害初戦のゴールデングランプリで、どんなところを確認しますか。
三浦 障害の位置というか、距離感をつかんでレースをしないといけません。練習とレースでは感じられることが違いますから。ゴールデングランプリという大きな大会でいきなり結果を求められるのですが、体と相談して、結果も伴ったらいいのですが。そこで3000m障害の感覚をつかんで、一番ピークを持っていく世界陸上に備えていきます。
――スピードも付いてきていますか。
三浦 付いてきている自覚はあります。良い感じで来ているかな、と思いますが、それを海外レースで発揮するとなると違う部分もある。自分だけの力で、ゲームメイクする力がもっと必要になってきます。単なる瞬発的なスピードと、ゲームメイクをするスピードとはまた違うんです。その点はまだ今シーズンは始まったばかりで、手探りの部分はあります。
               ◇
 三浦が本職の3000m障害に挑む5月8日のゴールデングランプリが注目される。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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