見出し画像

【全日本実業団ハーフマラソン2022プレビュー⑥新谷仁美前日インタビュー】

レース前日に記録よりも勝負重視を改めて強調

仕掛けるのは「ラスト5km」か?

 今年の全日本実業団ハーフマラソン(2月13日。山口市開催)で最も注目されているのが新谷仁美(積水化学・33)である。10000mとハーフマラソンの日本記録保持者で東京五輪10000m代表。その新谷が3週間後に自身13年ぶりのマラソン出場(東京マラソン)を決め、そこへのステップとしてハーフマラソンに出場する。

 嫌がっていたマラソン出場に至った新谷の思いやレースプランなどは、コラム②

で紹介しているが、レース前日に改めて、TBSの取材に応じた新谷の言葉を紹介する。

●「集団の中でその都度、レースプランを組み換えて走ります」

――いよいよ明日に迫りましたが、今のお気持ちは?

新谷 マラソンに向けてのハーフという位置づけでやっていて、(通常は毎レース狙っている)記録を狙うことは今回はありませんが、勝負に関してはしっかり意識してやりたいと思っています。

――マラソンにどうつながればいいと思っていますか。

新谷 集団の中でリズムをつかんでいくことと、例えスローペースであってもその中でリズムを作って、レースプランをその都度組み換えていきます。走りながら臨機応変に対応していくところを見つけていかないと、マラソンも走れません。マラソン本番はずっとイーブンペースで進むわけではないと思いますし、明日もスローペースで入ったりすると思うので。そういうときに生じる焦りが私の欠点で、明日も、東京マラソンにも影響してきます。そこはしっかり対応したい。

――そういった焦りはいつも、レースのどういうところで出てきたりするのですか。

新谷 今はレースの中だけで生じるというより、去年からずっと結果が出ていないという焦りが私の中にはあるので、また失敗したらどうしよう、という不安が焦りにつながるかもしれません。レースの中で生じる焦りではなく、(10000mの日本記録を出して以降の)この1年と2カ月間で結果を出せなかった焦りが走りに響いてくるとやっかいだな、と思います。

●「若手が勝負を挑んでくるのなら、私もしっかり勝負しにいく」

――そういう不安もある状況だから、勝つことが重要になる?

新谷 そうですね。やはり結果で私たち選手は評価される部分があるので、そこはしっかり(勝つという形で)結果として出さなければいけないと思っています。

――クイーンズ駅伝5区で新谷さんに1秒勝った五島(莉乃・資生堂・24)さんたち、若くて勢いのある選手も出場します。一緒に走る選手についてはいかがですか。

新谷 そうですね……意識しないということはまったくなくて、彼女たちもおそらく今回のハーフを踏んでからシーズンに入っていき、トラックなりマラソンなり分かれていくとは思いますが、やはりトラックを狙う上ではハーフが重要になります。自分も(20年1月にハーフマラソンで日本記録を更新して)踏んできた道です。(五輪&世界陸上では行われない)ハーフといえども勝負を仕掛けてくると思うので、そこは私もスキは作らず、彼女たちが正々堂々と戦いを挑んでくるのなら、私もしっかり勝負しに行きたいな、と思います。

――新谷さんとしても引くつもりはないと。

新谷 はい。そうですね。

●「ラスト5kmは色々な意味でポイントに」

――国内のハーフマラソンは14年ぶりだと思いますが、山口のコースの印象は?

新谷 昨日走ってみて、折り返すまでの直線が長いな、という印象がありました。でも東京マラソンと比べると、比較的やさしいコースなのかな。そういう意味では少し気が楽というか。ただ、直線が多いコースなので風の影響が大きくなると思いました。そこは集団を利用して、風除けにできる位置で自分が走ればいいことです。最後の5kmくらいは街中に入ってくるので、気が楽になる

――最後の5kmが楽に感じられそうな理由は?

新谷 15kmまでは周りの風景に刺激がない感じで、ちょっとメンタル的にやられるな、っていうコースなんですが、ラスト5kmになったらあと5kmで終わるということもありますし、天候にもよると思いますが、街中に入ってきて明るい雰囲気も感じられると思います。気持ち的には楽になるのですが、身体的には一番追い込まないといけないところです。色々な意味でポイントかな、と思います。

――ラスト5kmは15分台で上がる?

新谷 頑張ります。

●「2時間走り続けることに慣れてきました」

――マラソン練習を始めて、こういう部分が強くなった、と実感できているところはありますか。

新谷 実感する部分…、強くなった部分…、あっ、そうですね。2時間走り続けることにようやく慣れてきました。でも、これって生きる上で必要なのかな、という思いも持ちましたけど(笑)。

――今まで苦手としてきたところに挑戦して、それが苦ではなくなってきた?

新谷 いや、苦ですよ。苦、苦、苦。苦から抜け出ることはありません。根本的なところを考え込んで走っています。走るってそもそも、生きる上で必要なのかな、って。でも、そういう余裕を持って走れるようになったのだと思います。

TEXT by 寺田辰朗

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?