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【別大マラソン2022プレビュー①】

ハーフマラソンの古賀、トラックの鎧坂ら
別大に初マラソンの有望選手が多数出場

 第70回記念別府大分毎日マラソン大会(以下別大マラソン)が2月6日、大分市高崎山・うみたまご前をスタートし、別府市を折り返し大分市営陸上競技場にフィニッシュする42.195kmのコースで、7月開催の世界陸上オレゴン代表選考会を兼ねて行われる。“新人の登龍門”に相応しく、初マラソンの注目選手がずらりと揃った。
 トラックで世界陸上代表経験のある鎧坂哲哉(旭化成・31)、今年のニューイヤー駅伝5区区間賞の小野知大(旭化成・22)、同駅伝4区区間2位古賀淳紫(安川電機・25)、同駅伝4区区間6位の西山雄介(トヨタ自動車・27)が、トラックと駅伝の実績では期待できる。さらに青学大からも、今年の箱根駅伝優勝メンバーの近藤幸太郎(20)、飯田貴之(22)らが参戦する。
 招待選手では大六野秀畝(旭化成・29)と細森大輔(小森コーポレーション・25)が2時間7分台の自己記録を持つ。世界陸上派遣設定記録の2時間07分53秒を破り、日本人2位以内に入った選手が世界陸上オレゴン代表の選考対象となる。

●五輪代表を輩出しているチームの選手が初マラソンに挑戦

 初マラソン選手で一番の期待を集めそうなのが古賀淳紫だ。3年前のニューイヤー駅伝7区(15.5km)で区間賞。2年前の全日本実業団ハーフマラソンで日本人トップ。1年前の同大会日本人2位。そして今年のニューイヤー駅伝エース区間の4区(22.4km)で区間2位。ハーフマラソンの距離では今大会参加選手中一番の実績を持つ。
 ロードに強い選手として高評価を得ていたが、昨年11月には10000mで27分51秒64の好タイムをマーク。スピードレースにも対応できることを示した。いきなり結果を出す可能性を感じさせる選手だ。
 トラックのスピードでは鎧坂哲哉が一番ある。5000mは13分12秒63の日本歴代2位、10000mでも27分29秒74の日本歴代6位を持つ。マラソンを走る日本人10000m歴代最速ランナーとなる。
 ニューイヤー駅伝3区(13.6km)で3年前に区間賞を取っているし、1年前には区間4位ではあったが、マラソン選手が走ってきた旭化成の4区を任された。東京五輪マラソン6位入賞の大迫傑と何度か練習することで、マラソンを走るイメージを持てるようになったという。
 小野知大は鎧坂の旭化成の後輩だが、タイプ的にはロードに強い。10000mの自己ベストと同じタイムで、ロードの10km通過時に走っても余裕を持てるという。マラソン名門・旭化成のスタッフが、大きな期待を持っている選手だ。
 西山雄介は2年前のニューイヤー駅伝3区区間賞選手。今年のニューイヤー駅伝はトヨタ自動車の4区を任され区間6位。同じチームに服部勇馬(トヨタ自動車)、駒大時代に中村匠吾(富士通)と、東京五輪マラソン代表2人を先輩に持つ。
 上記4人には、初マラソン日本最高の2時間07分42秒を更新するタイムが期待できそうだ。
▼初マラソン日本歴代10傑----------------------------------
2.07.42.作田将希(24歳・JR東日本)21年2月28日びわ湖14位
2.07.54.足羽純実(26歳・Honda)21年2月28日びわ湖15位
2.08.10.山下一貴(23歳・三菱重工)21年2月28日びわ湖18位
2.08.12.藤原正和(21歳・中大)03年3月2日びわ湖3位
2.08.13.土井大輔(24歳・黒崎播磨)21年2月28日びわ湖21位
2.08.30.吉田祐也(22歳・青学大)20年2月2日別大3位
2.08.53.森下広一(23歳・旭化成)91年2月3日別大1位
2.08.53.久保和馬(24歳・西鉄)21年2月28日びわ湖28位
2.09.03.尾田賢典(30歳・トヨタ自動車)11年2月27日東京4位
2.09.07.聞谷賢人(25歳・トヨタ紡織)20年2月2日別大7位
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 古賀の所属する安川電機は、12年ロンドン五輪で中本健太郎が6位に入賞し、16年リオ五輪にも北島寿典が出場した(北島は今回の別大にも出場)。鎧坂と小野が所属する旭化成は、数多のマラソン代表を輩出してきた日本ナンバーワンの伝統チーム。そしてトヨタ自動車も服部を東京五輪に送り出した。
 マラソン選手育成のノウハウを持っているチームばかりで、その点も今年の別大が期待できる理由の1つに挙げられる。

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●青学大勢5人が出場。学生記録(2時間08分12秒)更新はあるか?

 マラソン選手育成という点では青学大も実績がある。強くなってからまだ数年の大学だが、男子マラソンの学生歴代10傑には吉田祐也(現GMOインターネットグループ)と出岐雄大が名を連ねる。
▼学生歴代10傑--------------------------------------
2.08.12. 藤原正和(中大4年)03年3月2日びわ湖
2.08.30. 吉田祐也(青学大4年)20年2月2日別大
2.09.50. 佐藤敦之(早大3年)00年3月5日びわ湖
2.09.50. 土方英和(國學院大4年)20年3月1日東京
2.10.02. 出岐雄大(青学大3年)12年3月4日びわ湖
2.10.07. 藤田敦史(駒大4年)99年3月7日びわ湖
2.10.21.0 瀬古利彦(早大3年)78年12月3日福岡国際
2.10.21. 鈴木健吾(神奈川大4年)18年2月25日東京
2.10.21. 堀尾謙介(中大4年)19年3月3日東京
2.10.49. 中村祐二(山梨学大2年)95年3月19日びわ湖
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 出岐と吉田以外にも下田裕太(現GMOインターネットグループ)が16年2月の東京で2時間11分34秒を、一色恭志(同)も同大会を2時間11分45秒で走っている。箱根駅伝の成績に目を奪われがちだが、青学大のマラソンまで走る総合力を評価すべきだろう。
 その青学大からエントリーしたのは以下の5人(所属の右側は10000m自己記録)。
宮坂大器 (青学大3年)28分34秒23
西久保遼 (青学大3年)28分21秒39
飯田貴之 (青学大4年)28分30秒30
近藤幸太郎(青学大3年)28分10秒50
横田俊吾 (青学大3年)28分57秒28
 今年の箱根駅伝優勝メンバーに入っていたのは2区区間7位の近藤と、4区区間3位の飯田の2人。横田は2位だった出雲全日本大学選抜駅伝のアンカーを、区間3位で走り2人を抜いた。西久保は10000mで28分21秒39、宮坂も28分34秒23と、5人全員がトップ集団を走るのに十分なスピードを持っている。
 学生歴代10傑選手たちは大物選手ばかりだが、近藤は日本インカレ5000m優勝と個人種目の実績も持っている。マラソンで飛躍してもおかしくない選手だ。

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●招待選手たちもそれぞれにストーリー

 学生選手も含めて初マラソン選手への注目度が大きい大会だが、マラソンの実績で招待された選手たち(下記のリスト)が頑張らないわけにはいかない。
▼招待選手と自己記録---------------------------------
大六野秀畝(旭化成)2時間07分12秒
市山翼(小森コーポレーション)2時間07分41秒
細森大輔(YKK)2時間08分28秒
藤曲寛人(トヨタ自動車九州)2時間08分30秒
藤川拓也(中国電力)2時間08分45秒
小山裕太(トーエネック)2時間08分46秒
橋本 崚(GMOインターネットグループ)2時間09分29秒
北島寿典(安川電機)2時間09分16秒
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 参加選手中最高タイムを持つ大六野は12月の福岡国際マラソンは脱水症状を起こして18位(2時間13分45秒)と敗れたが、10000mで日本選手権優勝経験があることや、ニューイヤー駅伝でも区間上位の常連であることから、優勝候補筆頭に推される選手だ。
 国際大会の代表実績では、16年リオ五輪代表だった北島が一番だ。リオ五輪後は故障に苦しんだが、昨年のびわ湖では順位こそ42位と良くなかったが、2時間09分54秒の自身セカンド記録まで状態を戻してきた。今大会での完全復活を期待したい。
 青学大OBである橋本と藤川も、後輩たちの手前、恥ずかしい走りはできない。橋本は最近は調子を落としているが、地元大分県出身で、19年別大では5位(日本人2位)の好成績を残している。MGCでも5位に入って東京五輪マラソン補欠にも選出された。
 藤川は20年東京で2時間08分45秒の22位、中間点を1時間02分22秒で通過するハイペースに挑戦した。ストイックに練習に取り組める選手で、当時の中国電力スタッフが絶賛していたことが印象に残っている。
 藤川は箱根駅伝初優勝時のキャプテンで9区区間賞。橋本は5区で区間賞の3代目“山の神”神野大地(セルソース)の控えだったが、練習に取り組む姿勢は素晴らしかったという。
 2時間7~8分台選手の自己記録は、藤川を除く全員が昨年2月のびわ湖で出している。28人が2時間9分未満と好記録が量産された大会なので、その点は考慮する必要があるが、その中では藤曲がニューイヤー駅伝4区区間3位タイと、駅伝エース区間でも上位に入った。順大の先輩で初代“山の神”今井正人(15年世界陸上マラソン代表)に憧れてトヨタ自動車九州に入社した選手である。
 どの選手も優勝したときには必ず、そこに至るストーリーを持っている。

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TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト


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