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【世界陸上オレゴン2022フィールド種目期待のコンビ】

戸邉直人&北口榛花、JAL日本記録保持者対談
第2回 オリンピックの決勝を経験したからこそ

男子走高跳の戸邉直人(JAL・30)と女子やり投の北口榛花(JAL・24)。フィールド種目の日本記録保持者同士の対談の第2回。東京五輪決勝に進んだことで得られた収穫として何があったのか。そして走高跳とやり投という、助走を行うフィールド種目の選手同士ならではのトークが展開した。

●五輪決勝を経験した収穫と、明確になった課題

――しかし決勝に進んだことで収穫もあったと思いますが?
戸邉 気持ちの部分でまったく違います。予選で落ちると決勝をスタンドから見ることになります。それなりに学ぶことはありますが、競技者かといったら少し違う気がします。世界陸上の決勝は毎回スタンドにいましたが、何しに来たんだろう、という思いを持って見ていました。決勝の場に選手として立っているか、いないかの違いは大きいですね。予選は通過するため、決勝は戦うため。選手たちの目標や、熱量といった部分も大きく違います。今後、自分がメダルを目指す上で、その場で戦ったことは経験として大きなことになりました。予選も、決勝を戦うための通過の仕方を学べたことで、今後に生かすことができます。
北口 自分から積極的に話しかけられるタイプではありませんが、決勝に行ったことで色んな選手と話すことができました。知り合いが増えたことは収穫ですね。あとは、持ち記録が良い人よりも、単にそのときに強かった人が勝つ、ということを感じ取ることができました。入賞ラインもその年に調子が良い人より、そこで力を発揮できた人でした。今の調子がわかれば自信を持って臨めるのかもしれませんが、私は練習で投げる距離が参考にならなくて…。練習でこういうことができたら試合でこのくらい行く、という確証を得られるようになったら、より自信を持って臨めると思いました。戸邉さんは体力がこのくらいで、技術がこうできたら記録が変わると理解されています。私は目指している技術を理解して臨んだというより、以前と同じことをやって臨んだ感じなんです。戸邉さんはすごいと思います。

●助走スピードの捉え方

――技術的なところでは、走高跳とやり投は助走のあることも共通しています。北口選手は保持走とクロスの歩数を変更していますし、戸邉選手は助走歩数自体を何度も変えてきました。
北口 20年に一度クロスの歩数を6歩に減らしましたが、昨年また8歩に戻しました。助走スピードを上げることなどを目的に変えましたが、助走自体の速さより、投げの局面でブレーキをかけない部分を改善しないといけないのかな、と思って戻したんです。前に走るスピードは速くなっている自信はあったのですが、投げるまでに怖くなって体が勝手に制御してしまったんです。保持走からクロスに入るところでブレーキをかけたり、ラストステップに入る前に減速したり。最後に右、左と着くところは3パターンくらいあって、そこはブレーキをかけることなく突き進む速度は見つけました。
戸邉 僕も助走歩数を何度も変えてきました。大学の最初は11歩でしたが、そこから9歩、7歩と少なくして、一時期9歩に戻したこともありましたが、8歩の時期もあって、18年の夏以降は6歩で固定しています。9歩に戻したときはスピードを上げる狙いもありましたが、走高跳の助走はそれほどスピードは要りません。そもそも日本選手の助走は、世界的に見れば速い方なんです。歩数の変更を頭で考えて跳躍全体をイメージできることもありましたが、実際にやってみて初めてわかることも多かったですね。
北口 オリンピックを一緒に戦って思ったのは、助走スピードはみんなそこまで速くないことです。バイオメカニクスデータを見ると世界のトップ選手は私より速いのですし、世界記録保持者のシュポタコヴァ選手(チェコ)もそうなんですが、速く走ろうとしているわけではないんです。実際、速く走っているようには見えません。やり投は助走速度よりも、最後の投げの局面で右足、左足と着くときの速度が速ければいいと言われています。ゆっくりの助走でも、ずーっと減速が小さく走れている人が遠くに投げているんです。私はつねに、頑張らずに速く走りたいと思っています。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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