【全日本実業団山口ハーフマラソン2021展望⑦前日女子】

原田、森田が1時間9分台に意欲
大西陣営は慎重だが練習では長い距離に適性

全日本実業団ハーフマラソンが2月14日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで行われる。今大会での日本選手の1時間8分台は過去、大会記録の赤羽有紀子の1時間08分11秒など、3人しか出していない。今大会では前回2位の筒井咲帆(ヤマダホールディングス・25)と安藤友香(ワコール・26)が、1時間8分台のタイムでの優勝を目指している。
 前日の維新百年記念公園陸上競技場では、有力選手たちが軽めのメニューを行っていた。選手や指導者たちのコメントから、明日の見どころを紹介する。

●チーム再建への一歩としたい原田

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 若手では小笠原朱里(デンソー・20)、原田紋里(第一生命グループ・22)、大西ひかり(20・JP日本郵政グループ)の3人が注目されている今大会。原田と大西が前日午前中に競技場で練習を行っていた。
 1時間9分台に意欲を見せたのは原田だった。前日練習を「堅くなく、リラックスしてできた」と言い、明日のレースについて以下のように話した。
「山陽女子ロードのときは最初1kmの入りがゆっくりでしたが、明日は速い展開になると思い描いています。最初の5kmが上りですが、集団の中で上手くリズムを作れたらその後も押して行ける」
 初ハーフだった昨年12月の山陽女子ロードでは、1時間10分21秒で日本人2位。第2集団でレースを進めたが、15km以降で先頭集団で走っていた一山麻緒(ワコール・23)との差を4秒まで詰め、残り1kmで小笠原を4秒引き離した。
「明日は1時間10分を切れたら満点ですが、今回(好成績といえる)結果を残せたら、山陽女子ロードがまぐれじゃなくなります。駅伝の長い距離の区間もやっていける自信になると思います」
 第一生命グループは過去、クイーンズ駅伝優勝も達成している名門チームだが、昨年は予選会のプリンセス駅伝を通過できなかった。原田はクイーンズ駅伝では過去、距離の短い2区しか走ったことがない。
 今回のハーフマラソンは原田と第一生命グループにとっては、駅伝再建の大きな一歩となる大会でもある。

●故障で苦しんだ森田が久しぶりに手応え

 森田香織(パナソニック・25)は過去3回、ハーフマラソンを1時間10分台で走っている。17年12月の山陽女子ロードで1時間10分11秒(6位)、18年2月の丸亀国際ハーフマラソンで1時間10分10秒(2位)、そして同年3月の世界ハーフマラソン選手権で1時間10分46秒(17位)。丸亀と世界ハーフは日本人トップで、世界ハーフでは一山と前田穂南(天満屋・24)の東京五輪マラソン代表2人に先着した。
 クイーンズ駅伝1区でも森田は17年、18年と2年連続1区区間賞で、チームの2連勝に貢献した。だが19年6月の日本選手権以降は故障がちになり、駅伝でも活躍できなくなった。ただ、昨年11月のクイーンズ駅伝は距離こそ短いがインターナショナル区間の4区で日本人トップを取り、復調のきっかけをつかんだ。
「1月頭は調子がまったく上がらなくて不安になりましたが、その後の実業団連合の徳之島合宿では、他チームの選手たちと練習して、良い状態に上がっていることを確認できました。まだ絶好調ではありませんが、久しぶりに自信を持ってレースに臨めます」
 1時間10分台の3レースの中では、丸亀が風と雪の悪コンディションだった。それがなければ1時間9分台は楽に出ていたと推測できる。当時ほど絶好調ではなくとも、森田が1時間9分台を出す可能性はある。
 今大会で好走すれば3月にも長い距離の大会に参加し、来季のマラソン挑戦に向けて走り出すプランだ。

●岩出はヒザの状態次第か。
 大西は初の10km超の距離に挑戦

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岩出玲亜(東日本実業団連盟)も元気に前日練習を行っていた。
 1月9日の練習中に転倒して左ヒザを強打。1月31日の大阪国際女子マラソンは途中棄権したが、赤星一平コーチによれば「8割くらいは戻っている」という。「本人は1時間9分台を目標にしていますが、ヒザ次第だと思います」
 慎重な言葉を口にしたが、練習ではっきりと問題が出ているわけではない。
 この大会は1カ月後の名古屋ウィメンズマラソンへのステップという位置づけだ。19年名古屋で2時間23分52秒の自己記録を出したとき、1月のハーフマラソンを1時間09分46秒の自己2番目のタイムで走っている。
 明日のハーフはヒザの状態を確認する意味でも、1カ月後の名古屋を占う意味でも重要なレースになる。
 注目される若手トリオの1人、大西ひかりも400 mなどで最終刺激を体に入れた。
 新井智美コーチは「10kmを超える距離のレースは初めてなので、周りの力も借りて、1時間11分切りを目指したい」と話した。
 レースでは未体験の距離になるが、練習ではしっかり距離も走っている。1年前は1回しか行わなかった20kmの距離を、今年はクロスカントリーやロードで数回行った。
「1人でも淡々と走れる選手です。風が強くても動じないですし、2年目の選手とは思えません」(同コーチ)
 同学年には日本選手権5000m2位の廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ・20)や小笠原、5000mで15分05秒78を持つ萩谷楓(エディオン・20)ら、将来の代表候補選手が揃う。
 大西自身は周囲を気にせず、以前の自分に勝ちたいと考えるタイプ。それでも今回の結果次第ではマラソンに対し、同学年選手たちに負けない将来性を示すかもしれない。

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 現在日本の長距離界全体に、記録を出して当然という雰囲気がある。レースは安藤、筒井ら東京五輪をトラックで狙う選手が積極的にペースを作る可能性が高い。昨年は最初の5kmを16分46秒で走ったが、気象条件が悪くなければそれより速く入るだろう。
 マラソンで実績があり、来月の名古屋に出場予定の小原怜(天満屋・30)、伊藤舞(大塚製薬・36)らも、多少のスピードには余裕で対応できる。今回紹介した原田、森田、岩出、大西も加わり、10人以上の集団で10kmを通過するだろう。
 その状態から誰が、どの距離で仕掛けるのか。昨年は15~20kmを上位3選手が16分08~10秒とペースアップした。もしも前半が昨年と同じ少し余裕のあるペースなら、15kmから15分台へのペースアップが見られるかもしれない。
 1時間8~9分台を多くの選手が狙える状態なら、終盤は激しい競り合いになる。マラソンの半分の距離のスピード感で、女子選手同士の華やかな戦いが繰り広げられる。

TEXT・写真 by 寺田辰朗 写真提供:フォート・キシモト

明日午後2時 TBS系列



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