見出し画像

男子110mハードル期待の20歳・村竹が後半に強さ。オレゴンの悔しさを成長の糧にブダペストへ【日本インカレ2022】

 男子110mハードル世界陸上オレゴン代表だった村竹ラシッド(順大3年)が、日本インカレ2日目(9月10日@たけびしスタジアム京都)の同種目に13秒36(+0.7)で2年ぶり2度目の優勝を果たした。村竹自身が万全とは言えないコンディションの中での記録。今季はチャンスがあるかわからないが、自己記録の13秒27の更新は時間の問題だろう(来年の世界陸上ブダペスト大会標準記録は13秒28)。7月のオレゴンでは13秒73(+0.2)で予選落ち。代表3選手の中では唯一、準決勝に進むことができなかったが、12秒台も期待される20歳が積んだ経験は来年の世界陸上ブダペスト、24年のパリ五輪につながっていく。


●レース後半で強さを発揮した日本インカレ

日本インカレの村竹は前半こそ、好スタートを切った藤原孝輝(東洋大2年)に前に出られたが、7台目で並ぶと終盤はリードを広げていった。13秒36は自己記録の13秒27に0.09秒差で悪い結果ではない。
「最低限の仕事ができてよかった、と思います。藤原君が思ったより強くて驚きはありましたが、後半、落ち着いて差し切ることができました。前半でもう少し力を使って地面を押せたら良かったのですが、その分、後半で力を使うことができました。一昨年自分が勝って、去年の泉谷(駿介。現住友電工。13秒06の日本記録保持者)さんと、順大が勝つ流れが続いていたので負けるわけにはいかない、というのが一番強い思いでした」
 優勝して対校得点の8点を獲得。総合2連勝を果たした順大のポイントゲッターとして、役割はきっちり果たした。
 今シーズンは試合に多く出たが欠場も何試合かあった。5月の関東インカレを欠場したが、6月の日本選手権には間に合わせ、予選で13秒27(+0.5)の自己新を出した。だが「左の股関節と右ヒザの痛みがぶり返した」ことで、7月の世界陸上も万全ではなかった。泉谷、石川周平(富士通・27)、村竹と出場した日本勢3人のうち、村竹だけが準決勝に進めなかった。
 帰国後、8月のAthlete Night Games in FUKUIも「股関節が詰まったり、張ったりして抜き脚の切れが全くなかった」という状態で13秒52(+0.4)の2位。石川には競り勝ったが、優勝した髙山峻野(ゼンリン・28)には0.16秒差をつけられた。日本インカレまでに状態は上げられたが、万全ではなかった。
「今シーズンは試合に多く出過ぎて疲れが溜まっています。そのなかで、13秒3台までもってこられたのはよかったです」
 今シーズンの試合出場は状態を見て判断するが、「去年も同じことを言いましたが疲れもありましたが、その疲れと同じくらい充実感もあったシーズンでした」と22年を振り返った。


●成長の原動力だった悔しさもバージョンアップ

村竹は21年シーズンに13秒28をマークし、20年の13秒61から自己記録を一気に引き上げた。21年の13秒28(+0.5)は日本選手権の予選で、東京五輪の参加標準記録も突破したが、決勝はフライングで失格した。代表争いをする覚悟ができていなかったことも、フライングの背景にあったと自己分析している。
「去年は自分が、オリンピックに出るところに来ていると思えなかったんです。周りの環境が一気に変わって、それに対応できなかった」
 そこから1年。前年の日本選手権の悔しさを晴らすことも糧に、「自信になる練習を積み重ねてこられた」と明言できるまでになっていた。5月のゴールデングランプリでは優勝し、東京五輪準決勝に進出した外国選手2人に先着した。しかし前述のように関東インカレは故障の影響で欠場。故障明けの日本選手権予選で13秒27を出すことができたのは、長期的にトレーニングを積み重ねたことが一番の要因だった。
 日本選手権決勝は13秒31(-1.2)で泉谷に続く2位。世界陸上オレゴン代表を決め、今季の最大目標を達成した。オレゴンで予選落ちしても「充実していた」と言えるのは、20歳の若さで日本代表入りができたからだろう。それに加えて、オレゴンで悔しさを感じたことも、今後に向けてモチベーションを上げられた。
 来年のブダペストでやりたいレースも、しっかりイメージできている。
「もっとパワーを使えるようにして、スタートはキレキレに攻めたいと思っています。そうしたら後半に速いスピードで入って行けますが、速くかつ安定してハードル間を刻んでゴールまで持っていくことが課題です」
 22~23年は、前年の日本選手権でのフライング失格から世界陸上の予選落ちに、悔しさのレベルもバージョンアップする。
「世界陸上へ懸ける思いを忘れずに冬期練習に臨んで、課題を冬期に修正して、刻んで行く走りをゴールまでできるようにしたい」
 泉谷、石川、髙山との代表争いを勝ち抜くことが前提になるが、ブダペストでは、23年バージョンの成長をした村竹のハードリングが見られそうだ。

TEXT by 寺田辰朗

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?