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【日本選手権クロスカントリー2022プレビュー⑤注目選手】

高校生の佐藤がシニアに参戦し五輪入賞者の“先輩”三浦に真っ向勝負

1500mで世界陸上オレゴンに挑戦する第一歩

 2月26日、福岡市の海の中道海浜公園で行われる日本選手権クロスカントリー。シニア男子(10km)に高校生の佐藤圭汰(洛南高3年)が参戦する。昨年3種目で高校記録を更新し、今年は世界陸上オレゴン代表を目指す期待の選手だ。前回優勝者で東京五輪3000m障害7位入賞の三浦龍司(順大2年)は洛南高の2学年先輩。2人の対決は話題を集めそうだ。

 そして忘れていけないのが、学生駅伝で2大会連続区間賞の石田洸介(東洋大1年)の存在だ。佐藤の前の5000m高校記録保持者で、シニアでも通用する走りが期待できる

●3種目で高校新。シニアに交じっても積極的な走りができる高校生

 佐藤がU20ではなくシニア・レースに出場するのは世界陸上を意識してのことだ。洛南高の奥村隆太郎監督は狙いを次のように話す。

「今後、世界陸上オレゴンやその先を目指すなら、シニア選手たちと勝負して勝ち上がっていかないと代表になれません。(日本選手権クロスカントリーも)シニアに出て現在地を知り、シニアの戦いの雰囲気を経験することが目的です」

 昨シーズンの戦績は超高校級と言っていい。佐藤が出した3種目の高校記録と、昨年のシーズン日本リストの順位は以下の通りである。

1500m:3分37秒18(3位)

3000m:7分50秒81(4位)

5000m:13分31秒19(18位)

 今大会のシニアは10kmと高校生にとっては長い距離だが、佐藤は全国高校駅伝3区(8.1075km)で区間日本人1位(区間4位。区間1~3位はアフリカ人留学生選手で、佐藤は区間賞から11秒差)と好走している。

 シニアのレースでもトップ集団で走る力は十分ある。ひょっとすると先頭集団の“中”ではなく、集団の先頭を引っ張るかもしれない。

「最終的には5~6位を考えているようですが、レースプランとしては持ち味である積極的な走りを、前半からしていくつもりです」

 高校生がシニアの大会に出場すると、萎縮してしまって力を発揮できないケースも多いが、佐藤にその心配は無用と言っていい。1500mの高校記録を出したホクレンDistance Challenge千歳大会は、河村一輝(トーエネック・24)が日本記録を出した大会で、坂東や的野遼大(三菱重工・29)といった日本のトップ選手たちに先着した。5000mの高校記録を出した日体大長距離競技会でも、池田耀平(カネボウ・23)や西川雄一朗(住友電工・24)に競り勝った。

「今回はそれらのレースよりも、レベルの高い選手がたくさん集まります。そういったレースを経験することで見えてくる課題がある」

 高校生が実業団や学生選手を相手に、真っ向勝負を挑む。

●世界に挑戦するプロセスに先輩の三浦

 クロスカントリーは昨年、この大会のU20レースで優勝している。「適性は高い」と奥村監督は言い切る。

「普段の練習ではそれほど多くクロカンを行っているわけではありませんが、週に4回行うジョグの場所が芝生や多少の起伏があり、クロカンにマッチするんです」

 同じ練習で強くなったのが、洛南高で佐藤の2学年先輩だった三浦である。19年シーズンに3000m障害の高校記録を30年ぶりに更新し、シニア選手とのレースでも臆せず先頭を走っていた。パリ五輪のホープと期待され始めたが、大学初レースで日本歴代2位を出すと、昨年は日本記録を3回更新。東京五輪7位入賞まで駆け上がり、日本長距離界の歴史に残る偉業を達成した

 佐藤はその三浦に対し、挑戦する気概十分なのだ。

「佐藤は他でもなく、三浦を意識しています。三浦と走るためにシニアにエントリーしたと言ってもいい。佐藤はラスト勝負にそこまで強くないので、その前に決めに行くと思います」

 三浦の洛南高在学中は2学年差があり、まったく歯が立たなかった。しかし佐藤は、三浦のことを尊敬はしていても、手が届かない別世界の選手とは思っていないことを明かしている。世界で戦う選手になるには、三浦はステップアップしていく過程で格好の目標だと考えているのだ。

 佐藤が世界陸上オレゴンの代表を目指しているのは1500m。参加標準記録の3分35秒00は佐藤の自己記録と2秒18差がある。普通に考えたら簡単に埋められる差ではないが、奥村監督は「目標として十分可能」と見ている。そのくらいノビシロが感じられる選手なのだ。

 日本選手権クロスカントリーは佐藤にとって、オレゴンへの大きな一歩となる。

●学生では佐藤の前の高校記録保持者・石田も出場

 佐藤に上位の可能性があるのなら、東洋大ルーキーの石田洸介にも同じように可能性はある。石田が20年にマークした5000mの前高校記録は13分34秒74で、佐藤の記録とは3秒55の違いである。そのタイムを出したレースでは、鎧坂哲哉(旭化成・31)と大迫傑(30)の2人に1秒ちょっとの差でフィニッシュした。

 東洋大に入学した昨年前半は試合にもほとんど出られなかったが、10月の出雲全日本大学選抜駅伝では5区で、11月の全日本大学駅伝では4区で連続区間賞を獲得した。

 佐藤と同じようにスピードが武器の選手。全区間が20km以上の箱根駅伝出場は見送り、1月の全国都道府県対抗男子駅伝に出場する予定だったが、大会自体が中止になった。

 東洋大の酒井俊幸監督はクロスカントリー出場の目的を「トラックにつなげること。そのために順位より追い込むこと」だと言う。

「都道府県駅伝がなくなって、ゆっくりですがしっかり走り込みました。今は徐々にスピードを上げているところです。この時期はヒル・トレーニングが重要で、クロカンを行うことで筋力も養えます。そのなかでもトップスピードを維持できるかどうか。ここをステップに3月のトレーニングを考えて、春の10000mにつなげていきます」

 昨年は個人では大きな試合に出場すらできなかった。「まずはインカレで勝負していくこと」を22年の目標としている。石田本人も箱根駅伝後の取材で、悔しさを強調していたし、トップ選手の証である10000mの27分台も目標として口にしていた。

 日本選手権クロスカントリーはトレーニングの一環だが、上位で走らないことには追い込んだことにはならない。前高校記録保持者で学生駅伝でも結果を出している。佐藤と同じ集団で走ることになったらもちろん、負けるわけにはいかない。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト


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