２０２０年３月１日「風をよむ～パンデミック～」

誰もいない街…広場も…レストランも…ひとけがありません。
新型コロナウィルスの感染が広がるイタリア北部・ロンバルディア州の光景です。

イタリアの感染者は１０００人を超え、死者は２９人となり混乱が広がっています。スーパーマーケットには、パニックになった住民が押し寄せますが…

イタリア・ジェノバの住民「パスタの棚が空っぽだよ。何が起きているんだ？」

棚に商品はほとんどありません。

ミラノでのファッション・ショーでも、一部、無観客でショーが行われるなど対応に追われています。ヨーロッパでは、スイスやオランダでも感染者が確認されるなど感染が拡大。

さらに「リオのカーニバル」で沸くブラジルでも２６日、南米初の感染者が
出ています。そして中東でも…

イランの薬局の店主「マスクは店頭も在庫も売り切れた。仕入れ先からも返答がないんだ」

２９日の時点で、すでに４３人の死者が出ているイラン。
そのイランではこんな場面が…

イラン　ハリルチ副保健相「（咳き込む）」
画面左側、しきりに汗をぬぐっているのはイランの副保健相。
この会見翌日、検査で陽性だったことが判明します。

またイランでは副大統領にも感染が確認されています。

アジアでは、感染が拡大する韓国でマスクを求める長蛇の列…

いまだ「感染者ゼロ」としている北朝鮮では、国を挙げて感染を防ぐ「超特級防疫措置」を取るとしています。

一方、アメリカでは…

アメリカ　トランプ大統領「メディアはそれが大惨事のように伝えるが、我々はうまくやっている」

感染拡大への対応に自信を覗かせるトランプ大統領。

しかし、カリフォルニア州では２７日までに３３人の陽性を確認。８４００人以上が経過観察の対象になるなど、「市中感染」の恐れが出てきています。

こうした事態に、アメリカのＣＤＣ＝疾病対策センターは…

アメリカＣＤＣ　シュチャット首席副所長「もはや‘'パンデミック’の可能性があるかないかの問題ではなく、いつそうなるかの問題」

またＷＨＯ＝世界保健機関も…

ＷＨＯ　テドロス事務局長「このウイルスは‘パンデミック'’に発展する可能性がある」

”パンデミック”とは、ギリシア語の「すべての人々」に由来し、感染症流行の警戒レベルを示す言葉。

ＷＨＯが定める、１から６のフェーズ（段階）の最高度、フェーズ６、世界的大流行の状態で、いわゆる“感染爆発”を指します。

実は今から１１年前、世界はこの“パンデミック”に見舞われたことがありました。

２００９年、メキシコやアメリカで発生した新型インフルエンザの感染は一気に拡大…

WHO　チャン事務局長「世界は２００９年インフルエンザのパンデミックが始まったばかりです」

世界214の国と地域に感染は広がり、死者は１万８０００人を超えます。

アメリカ　オバマ大統領（２００９年当時）「懸念すべき状況ですが、パニックになってはいけません」

日本でも成田空港に到着した機内から感染者が出ると、乗客らを近くのホテルにとどまらせましたが感染は全国に拡大。２０３人が亡くなったのです。かつて古代では、天然痘やマラリアがローマ帝国の滅亡を早めた、とも言われ、中世にはペストによって世界人口の４分の１が亡くなったと言われます。

そして第一次大戦のさなかには、スペイン風邪が猛威を振るい、一説には死者が１億人にのぼるといわれるなど人類は様々なパンデミックに見舞われてきました。

そして現代は、この“パンデミック”に、改めて警戒する必要があると専門家は訴えます。

堀賢教授・順天堂大学大学院（感染対策）「グローバル化が進む中で、人が高速・大量に移動する時代になった。そうするとわれわれが思った以上に速く感染症が拡散する時代になったということ」

以前よりも世界中がつながった今、私たちはパンデミックの脅威によりさらされることになった、と言えるかもしれません。