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2021年5月23日放送 風をよむ「停戦はしたけれど・・・」

中東パレスチナ自治区ガザ。生後5か月の息子に語りかける父親…

ガザ地区の父親「私に残されたのは、この子だけです…」

イスラエルによる空爆で妻と4人の子供を亡くし、唯一、この子だけが亡くなった母親に抱かれた状態で見つかりました。

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イスラエルとパレスチナの間で11日間続いた激しい戦闘。

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国際社会が停戦を摸索する中、関係各国が水面下で交渉を重ね、20日、エジプトの仲介でようやく停戦合意に至りました。しかし、双方の禍根は根深く、いつまた戦火に発展しないとも限りません。

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停戦に至るまで、国連の安全保障理事会は、4回も緊急会合を開きながら停戦を求める声明の採択に至らず、犠牲者は増え続けました。

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パレスチナ自治政府マルキ外相(16日・国連)「パレスチナ市民が何人殺害されれば、国際社会は非難に至るのか?」

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その理由はアメリカの反対。バイデン大統領は停戦を支持すると表明しながら、あくまでイスラエルの自衛権を支持し、声明の採択に反対していたのです。国際社会の非難にもかかわらずイスラエル寄りの姿勢を続けるアメリカ。しかし、それが、かつて大きく変化した時がありました。

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ネタニヤフ首相(アメリカ議会演説・2015年)「今の協議ではイランの核開発を防げないばかりか、大量の核兵器を手にするだろう―」

2015年、イランとの核合意に取り組むオバマ政権に対し、訪米したイスラエルのネタニヤフ首相が、アメリカ議会で強く非難。当時のオバマ大統領との関係は悪化しました。

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オバマ大統領(当時)「ネタニヤフ首相の演説には、有効な提案は一切無かった」

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さらに翌年、国連安保理でイスラエルのユダヤ人入植活動を非難する決議の採択を、オバマ政権が容認したことから両者の溝はより深まったのです。

ところが、トランプ大統領の時代になると一転…

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2018年5月に、エルサレムをイスラエルの首都と認めアメリカ大使館を移転。さらに…

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トランプ大統領(ワシントン・2019年3月)「私は、ゴラン高原での、イスラエルの主権を認める大統領宣言に署名する」

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イスラエルがシリアから奪い占領したゴラン高原について、国際社会からの非難にもかかわらず、イスラエルの主権を認めます。

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娘婿で大統領上級顧問だったクシュナー氏は正統派ユダヤ教徒で、娘のイヴァンカさんもユダヤ教に改宗。親イスラエルのキリスト教福音派を支持基盤とするトランプ氏は、イスラエル寄りの姿勢を強めました。

こうしたアメリカの姿勢が、今回、民主党・オバマ政権の副大統領だったバイデン氏の大統領就任で、大きく変わると思われたのです。ところが、程度の違いこそあれ、イスラエル寄りの姿勢はいまだ変わったように見えません。なぜなのでしょうか?…

バイデン政権になっても依然として変わらないイスラエル寄りの姿勢。そうした中、ニューヨークタイムズは、停戦に至る交渉の背景に、バイデン大統領と、イスラエルのネタニヤフ首相の個人的関係があると伝えました。

およそ40年前、当時若き上院議員だったバイデン氏は、イスラエルの外交官としてアメリカに滞在したネタニヤフ氏と知り合い、それ以降、政治信条が異なっても良好な関係を築いてきたといいます。そうした老練な政治家としての自信と、政治的な思惑が今回の対応に大きく表れたと専門家は言います。

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前嶋和弘・上智大学教授(現代アメリカ政治)「アメリカというのは、ユダヤ系の中の7割が民主党支持。そうするとバイデン大統領にとってみれば、イスラエル寄りの姿勢をみせないといけない。ただ、パレスチナの意見も重視しないといけないという立場。ですので、バイデンさんは昔ながらの政治家、ネタニヤフさんとの個人的関係を使いながら“舞台裏”でこの状況を収めていくように動いた」 

実際、5月に国連での対応を非難された際、ホワイトハウスの報道官も…

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記者)「今すぐ停戦を求めない意味はどこにあるのですか?」
ホワイトハウス サキ報道官「イスラエルや他の国々との戦略的な関係を考慮して”舞台裏”でこうした交渉を行うことが最も戦略的なアプローチだ」

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そしてバイデン大統領はこの11日間の戦闘中に6回に渡り、ネタニヤフ首相に電話。停戦が決まると早速、電話でその判断を讃えたといいます。

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しかし、今回のこの紛争で、イスラエル側では12人が死亡。一方、パレスチナ側は、子ども66人を含む248人が死亡、停戦後もがれきの下から遺体が発見されているのです…。人々に深い爪痕を残した今回の停戦合意。果たしてこうした憎しみの連鎖は止まるのでしょうか―

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