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2020年12月13日「風をよむ ~コロナ禍の食料危機~」

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空を覆うバッタの大群…。アフリカから、中東、アジアにまで大量発生したサバクトビバッタが、農作物を食い尽くし、深刻な食料危機をもたらしています。

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ケニアで農場を営む男性「今は何も収穫できない。バッタがすべて食べてしまった。豆やコーンなど全部食べ尽くされてしまった」

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また東アフリカのエチオピアでは、先月から続く内戦によって、4万人以上の難民が隣国スーダンに逃れ、食料配給を待つ長蛇の列ができています。

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世界各地で起きている深刻な食料危機。国連は7月、世界人口の8.9%にあたる、およそ6億9千万人が飢餓状態にあるとしました。

こうした中、10日木曜、世界各国で行っている食糧支援活動が認められ、WFP=世界食糧計画に、今年のノーベル平和賞が贈られました。

WFP・ビーズリー事務局長「進歩した科学技術があふれる豊かな現代社会に生きていると、飢餓を経験することなど想像できないかもしれません。しかし今、世界は危機のまっただ中にいるのです」

この食料問題をより深刻化させているのが、新型コロナの感染拡大です。

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アフリカ・ケニアでは新型コロナの影響で、経済活動が滞り、生計が困難になった人々が、配給されたビスケットを奪い合う事態に。

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先進国アメリカでさえ、8人に1人の成人が、十分な食料がない経験をしたと回答しています。

配給を受け取りに来た男性「食料が必要なんだ。息子夫婦もコロナの影響で解雇されて」

こうした状況を、WFP日本事務所の焼家(やきや)代表は…

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焼家直絵代表「世界中で急性の食糧不安に陥った人は以前より8割以上増えて、2億7000万人となります。世界は“飢餓パンデミック”の瀬戸際にある」

実際、国際NGOの推計によると、コロナに関連した飢餓の死者数は、この年末に1日あたり1万2千人に達する恐れがあるといいます。

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こうした深刻な食料危機をもたらしたのは、気候変動や、地域紛争や内戦、コロナの感染拡大だけではありません。

例えば毎年、世界の穀物生産量は、およそ26億トン。在庫もあるため、この穀物を世界人口に分配すると、すべての人が十分に食べられるだけの食料は生産されているといいます。

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では、なぜ食料危機は起きるのか。そこには、さらに根深い問題があったのです。

世界各地で頻発する食料を巡るデモ。背景にあるのは食糧価格の高騰です。

「グローバル経済」の進展によって、時に世界中で取引される穀物などの食糧は、投機の対象として価格が高騰することもあり、貧しい人々を中心に食糧不足が起きています。

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先月下旬から、インドでは、数千人の農家が大規模デモを実施し、警察と激しく衝突。

原因は農産物の流通網の大規模化などを目指して成立した農業新法。農家はこの法律は大企業を優遇し、自分たちの生活を破壊するものだと強く反発したのです。

デモに参加するインドの農家「政府は企業の奴隷になっている。私たちのことを奴隷にしようとしている」 

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グローバル化によって、いまや世界中で取引される食料。日本の食料自給率は38%、輸入された食料が、私たちの食生活を支えています。その一方で、起きているのが…

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まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」の問題です。現在、その量は、日本では年間およそ612万トン。 

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国民1人当たりに換算すると、年間でおよそ48キロ。これは飢餓に苦しむ人々に向けたWFPの食料援助量、1人当たり43キロを上回るのです。

紛争や貧困、気候変動やグローバリズムといった様々な問題が絡み合い、深刻化する食料問題。

コロナの感染が広がる中でも、富が生み出され、ますます偏りが見られる世界の現状について、ノーベル平和賞を受けたWFPの事務局長は、こう語りました。

WFP・ビーズリー事務局長「コロナ禍でも、90日で2兆2千億ドルもの富が生み出されました。そこから50億ドル出すだけで、3000万人が助けられるのです」



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