1125_風_20

2018/11/25 風をよむ「ゴーン容疑者とグローバル化」


(街の声)「えっ、ほんとに?すごいショック」「全く。ゴーンさん、想像もしてなかった」「すごいやり手で、日産を立て直した社長だと思ってたんですけど…」

19日、日本中が驚きを持って迎えたカルロス・ゴーン容疑者逮捕。これまで彼の存在は、日本企業の「グローバル化」の象徴でした。

「79.5%」― これは、去年行われた新入社員に対する意識調査で、「日本企業はグローバル化を進めるべきだと思う」と答えた人の割合、また「外国人が経営トップであるという状況が生じた場合、抵抗を感じますか?」という問いには、半数を超える人が抵抗を感じないと答えたのです。その一方で、とまどいの声も聞かれます。

(街の声)「(外国人トップに)ついていくのに、ちょっと時間がかかるでしょうね…」「公用語が英語だって会社いっぱいあるから。私は英語ができないから早く生まれて良かった」

国境を越えて、モノやカネ、情報が自在に行き来する「グローバル化」。そうした流れの中で、1999年、フランスから日本にやってきたのがゴーン容疑者でした。

ゴーンCOO(当時)「信じて下さい。他に選択肢はありません」

経営不振にあえぐ日産の再建に辣腕を振るい、“コストカッター”と呼ばれるなど、大胆で効率的な手法で、業績をV字回復させたのです。

工場視察するゴーン氏「使ってない機械が多いじゃないか、コストは?生産性は?」

これまで、日本の企業経営の特徴ともされたのが「終身雇用」や「年功序列」。日本が経済成長を続けていた頃は、こうした日本的経営が成功の一因とみなされた時期もありました。

しかし、バブル崩壊後、経済の低迷が続く中、日本経済は次第に「グローバル化」の波にのみ込まれていきます。

とりわけ小泉政権以降、規制緩和が進む中、日本企業は厳しい競争にさらされ、派遣労働者などの非正規雇用も増加。かつての終身雇用制度や年功序列制が揺らいでいったのです。

竹田茂夫・法政大学経済学部教授「日本的経営の理念である終身雇用とか年功序列とか、“暗黙の社会契約”みたいなものがあったはずなんですが、平成大不況、バブル崩壊で成り立たなくなって、アメリカ流のグローバルスタンダードを取り入れようということになった。これからは市場原理に基づいて労働力を扱うと。企業の経営者にとって、従業員がまず重要なのではなくて、企業の存在目的はあくまでも株主のためにあるんだと。そういう機運が日本企業に広がった」

90年代以降、日本企業が否応なくさらされた「グローバル化」の波。その中で、日産同様、企業トップに外国人が就くケースも増えました。

ストリンガー・ソニー会長「ゴーンさんの日産自動車が口火を切ったのかもしれません。あの前例が 日本をさらにグローバルにしたと思います」

さらに、日本企業も様々なグローバル化への取り組みを行います。「外国人社員の採用」や「社内公用語の英語化」などです。

グローバル化がもたらす恩恵については、ゴーン容疑者自身も著書の中でこう語っています。「グローバル化には犠牲も伴う。それでもグローバル化は人の限界を取り除き、新たな可能性に気づかせてくれる」

しかしその一方で、グローバル化には大きな負の側面もありました。それは…

ゴーン社長(当時)「(私の報酬は)日本の基準だと例外だと思うかもしれないが、グローバルな基準で見ればなんの不思議もない」

ゴーン容疑者を巡って批判の的となったのがその高額な報酬、ルノー本社があるフランスでも批判の声が今回上がりました。

ルノー社員「高い!他の社員との差が大きすぎる」

こうした高額報酬は、グローバル化が生み出す“格差”といった、負の側面であるとの指摘があります。格差拡大に警鐘を鳴らすフランスの経済学者トマ・ピケティ氏も、ツイッターに「富裕層優遇の姿勢と上限なき報酬の結果だ」と高額な報酬を批判しています。

現在、日本の上場企業3733社のうち、社長が外国人の会社は31社とそう多くありません。しかし、経済のグローバル化が進む中、そこに潜む負の側面に、専門家は警鐘を鳴らします。

竹田茂夫・法政大学経済学部教授「我々は市場経済の中にどっぷり浸かっていて、これを否定したら明日から生活できなくなっちゃう。株式会社という組織が何のためにあるのか。株主のためでもあると同時に従業員のためにもあるわけですよ。グローバル化は大きな問題を抱えている。強引な人員削減と下請けの切り捨て、非正規雇用、労働条件に関しても格差が開きすぎている。グローバル化というのはまさに、その矛盾とどう付き合うかということ」

日本社会は、今後、「グローバル化」と、どう向き合っていけばいいのでしょうか…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?