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2021年12月19日放送「風をよむ専制政治とジャーナリズム」

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数々の暴言や、強権的姿勢で物議をかもしてきたフィリピンのドゥテルテ大統領。
ドゥテルテ大統領(今年6月)「ワクチン接種が嫌なら逮捕させるぞ!その上で尻に注射してやる!」

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このドゥテルテ大統領の専制的で人権軽視の姿勢を鋭く批判し、報道への圧力と戦ってきたジャーナリストがいます。ネットメディア「ラップラー」の代表、マリア・レッサ氏。彼女は、民主主義の前提である表現の自由を守ることに貢献したとして、今年のノーベル平和賞を受賞したのです。

マリア・レッサ氏「2年足らずの間にフィリピン政府は私に10件もの逮捕状を出しました。全ての罪状が認められると禁固100年になるほどでした」

報道への圧力と戦うジャーナリストを讃えた今年のノーベル平和賞。もう一人の受賞者は、ロシアの独立系メデイア「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長、ドミトリー・ムラトフ氏でした。

ドミトリー・ムラトフ氏「過去を美化しようとする権力とは反対に、ジャーナリストはより良い未来を目指さなくてはいけない」

授賞式の場でムラトフ氏は、政府による弾圧が強まる中、殺害された同僚の記者らへの黙祷を呼びかけました…。

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ここは「ノーバヤ・ガゼータ」本社。窓を覆う垂れ幕に描かれたのはアンナ・ポリトコフスカヤ記者です。

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彼女は2006年、チェチェン紛争におけるプーチン政権の人権侵害を追及する最中、自宅前で射殺されました。「ノーバヤ・ガゼータ」では、彼女を含め、これまでに6人の記者が殺害されています。

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さらに、おととしには、ロシアの高官らの汚職を暴いたネットメディア「メドゥーザ」の記者が麻薬販売容疑で拘束。その後、証拠不十分で解放されるなど、政府によるメディアへの弾圧は続いています。

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そして今、プーチン政権は100を超える独立系メディアなどを、外国のスパイを意味する「外国の代理人」に指定し、圧力をかけているのです。

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そうした独立系メディアの一つを取材してみると…

モスクワ・大野記者(11月)「モスクワ市内の工場跡地を改装した建物の一室に独立系メディア『ドシチ』が入っています。広いスペースにおよそ170人のスタッフが働いているということです」

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反体制派指導者ナワリヌイ氏をめぐる動向など、政権に都合の悪い情報も扱ってきた独立系のテレビ局「ドシチ」。今年8月、「外国の代理人」に指定されました。政府の不正などを指摘すると、政府側から貼られる「外国の代理人」というレッテル…

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『ドシチ』ジャドコ編集長「これも、これも、これも・・・」(※ツイッターの表記を指さし)

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彼らのツイッターには、「外国の代理人」であるとの表示が義務づけられています。また彼らが放送する番組でも・・・

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表示を怠ると巨額の罰金が科せられます。一方で、独立系メディアの中には、政府からにらまれたくないスポンサーが撤退。閉鎖に追い込まれたところもあるといいます。

『ドシチ』ジャドコ編集長「独立系メディアはソ連崩壊後の30年で、最も困難な状況にあります。メディアの破壊が進められています」

しかし、メディアの危機はこれだけではありません。今、別の面からも、大きな危機に見舞われているのです。今年のノーベル平和賞を受賞したジャーナリスト、マリア・レッサ氏は、授賞式の演説でこう語りました。

マリア・レッサ氏 「オンライン上の暴力は現実世界の暴力です。SNS上で起きたことは、SNSの中にとどまらないのですー」

ネット上では、自分の好みに合った情報ばかりが表示され自分と相容れない意見に触れる機会が減ることなどから、レッサ氏は社会の分断が深まってしまう、と警鐘を鳴らしたのです。

レッサ氏「(SNS上では)怒りやヘイトに満ちたウソが、事実よりも素早く、拡散することが研究で示されている」

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そして、レッサ氏は自身の記事の中で、こうした状況が、ドゥテルテ大統領やトランプ前大統領のような専制的な政治家をトップに押し上げたとも指摘しています。その上で、レッサ氏が演説で訴えたことは…

マリア・レッサ氏 「真実なくして信頼を得ることはできません。信頼なくして、現実や民主主義を分かち合うことなどできません―」

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