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2021年8月15日放送風をよむ「戦後76年 8月・・・」

菅首相(6日)「一部を読み飛ばしてしまいまして、この場をお借りしてお詫びを申し上げる次第でございます」

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310万人もの命が失われた戦争から76年…8月6日、広島では、平和記念式典の挨拶で、菅総理が「唯一の戦争被爆国」など、原稿の一部を読み飛ばし、批判を受けました。そして9日、長崎では…

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長崎市・田上市長「核兵器のない平和は今なお、実現してはいません」

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そして広島、長崎両市長とも、今年1月発効した核兵器禁止条約の批准を政府に求めました。しかし…

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菅首相(9日)「同条約は米国を含む核兵器国、また多くの非核兵器国からも支持を得られていないのが現状だと思います」「同条約に署名する考えはありません」

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唯一の被爆国でありながら、条約の批准に後ろむきな日本。こうした姿勢の背景には、核保有国であるアメリカの核の傘のもと、戦後の「平和」を享受してきた現実があります。

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確かに戦後76年、直接戦争と関わることはなかった日本。しかし、社会の空気は、年月と共に少しずつ変わってきました。北朝鮮が核開発を進め、朝鮮半島が緊迫の度合いを増すにつれて、戦争は日本にとって他人事でなくなります。

内閣府が行った世論調査で、「日本が戦争に巻き込まれる危険性」について、「危険がある」と答えた割合は、2009年に69.2%でしたが、2018年には85.5%にまで上昇します。また最近は北朝鮮に加え、中国を巡り東アジアの緊張が高まっています。

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日本は、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」実現のため、アメリカ、インドなどと連携。自衛隊は、アメリカ、フランス、オーストラリアと共同訓練など防衛協力を進めています。

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また先月下旬から2日までイギリスの空母打撃群が南シナ海に入ったほか、日米との合同訓練のためドイツの艦船も今後通過予定です。

片や中国は、6日からロシアとの合同演習を実施。さらに南シナ海を想定したとみられる上陸演習の映像を公開。戦争の現実感が次第に増しつつあるかのような状況です。

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今年1月、「昭和史」や「日本のいちばん長い日」などの著作で知られる作家・半藤一利さんが亡くなりました。半藤さんが、戦争を語り継いだ言葉は、戦後76年の夏、今なお大きな意味を持ちます。

半藤一利さん(2007年)「中学2年生の時に、3月10日の東京大空襲を受けまして、目の前で子どもを抱いた女の人が火をパァっとかぶった瞬間にパァっと一気に燃え上がるという姿を見ましたりね…」

しかし、戦争体験者の減少によって、戦争の現実が忘れられることに危機感を覚えていた半藤さんは、ここ最近の日本人の変化にも、不安を覚えていました。

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半藤一利さん(2007年)「最近の日本人の焦燥感と言いますかね、何かイライラ、イライラしている感じ。あるいは声高に再軍備だとか核兵器を持たなきゃならないと言い出す方々がたくさんいる…」

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さらに、その半藤さんが強く懸念したのが…
2014年7月、政府は憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行います。半藤さんはそれを大きな「歴史の転換点」と受け止めました。

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半藤さん(2014年)「30年後、50年後『ものすごい転換点だったね、あの時が』とのちの人が言うんじゃないかというくらい、重大な日だと思っています」

また特定秘密保護法の制定にも憂慮の念を示すなど、日本社会の変化に懸念を抱いていた半藤さん。

半藤さん(2007年)「昭和6年から昭和10年くらいの間の日本と、今の日本の動き というのがよく似ている。日本人が全体的に何となしに、熱狂的というか、 強い言葉が好きになってくるとか、そっくりなんですよ…」

こうした熱狂が、かつて戦争に結びつくような全体主義の原点になったという半藤さん。社会が混乱する中、政治により強い姿勢を望む状況は、しばしば見られます。

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例えば現在、新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない中、自民党内からは、憲法改正で私権を制限できる“緊急事態条項”を創設しようという意見も出ています。

一方、半藤さんは、こうした時こそ、より冷静に事実を見つめる必要性を訴えていました。

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半藤さん(2005年)「熱狂する時代を自分たちで作っちゃいかん。常に冷静にみる、誠実であれということだと思います」

そして、あの戦争を振り返り、改めて警鐘を鳴らしたのです。

半藤さん(2007年)「日本人が全部が全部といっていいくらい一つの方向に向かって走り出して行ってしまった。また同じようなことになるんじゃないかと。戦争というものがいかに無残なものか、非情なものか…」

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