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2021年2月28日放送 風をよむ「官僚と政治不信」

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23年前、大蔵省職員が金融機関に検査日程をもらした見返りに、風俗店などで接待を受けていた事が発覚。逮捕者まで出る事態に。

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三塚博蔵相(当時)「極めて残念至極、遺憾千万なことです」 

責任を取る形で、当時の三塚(みつづか)蔵相らが相次いで辞任。職員112人が処分される、歴史的なスキャンダルとなったのです。

1998年街録
「あんなすっとぼけた話ないよ。この不景気に、許せないよ」
「彼らは公職ですからね、コーヒー1杯でも接待じゃないですかね」
「自分たちは接待されて当たり前だと思ってるんじゃない」

  
国民の怒りは、「政治と官僚」のあり方を問う声に繋がっていきます。

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戦後日本の、めざましい発展をもたらした高度経済成長。その原動力となったのが、「官僚主導」による行政運営の仕組みでした。

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各省庁がそれぞれ、強い許認可権を握り、官僚が指導的な立場に立って、産業界をリードしたのです。

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その仕組みは、高度成長という果実を生み出す一方で、族議員や業者との癒着など、腐敗の温床となり、行政に、深刻な歪みをもたらしてきました。
  
そうした流れの中、大蔵省という行政の中枢で起きたこの事件は、戦後の歩みを、見直す呼び水となり、議論が沸騰。

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事件から2年後、2000年に施行されたのが、「国家公務員倫理法」と、それに基づく「国家公務員倫理規程」でした。

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国家公務員は「職務に関わる利害関係者」から飲食の接待を受けたり、一緒にゴルフをしたりする事などを禁止。違反すると懲戒処分の対象となりました。

これにより、透明で公正な行政が取り戻されるはずでしたが、その7年後…、

記者「100人近い東京地検特捜部の係官が、いま防衛省へと入っていきます」

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防衛事務次官が、防衛省の装備発注を巡り、ゴルフ接待や現金など、総額約1250万円の賄賂を受けとっていたことが発覚。収賄容疑で逮捕されたのです。

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断ち切れない癒着に、国民の官僚への信頼はさらに損なわれました。そんな中「官僚」のあり方を大きく変えるうねりが起きます。

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選挙による審判を受けない官僚が政策を主導することに批判が集中。首相のリーダーシップや官邸機能の強化を求める声が高まったのです。

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こうした世論を背景に、行政改革が進められ、安倍政権下の2014年には、およそ 600 人の省庁幹部の人事を、一元管理する、「内閣人事局」が発足しました。 

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これにより、従来、担当の大臣が内定し、それを官邸が追認してきた幹部人事に、政権の意向が強く反映されるようになったのです。

しかし、この人事権を武器とする官邸主導は強い副作用を生みました。官僚たちは萎縮し、官邸の顔色をうかがう姿勢が目立ち始めたのです。その姿が、浮かび上がったのが…

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佐川宣寿理財局長(当時)「交渉記録というのはございませんでした」
「廃棄しているということだと思いますので、記録が残ってございません」
柳瀬唯夫経産審議官(当時)
「お会いした記憶はございません」

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安倍政権下で明るみに出た、森友・加計問題。その間のやりとりで見られた、官僚たちの姿勢は、時の政権に対する過度な「忖度」ととらえられ、国民を大きく失望させました。

通産官僚だった、東京大学の内山教授は、

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東京大学大学院総合文化研究科・内山融教授(現代日本政治) 「人事権を官邸が握ると官僚側としては、当然その官邸の意向というものを考えながら忖度しながらやってかないといけないという構造が出ちゃう。大臣とか、総理の個人的な利益、一部の特殊利益に合うような政策を実施して、官僚が中立性と専門性を放棄してしまう。これは最大の問題」

官僚たちの中に、こうした「忖度」に象徴される姿勢の変化が起きる中、今また、繰り返された、国家公務員と事業者の接待問題…。街の声は…、

「今こそ自粛しなきゃいけないときに、国民に対して示しが付かない」
「接待受けちゃいけないと決まりがあるのに、何で平気でああいうことができるのか」
「モラルの低下はずっと続いている、国民としては非常に腹立たしい」

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今年度、国家公務員を目指す受験申込者数は過去最少を記録。4年連続しての減少となっています。

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東京大学大学院総合文化研究科・内山融教授(現代日本政治)
「官僚は、結局政治家の道具になってしまっている、忖度して、行動しているだけじゃないかと。官僚に対する信頼っていうのは、今急速になくなっている。本来、官僚、国家公務員というのは国民への奉仕者な訳ですね。(官僚を)志望する人が減っているのは、日本の未来にとって、危ういことなんじゃないかと思います」


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