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2019/3/24 風をよむ「強まる白人至上主義」

●過激な差別思想の広がり

●ニュージーランド首相の対応とは

●問われる寛容さ

19日、ニュージーランドで起きた銃乱射事件の映像を流しながら、トルコのエルドアン大統領は、選挙集会に集まった聴衆を前にこう語りました。

エルドアン大統領「もしニュージーランドがこの攻撃者に責任をとらせることがないなら、我々が何らかの形で責任をとらせる。なぜなら、我々はイスラム教徒、彼らはキリスト教徒だからだ」 
エルドアン大統領は、こうしたイスラム教徒への攻撃が続くならば、自分たちが報復するともとれる激しい非難を口にし、波紋を広げました。

今回の事件を起こした容疑者は、ネット上に残した声明の中で、イスラム教徒などの移民を繰り返し「侵略者」と非難。犯行の理由をこう述べていました。

タラント容疑者「侵略者たちに、『白人』がいる限り、我々の土地は決して征服できないと見せつけるためだ」

犯行で改めて指摘されたのが、容疑者の「白人至上主義」との密接な関係です。

容疑者は、2011年、ノルウェーで77人が亡くなる連続テロを実行した 白人至上主義者らに、大きな刺激を受けたことを声明文の中で明らかにしています。

そもそも「白人至上主義」とは、1850年代、フランスの作家・ジョゼフ・ゴビノーが提唱したとされ、白人、とりわけキリスト教徒の白人が他の人種より優れ、支配的立場にあるというものです。その影響は大きく、ヨーロッパでは、のちのナチスによるユダヤ人への迫害をもたらし、アメリカでは、黒人差別を助長する思想となったのです。

そうした白人至上主義の代表的な組織が、1860年代、南北戦争後のアメリカで、結成された「クー・クラックス・クラン=KKK」です。
 
KKKは奴隷制廃止に伴う、白人の地位低下への不満を背景に、黒人への過激な暴力行為を繰り返します。その過激さが社会的な非難を浴び、一旦は解散。
ところが、その後、多くの移民がアメリカに定住すると、「反移民」を掲げ再結成され、1920年代、会員数は900万人に達したとする説もあります。


そして1960年代以降、人種間の平等を掲げる公民権運動に敵対し、再び過激な傾向を見せるようになったのです。

「神よ。我らに、まことの白人を与えたまえ!」

おととい公開された、映画「ブラック・クランズマン」は当時のアメリカの白人至上主義団体の様子を描いています。

「諸君のような白人男性と過ごせて光栄だ。アメリカ・ファースト!」

差別の背後に見えるゆがんだ憎悪。スパイク・リー監督はこうした「白人至上主義」は、「現代につながる問題」だと訴えます。

スパイク・リー監督「この問題は、いま世界中で起こっている。我々は、目を覚まさなければならない。沈黙してはならない」

近年、急速に勢いを増しているといわれる白人至上主義。一体なぜなのでしょうか?

「白人はあらゆる人種より優れている」

近年、アメリカを中心に白人至上主義団体の活動が勢いを増しています。なぜなのでしょうか?

ニュージーランドの事件に関連し「白人至上主義」の危険性を問われたトランプ大統領は…

記者「白人至上主義が世界的な脅威として台頭しているか?」トランプ「特にそう思わない。深刻な問題を抱えているのは一部の人間だ。ニュージーランドで起こったこともそんなケースだ」

発言が時に差別的だと批判されてきたトランプ大統領。今回も、白人至上主義を擁護するともとれる発言を口にしたのです。

そうした大統領の姿勢を反映してか、2017年の就任以降、アメリカにおけるヘイトクライム・憎悪犯罪は、およそ2割増加。白人至上主義を掲げる団体も、5割増加しています。

五野井郁夫教授(高千穂大学・国際政治学)「9.11のテロ、そしてイラク対テロ戦争以降、イスラム教徒たちが白人至上主義者たちにとっての差別対象になっていく。そうしたイスラム教徒に対する嫌悪というものを利用して、トランプ大統領が大統領選の時に自分の支持を獲得していった。人種差別的な言葉を平気でツイッターを通じ流していく。その発言をSNSを通じて知り白人至上主義者のみならず世界中で、他者に対する排他的な感情とか原理主義、そういったものがより過激なものへと変貌を遂げつつある」

今回のテロ事件について、ニュージーランドのアーダン首相は容疑者の動機にネットを通じた売名行為があると非難しました。

アーダン首相「男がテロ行為から得ようとしたことの一つが『名を売ること』です。だからこそ私はあの男の名前を決して呼びません。 あの男はテロリストで、犯罪者で、過激派ですが、名無しです。ニュージーランドはあの男に何も与えません。名前さえ与えたりしません」

白人至上主義に限らず、世界に広がる異なる人種、民族、宗教に対する過激な差別思想。私たちの寛容さが、改めて問われています。


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