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新型コロナワクチン接種 受ける?受けない?

新型コロナウイルスのワクチン接種が、各地で加速しています。菅首相は、収束には「ワクチン接種こそが、“切り札”」としていて、政府は、さらなる加速化を図るため職場や大学でも接種できる「職域接種」を打ち出しました。ワクチンは、「発症予防」「重症化予防」の効果が実証されていて、希望する人が早く安全に接種できることは重要です。ただ、忘れてはならないのは、事情により「接種を希望しない人もいる」ということ。ワクチン接種を受ける?受けない?受けるべき?受けなくてもいい?この点を考えていきたいと思います。

■“3つ目の山” 若者ほど接種に消極的・・・そのワケは?

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緊急事態宣言下でも人の流れが絶えない渋谷駅周辺

ワクチン接種の推進を担当する河野大臣は、5月末に、ワクチン接種を加速させるにあたって、『山は3つある』と話しました。1つ目は、「ワクチンの供給」、2つ目は、“今、登っているところ”という「打ち手の確保」、そして、3つ目の山として「若い世代にワクチン接種をしてもらうための勧奨、啓蒙活動をしなければならない」としました。若年層ほどワクチン接種に消極的という調査結果が出ているのです。

ワクチン接種始まったら③トリミング

(TBSテレビ「新・情報7days ニュースキャスター」2021年6月5日放送より)

これは、16~64歳の男女、約1万人を対象に行ったアンケート結果です(Gunosyリサーチ 6月4~5日実施)。ワクチン接種が始まったら、「受ける」と答えたのは、50~60代で63%なのに対し、10~20代では42%、「受けない」と答えたのは、50~60代が8%なのに対して、10~20代は21%と、年代が若くなるほど、「受ける」人の割合は少なく、「受けない」と考えている人が多くなります

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若い世代の「受ける」理由としては:

・感染しても重症化させないようにするため(22歳)
・接種するメリットが、副作用などのデメリットを上回っていると思うので(19歳)
・受けないと偏見を受けそう(28歳)
・修学旅行に行きたい(16歳)
・祖父、祖母に安心して会いたい(29歳)
・出来るだけ早く多くの人が受けることが重要だと思うから(22歳)

などがあげられ、「受けない」理由としては:

・若いので重症化リスクは少ないのに、ワクチンの副反応で大変になるのが嫌(18歳)
・注射が苦手なのとワクチンが信用出来ないから。過去に副作用で問題が起きたワクチンがあった(20歳)
・副反応が心配、仕事を休んでまで受けられない(28歳)
・副作用や長期的な影響が心配(24歳)
・アレルギー体質なので(21歳)

などとなっています。
年代を問わず、「副反応」を受けない理由とする回答が大半で、「とりあえず様子見」の理由にも、「副反応により就活や仕事、家事に影響するのが心配」など、副反応を心配・不安視するものが多くありました。
ただ、「若いし重症化しないから受けない」とする回答に関して、感染症が専門の国際医療福祉大学・松本哲哉教授は、「ワクチン接種を強制することはあってはいけないと思うが、若い世代であっても、新型コロナに感染するとけっこう辛い思いをする方が多くいる。やはりワクチンは打ったほうが本当はいいと思う」と話しています。

■海外でも接種率は伸び悩み・・・

海外でのワクチン接種率を見てみます。

接種率改3note用改

Our World in Dataより(6月12日更新)

上のグラフは、新型コロナワクチンの接種が先行しているイスラエルと、日本を含むG7サミット参加国について、ワクチンを少なくとも1回接種した人を人口比で表したものです。カナダがトップとなり64.1%、イスラエル(オレンジ色)は63.3%、イギリス(緑色)は60.5%、アメリカ(青緑色)は51.7%、そして日本は12.6%となっています。イスラエルは3月下旬以降ほぼ横ばいに、イギリスやアメリカも5月以降、接種率の増加が緩やかになっているのがわかります。
そこでワクチン接種を促進しようと、特にアメリカでは、あの手この手で奨励策がとられています。

■接種したらハンバーガーとポテトがもらえる!

デブラシオ市長

会見で「ハンバーガーとポテト」をアピールするデブラシオNY市長
(5月13日 NYC Mayor's Office より )

ニューヨーク市のデブラシオ市長は、先月、ワクチン接種を行う市の移動バスで接種すると、無料のハンバーガー券を受け取ることができると発表。また接種済みの証明を提示すれば、ハンバーガー類の購入で、フライドポテトを無料で提供するとしました(期間限定)。

■「出会い系」で有利に!? 1億円が当たるくじも!

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アメリカでは、オンラインの大手デートアプリも、ワクチン接種を終えた人を優遇・特典を提供するなど、接種加速のための協力をしています。具体的には、「ワクチン接種の有無」をプロフィールの項目に追加し、接種済みの登録者からパートナーを探すことができるようにしたり、検索する際に、接種済みの登録者が目立つように表示したりしています。
「ワクチン接種済み・接種予定の登録者が、そうでない登録者に比べて、出会いが14%増える」という調査結果もあるそうです。
ほかにも、接種を促進させようと独自の特典を用意する州が相次いでいて、100万ドル(約1億1000万円)が当たるくじや、大学の奨学金、猟用のライフル銃などの景品が当たるくじを導入する州もあります。

日本でも今後、接種を促進させる策を打ち出す自治体などが出てくるかもしれませんね。「職域接種(職場等での接種)」に関しては、「接種手当」を出す企業もあるようです。SNS上では、こんなつぶやきがありました。

・「うちの会社でも職場でのワクチン接種の連絡が来た。接種したら手当出ることになった」
・「職場からコロナワクチン接種手当のお知らせが来たぞ。打ってもらおうか」


■「職場接種」の準備が本格化、でも”同調圧力”はダメ!

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11日午前の会見で、河野大臣は、職域接種について「 1583会場の申請があった。多くの企業が職域接種に手をあげてくださっていること、考慮していただいていることに感謝申し上げたい」と述べました。そして、国内の企業としては初めて、全日空が13日から、国際線のパイロットや客室乗務員へのワクチン接種を始めました。大企業を中心に職場での接種の準備が本格化するなか、SNS上では、こんな声が・・・

「コロナワクチン職域接種、希望せず、でしたが、仕事辞めるか、接種するの2択しかなかったです。絶望。」
「職場の人間から寄ってたかってワクチンはやく打てと言われるんだけど、同調圧力まじやめてくれ」

今後、接種の機会が増えていきますが、予防接種法上、新型コロナワクチンの接種は「努力義務」とされていて、接種を受けない自由があります。アレルギーがあるなど様々な事情でワクチン接種を希望しない人に対して、差別的な扱いをしたり不利益が生じることがないように配慮が必要になります。
厚生労働省は、ホームページで「接種を受ける際の同意」について、以下のように説明しています。

「新型コロナワクチンの接種は、国民の皆さまに受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。しっかり情報提供を行ったうえで、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます」
「職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします」

そして、職場でのいじめや嫌がらせなどに関する相談窓口
総合労働相談コーナー と
人権相談に関する窓口
★法務省の人権相談ページ を案内しています。

■「ワクチンを打つ意味」を考える

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遺伝子解析が専門で新型コロナウイルスの研究もしている、ゲノムクリニック代表の曽根原弘樹医師は、ワクチンを接種することによる現時点での効果について以下のようにまとめています。

「発症予防」(接種した人が感染しても発症しない)
臨床試験で証明されている
「重症化予防」(接種した人が感染し発症しても重症化しない)
臨床試験で証明されている

「感染予防」(接種した人が感染しない)
⇒非発症感染者(無症状の感染者)が多く存在するCOVID19では実証が困難
「集団免疫効果」(接種していない人にも予防効果がある)
大規模接種後でないと評価できない

つまり、感染しても症状が出づらくなる、症状がひどくならない、という効果は証明されていますが、感染そのものを防ぐかは実証されていないのです。
また、感染症が専門の松本哲哉教授は、感染リスクについて以下のようにコメントしてます:

「自身がワクチンを打って、ある程度免疫を獲得したとしても、絶対に感染しないとまで言えるわけではない。軽症で終わるか無症状のままの場合も多い。いくらワクチンを打った人でも結局ほかの人にウイルスをうつしてしまうリスクもある

ワクチン接種を受けるか受けないかは、本人の判断に委ねられています。その際に、きちんと自らが納得のいく決定ができるように、正しい情報を得ることが大切です。そして、それぞれのメリット・デメリット、受けるリスク・受けないリスクをじっくり検証し、冷静に判断していきましょう。