ル・カレに憧れるサラリーマン作家の虚脱
これはマズイことになった。小説の執筆が終わってしまった。一年間、早朝と深夜、休日に、自宅で没頭していた、いわば「生活の一部」を突如、奪われてしまったのだ。私はゴルフもやらないし、麻雀もめっぽう弱い。休日はジム行って、体を動かすくらいしか趣味はない。家族がガヤガヤとうるさい居間の片隅で、文字を積み上げて物語を作る作業は至福の時だった。
また書けばいいじゃないか、と仲間は言う。ところが、小説出版となると、自分ひとりで事を進めることはできない。構想を練り、出版社に持ち込み、編集