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流産ともいえない流産になった時の話⑥

これは誰に伝えるでもない、ただの覚え書きだ。
私が勝手に喜んで、勝手に落ち込んだ2週間を忘れたくないがために書く文章だ。
人によってはこれを読むことで落ち込んだり気分が悪くなったりするかもしれないので、気をつけてほしい。自己防衛は大事。

12月8日 病院

日も暮れてきて、たぶん寒い夜だった。
だけど徒歩20分の距離を10分少しで歩いた私は汗をかいていた。
ただ、下腹部の痛みと出血の感覚だけがいつまでもリアルで、普通の生理がきたみたいだなと思っていた。

病院に着いてからは真っ暗な外来を抜けて、2階の看護室に向かう。
状況を改めて説明して、問診票を書いて、トイレに行って、やっぱり出続けている鮮血に諦念を抱きつつ、非常勤の当直の医師を待った。

その間に、今朝生まれたばかりだという赤ちゃんを見に来た家族と会った。
「ウチの子が一番可愛い」というおばあちゃんに、おめでとうございますと言う私は、きちんと笑えていただろうか。

たった5分が、10分にも30分にも感じた。

医師が来て、今日何度目だと思いながら状況を説明して、診察台に乗った。
それからは何が起こっているか分からなかったけど、たぶん経膣エコーをしていたのだと思う。

「胎嚢が見えないなあ」
医師が小さく、でも確実にそう呟いたのが聞こえた。

診察台を降りたら、先生が3つの可能性を提示してくれた。
1つ目は、排卵日がずれて妊娠している可能性。
2つ目は、一度は妊娠したけど流産した可能性。
3つ目は、異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性。
ただし、異所性妊娠の場合は立っていられないほどの痛みがあるから、こんなに元気じゃないよと言われた。

「妊娠していても、流産していても、出血は僕らにはどうにもできないので、とにかく待ってくださいとしか言いようがないです。明日の予約をとっているなら、明日改めて来てもらって、そこで検査をしましょう。そうしたらもう少し詳しいことが分かるから、今後が見えてくるよ」

まっすぐ目を見て、言い聞かせるように紡がれた先生の言葉は少し冷たくも聞こえたけど、この時点では本当に何とも言えなかったんだろうなと今なら思える。

帰り道、ようやく寒さを実感した私は夫に電話をして、今日の晩ごはんは家にある魚を焼こうと話をした。

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