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成長の入り口はどこか?

人は成長する過程で様々な問題を解決する必要がある。
仕事は現状と理想の差を埋めることだ。
能力も現状と理想の差を埋めることだ。
そこには意識的か、無意識かの差はあれど問題解決の側面がある。
だから成長が滞った状態にある場合、問題解決が重要だと考えていた。

ただ、問題に取り組む際に何をどこまで解決可能と考えるかという側面がある。
人の能力は生まれつきの才能によるものであり、努力はしても無駄である。
こういったマインドセットを固定知能観( fixed mindset )と呼ぶが、この状態だと、

「結局解決しようにも自分にはどうにもならない。自分は無力だ。」

となりがちである。

この固定知能観を作り上げた要因としては、努力よりも成果を褒める・罰するような接し方であったり、環境の影響で「どうあがいても変えることができない」という諦めの境地である 学習性無力感 を味わい続けたことなどにより、 自己効力感 が下がってしまったことによる部分があると思う。

固定知能観とは反対に、人は努力によって能力を伸ばすことができるという考えとして拡張知能観( growth mindset )というものがある。
ここに至るには、たまり溜まったマイナスをプラスに転じていくための成功体験の積み重ねによって自己効力感を上げていくことが必要となる。
しかし、長年積み重ねた固定知能感を覆すのは簡単ではない。自分も昔はそうだった。このあたりに関して詳しくは技術書典6に出展する「 挫折論への招待 」の自分のパートにまとめたので楽しみにしていて欲しい。

ここで、1つ見逃しがちな要素がある。
学習性無力感を味わうのは、環境による問題と自身による問題の区別がついていないからである。
また、場合によっては環境に働きかけることによって問題構造を変化させることができるという発想がないからである。
ここで、 システム思考 の登場となる。

物事は部分だけで存在しているのではなく、多くの要素の関連、因果関係、時系列の変化によって成り立っている。
眼の前で発生している問題は実は全く別のところが原因で発生しているかもしれないし、近くで発生している場合も時間差があって原因がわかりにくいかもしれない。
そういう考え方がシステム思考だ。

例えば、私が関わる界隈はシステム開発者が多いと思うので受託開発の多重請負構造を例にしてみよう。
この中にいる開発者が、構造を意識しないで日々を過ごしていたとき

・常に炎上案件で開発は失敗ばかり
・努力しても給与は上がらない
・周りには向上心のない人ばかり
・毎日残業漬けで疲れ切っている

※すべての多重請負の受託開発がこう、という話ではなく、例としてその中でも劣悪なケースを選んでいます

こんな事がある場所も多いかと思います。
このとき、自身に対して

・自分は失敗ばかりでだめだ
・同じような開発ばかりしていて能力が低くてだめだ
・給与も低くて価値が低いんだ
・努力しても無駄なのでやめよう

というふうに考えたとしたら、それは全体が見えていない事によって起こる弊害なのだと思います。
私も過去七次請けでその世界にいたので、そのような状態に陥りがちなのはわかります。

実際に業界構造はこんな感じです。

多重下請け構造であえいでいるエンジニアが知っておきたいIT業界の仕組み

失敗しているのは本当に個人の責任でしょうか?
多くの多重請負の開発現場の失敗は開発の進め方や体制そのものによってもたらされているのではないでしょうか?
例えば、実力もわからない別々の会社の人達をチームとして集め、誰も同じ目的を持たずに、お互いを育て、助け合うことなく、ろくなコミュニケーションもなく開発する。
その体制が成功に向いているでしょうか?
所属する人々の成長に向いているでしょうか?

給与の低さは個人の能力ではなく業界構造と人月見積もりによってもたらされていることがわかります。
全く同じ仕事をしていてもより元請けに近いほうが給与があがります。

同じような開発ばかりになるのは、そういった場所にいるからであって、自身の能力を磨く場自体に問題があります。
能力を伸ばすための場にいれば能力は伸ばせることになります。

努力する人が少ないのは生産性の向上が組織の利益に直結せず、それゆえに個人の給与にも反映されないことによります。
能力が給与に反映されやすい組織もあります。そういった場に行けば解決することができます。
※能力だけの話ではないけど、ここではややこしくなるので省略します

これらは、様々な問題が起こりやすい場にいることによって生じている問題で、そこに属している個人の失敗ではありません。
全体構造を知ることができると、その切り分けができます。
そのうえで、現場への想いが強くて、それでも仲間を集めて組織構造そのものを変える行動にでるのか、外に出て好ましい環境を探すのかは人それぞれになるでしょう。

物事の影響の輪に目を向けるようになると、変化可能なものと変化困難なものをより多く把握することができます。
そうすると、解決のための選択肢が広がります。
その中で成功体験が増えますし、変化可能なものへの希望が増えていきます。

これが停滞した成長の最初に必要なことかもしれない・・・。
そんな事を思いました。
で、次の課題は

「どうやってシステム思考をやさしく身につけるか」

「本当にシステム思考を身につけるとマインドセットにポジティブな影響があるかどうかの検証」
です。

ということで、 成再会 のみなさん、問題解決の次のお題ができましたよ。

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