読書記録「amazon 世界最先端の戦略がわかる」

成毛氏の掲題書籍を読んだ。少し前 (2018年)で、amazonはその後も進化sているが、著者らしい簡潔・明快な切り口・語り口でこの帝国を分析している (著者もローマ帝国になぞらえている)。10年後 (いや10年をまたずとも) 経営戦略の教科書に載るだろう、と言っている。このような戦略を取れる会社はごく限られていると思うが。

amazonの特色は、CCC (Cash Conversion Cycle)がマイナスであることによる潤沢すぎるキャッシュフローが可能にする圧倒的な投資による「ロジスティクスの追求だ。
・amazonは何よりもキャッシュフローを重視する。マーケットプレイスにより、顧客からの売上金を先に受領しつつ出品者に後払いすることにより、CCCがマイナス約30日となっている。これにより、物量でロジスティクスに投資をし、利益よりも規模を追求する。
・amazonは「ロジスティクス企業」であるとベゾスは言っている。これが他IT企業との違いである。物量で築いた投資を元に構築したロジスティクスにより、圧倒的なスケールメリットで、amazonは日常生活に入り込み、無しでは生活できない状態になっている。
・次々とめぼしい相手を買収している (その際、相手が値を上げるまで、徹底的にターゲッティングしてつぶす安値攻勢をかける。ダイアパーズドットコム (おむつ) やザッポス (靴)の事例は興味深い)。また、リアル店舗でのホールフーズも買収している。貪欲すぎる規模の追求。本書でも、売上至上主義もここまで追求すれば戦略として妥当、と言っている。これは1980年代の日本の製造業 (エレクトロニクス) が追求してきた戦略だ。シェアを拡大しその業界で巨人になれば市場を掌握できる。売上至上主義自体は間違いではなく、どこでシェアを取るかを正しく見定め、顧客のニーズに合わせることが大事、という指摘だ。

経営は地方分権で、その意味でもローマ帝国的だ。ローマ帝国は、征服した領域に自治権を与えた。amazonも各事業に権限を与え、それで意思決定を早くしてきた。実はいろんな失敗をしてきている。中核事業になったAWSも、最初からここまで大きくなろうとしたというよりは、自前のクラウドを構築していく上で、サービスとしての活用可能性に気付いた、ということのようだ。
一方で、効率性を重視した会議運営で、プレスリリースを想定した6枚紙で会議、冒頭20分はそれを黙って読む。数字に徹底的にこだわる社風である。KPIで0.01%単位で管理する、帝国の軍隊チックである。

このように徹底的に相手をつぶすという帝国的なビジネスモデルからもわかるが、ベゾス自身も恐怖政治を敷いているようだ。有能でなければ捨てられる、有能ならとことんまで使われる、会議で時間を無駄にすると「おれの陣姿勢を無駄にするとはどういう了見だ」と怒るらしい。怖い。ブラック企業が可愛く見える軍隊チックな組織だ。

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