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挑戦者が見つけた地域活性のヒント

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さまざまな工夫から生まれた新たな名物、優れた技術、未来を変えようとする人々の想い――地域のチャレンジを応援し、新しい取り組みを伝える連載です。
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記事一覧

「糸島地域の寛容性に助けられた」 移住者らが目指す“面白いファースト”【みんなの】

人口減少や地域活性に悩む自治体が多い中、福岡県糸島市に住む人が増えている。2020年12月末には人口10万2523人を記録。2010年の合併で糸島市が誕生して以来、最多の人口となった。10年半勤めた楽天を退社し、東京から糸島へやって来た福島良治さんも移住者のひとり。糸島に移住してから約10年を過ごしてきた福島さんから、住んでみないとわからない糸島の魅力を伺った。 都心から糸島へ 移住の決め手となったもの東京に住んでいた頃は大手企業のサラリーマンだった福島さん。移住の大きなき

消滅可能性都市で古着店「遠くても足を運びたくなる店づくり」【ichiru】

鎌倉、葉山など、さわやかな海の町が名を連ねる三浦半島。最南端に位置するのが三浦市だ。神奈川県で市として唯一「消滅可能性都市」に指定されているが、中心地の三崎はかつて“まぐろバブル”といわれるほど栄えた場所。寂れたレトロな街並みと、東京から1時間半ほどというアクセスの良さから、今も観光地として人気。三崎港や商店街の付近には、週末多くの観光客が訪れている。 商店街を抜け、人通りが少なくなった坂道の途中に、土日だけ開く店がある。ジャパンメイド&レディース専門の古着屋「ichiru

「農家が守ってきた大事な畑だから」深谷市のネギ畑を走るロボットの優しさ【レグミン】

埼玉県深谷市で、農業生産者とアグリテック企業のマッチングを促進する試みが開催されている。農業課題解決を図るビジネスコンテスト「DEEP VALLEY Agritech Award(以下、アグリテックアワード)」だ。出資賞金総額は1000万円。深谷市内外から多彩な応募が集まり、農業を元気づけるアイデアが発掘されている。ネギの名産地として有名な深谷市で活躍する、とある農業ロボットもそんなイノベーションのひとつだ。この農業ロボットを開発したのは、株式会社レグミン。2020年の同アワ

徳島県には何もない?“今残すべきもの”を集めた『めぐる、』誌【あわわ】

地方の発信力が高まり、個性的なローカルメディアがここ数年で増えている。徳島の『めぐる、』もその一つ。2021年開催の「日本地域情報コンテンツ大賞」では大賞と隈健吾特別賞をW受賞し、県外からもさらなる注目を集めている。2020年の創刊から「紙で伝える」「おもてなしの舞台裏」「商いは飽きない」「直して使う」……などユニークな特集を展開してきた『めぐる、』。一般的なタウン誌としては情報量は少なく、価格も高い。発行元の「あわわ」は、徳島市で創業40年以上という出版社。いわゆる情報重視

「原体験は100人BBQ」場をつくり“暮らし”を伝える建築家【うだつ上がる】

大きな藍染の暖簾が目印の引き戸を開けると、天井には重厚な梁の下に明るい空間が広がる。雑貨、古着、本、カフェ、その先の中庭……と続く空間では、赤ちゃんからお年寄まで世代を超えた人びとが、想い想いに過ごしている。ここは“うだつの町並み”として知られる徳島県美馬市脇町に、築150年の建物を改装して2020年に誕生した「うだつ上がる」。 “みんなの複合文化市庭(いちば)”と掲げられた通り、この場所から町に新たな動きが生まれている。仕掛け人であり、徳島在住暦20年の建築家・高橋利明さん

「1日1麺」食べ続けて十数年 山田製麺のうどんが美味しい理由【山田製麺】

日本でもきっと二人といない、製麺業とライター業、二足の草鞋。それが、福岡県宗像市にある『山田製麺』を営んでいる、製麺所の二代目にしてヌードルライターでもある山田祐一郎さんだ。山田さんが「1日1麺」をモットーにヌードルライターとして歩んだ日々、夢だった自分の製麺所を持ってからのチャレンジなどを伺った。 仕事の壁を乗り越えて、ヌードルライター誕生大学時代は飲食店でアルバイトをしていた山田さん。就職で飲食業界に進み、「いつか自分で店を持ちたい」と夢を描くように。見聞を広げるために

「農業しかないと決めたから」元放送作家が描く農家の多様性【成田ふぁーむ】

セカンドキャリアで農家を目指す人がいる中、放送作家から有機栽培農家に転身した成田周平さんは、一際ユニークな存在だ。農業に関する知識と経験がゼロという地点からスタートし、大阪府能勢町に有機野菜農園「成田ふぁーむ」を開くまでに成長。2021年には、欧米で活用されているCSA(地域支援型農業)を取り入れた「のせすく」ビジネスを始動し、有機農業の発展に力を入れている。成田さんが有機栽培農家になったきっかけや、「のせすく」で描く有機栽培農業の未来図を伺った。 有機野菜を育てるのは「日

「目指すのは一つのビジネスではなく、社会の成功」ゼロ・ウェイストな量り売りを、環境意識の高い京都から発信【斗々屋】

無駄や浪費を最小限にし、ごみを出さないようにする取り組み「ゼロ・ウェイスト」。SDGsの普及でワード自体は広まりつつあるが、生活での実践にはまだまだ至らない……という人は多いかもしれない。京都にある日本初のゼロ・ウェイストスーパー「斗々屋 京都本店」は、買い物でそれを体感できる店。商品は個包装されておらず、量り売りで購入。持参した容器かデポジット制の貸出容器で持ち帰ることで、ゴミの出ない買い物ができ、また必要な量だけを買えて無駄がない。生鮮食材は販売し、売れ残る前にお惣菜とし

「地域に根差してきた人々との調和を」店を開け続けて商店街のDNAを残す【いとしまちカンパニー】

べての移住者が、最初から新生活をエンジョイしているわけでない。福岡県糸島市に移住した後原宏行さんもそんな一人。全国から糸島への移住を希望する人が増える中、後原さんは糸島に移住しつつも地域に溶け込めてはいなかったそう。ところがそれから数年、後原さんは糸島の地域活性を目指す『いとしまちカンパニー』代表を務め、住民と連携した取組をするまでに。後原さんの糸島ライフを180度変えた出会い、移住者としてまちづくりに参画する面白さ・難しさを深堀りさせてもらった。 仲間との出会いが変えた糸

過去15年で人口半減した家島の案内人「離島での挑戦が日本の先行事例に」【いえしまコンシェルジュ】

人口減少と高齢化の波は留まることなく、好むと好まざるとにかかわらず日本はその先駆者となっている。離島はその最たる例だ。島民たちは地域の新たな活路を模索し、あるいは複雑な事情を抱えながら本土へ渡る人もいる。日本の有人島は400島ほどあるが、家島という離島をご存じだろうか。兵庫県の姫路港から定期船で30分、瀬戸内海に浮かぶ島である。10年前に家島に移住し、島の案内人「いえしまコンシェルジュ」として、観光ガイドや地場産品の開発、また宿泊施設を立ち上げるなど、幅広く活動する中西和也さ

「農業は儲からない」を覆す、元消防士が目指す「カッコいい農業」【ロックファーム京都】

農業の衰退が叫ばれる中、「農業をカッコよく」をスローガンに20~30代の若手が中心となって働くロックファーム京都。農産物の生産・加工からコンサルティング、企画などを展開するロックファーム京都を立ち上げたのは、元消防士の村田翔一さんだ。農業についてまわる「儲からない」「3K」というイメージを払拭すべく邁進し、会社設立3年目で売り上げ1億円を達成。石井食品と協同開発の「京都舞コーンスープ」は1分間で500袋を記録するほどの人気に(2020年)。農業に新しい風を吹き込む村田さんのモ

「誰かが買わないと解体され更地に……」、空き家を購入までしてまちの再生に尽力する元公務員【つぎと】

福岡県八女市が、空き家のリノベーションで注目を集めている。大規模な旧八女郡役所をリノベートし、酒屋や絵本カフェで賑わう空間に蘇らせたのが2019年のこと。さらに国選定の八女福島伝建地区など伝統ある町並みを利用し、NIPPONIA HOTEL 八女福島商家町もオープンした。空き家をリノベーションしてまちを再生することは、八女市のまちづくりの鍵となっている。そのキーパーソンのひとりが北島力さん。八女市役所に勤務しながらまちの再生に尽力し、退職後の今も活動を続けている人だ。北島さん

「炙ることでさらに美味しくなった」、寿司として堪能する稲取金目鯛【魚八寿し】

伊豆半島東海岸の中央に位置する東伊豆町は、豊かな海の幸に恵まれている。東伊豆町の名産品「稲取キンメ(稲取金目鯛)」は、ブランド金目鯛として全国に多くのファンがいる最上級品だ。金目鯛は煮付けにして食べるイメージが強いが、東伊豆町稲取で金目鯛の握り寿司が評判の名店を発見。稲取キンメの美味しさの秘訣を辿りながら、新感覚の金目鯛の握り寿司を味わおう。 知る人ぞ知る東伊豆町「稲取キンメ」金目鯛といえば、全国の漁獲量のうち約8割近くを伊豆半島周辺が占めている。特に東伊豆町稲取の金目鯛漁

5年や10年で終わらない双葉町再生プロジェクト「僕らの世代がやるべきことは……」【高崎のおかん】

2022年1月、中目黒にレストラン「高崎のおかん」がオープンした。店名の名付け親は放送作家の鈴木おさむ氏。料理と熱燗のペアリングで、日本酒の魅力を世界に発信する粋な店だ。熱い想いを抱く店主の高崎丈さんは、福島県双葉町出身。東日本大震災発生当時は地元で飲食店を営んでいたが、震災後は関東へ移住。がむしゃらに走ってきたこの十年。「高崎のおかん」で仕掛けるチャレンジや双葉町再生への想いを伺った。 料理と熱燗のペアリングは食が生み出す化学反応「高崎のおかん」のコンセプトは「食材・酒・