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そろそろ”医療の正義”の話をしよう②

日本の新型コロナ感染対応について

日本の新型コロナ感染対応を「医療崩壊を招くのでは」と懸念される声があります。しかし、私は、日本人は新型コロナウイルスという新興感染症のある世界に順応しつつ、上手に対応していると思います。

 理由です。小豆畑病院は新型コロナ病床10床を有する小さな病院です。そこでの経験からの考察です。新型コロナ発生以前には、半日に発熱患者さんが50人来てそのうちの40人かインフルエンザ陽性なんてことがざらにありました。しかし、感染能力が高いと言われるオミクロン株でも、現在そんな状態ではありません。これは、日本社会全体がマスク着用や宴会自粛など「感染防御」を身につけた結果だと思います。

 また、新型コロナ以前の小豆畑病院では患者の症状チェックが甘く、インフルエンザ患者が一般外来や病棟に入り込んでいて、病院スタッフが感染することが時々ありました。しかし、現在の「発熱外来の仕組み」や「感染ゾーニング」「入院時の患者チェック」により、ここ2年、そのような感染はありません。これは小豆畑病院が「院内感染防御の基礎知識と方法」を身につけた結果だと思います。このような変化は当院だけではないはずです。なぜなら、新型コロナ発生直後にあれほど問題となった、患者が媒介となってA病院からB病院に新型コロナが拡散されていくというニュースを目にしなくなったからです。

 新型コロナの対応を続けて、日本の社会と医療全体が感染症に対する対応能力を向上させたのではないのでしょうか?

 それだけではありません。日本福祉大学の二木立先生が講演の中で、私の心に残った言葉があります。「コロナ危機は中期的には日本の医療の『弱い』追い風になる」。二木先生は医療経済・政策学がご専門ですから、この言葉の意味には経済的内容が含まれています。しかし、二木先生が強調されていたのは、「コロナで国民が非常時にも貧富や年齢の区別なく、必要な医療を平等に受けられることの大切さに気づき、コロナと闘う医療機関・医療従事者に対する強い感謝の気持ちを持ったこと」が、追い風の最大の理由であるということです。医療に市場経済の導入が叫ばれていた数年前では考えられません。これこそ、コロナ危機が日本社会にもたらした最大の功績かもしれません。

 皆さん、頑張りましょう。もう少しじゃないかと思います。私も頑張ります。コロナ危機が終わった後、日本の医療と社会は、今より強くなっているはずです。

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