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テレワークゆり物語 (155)『3歳まで在宅勤務を努力義務』炎上の"勘違い"

「お母さん、在宅勤務がSNSで、非難ごうごうだよ」
三女に教えられて、びっくり。
リアルタイム検索で見てみると「厚労省、3歳まで在宅勤務を努力義務に」に関するツイートがあふれていた。
しかも「ネガティブ」意見が、93パーセント!

Yahoo!リアルタイム検索で「3歳 在宅勤務」で検索した結果 (2003/5/18)

私が厚労省に感謝し、喜びをnoteの記事にしたところなのに!

しかし、よくよく記事をみると、ネット上の記事を読んでの意見が多く、勘違いがあることがわかった。非難している人たちの一番の勘違いは、

『3歳以下の子どもを自宅で面倒をみながら、仕事なんてできない!』

である。他にも、
「在宅勤務だと、保育園に入りにくい」
「テレワークできない人との格差が広がる」
「育児中だと、在宅勤務で楽できるのはずるい」

といった内容が多い。
一方で、
「3歳ではなく、小学生になってからのほうが必要」
という意見も少なくない。

長年テレワークを推進し、今回のことを喜んでいる私としては、ここは、しっかり叫ぶべきところである。

みなさーん、勘違いしてますよ~!

ということで、個々の意見に対して、ひとつひとつ説明したいと思う。

なぜ"勘違い"が起こったか

"勘違い"が起こった理由は、以下の3つと推測する

  • コロナ禍で「保育園休園&強制在宅」の中、小さな子どもがいる状態で仕事をする大変さが強く残っているのではないか

  • 大手メディアで報道された新聞記事やニュースを参考に、ネットメディアがインパクトのあるタイトルの記事を公開。「ネットメディアの記事だけ」を見て勘違いしてしまったのではないか

  • 報道の元になっている厚労省の会議の内容が、国民に伝わっていなからではないか

ということで、厚生労働省の第7回今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会の資料をもとに説明していきたい。

厚労省の研究会での「今後の仕事と育児の両立支援について(論点案)

子を保育園等に預けている事が前提

この報道を見た多くの国民が、こう思った。
「幼児がいる状態で仕事なんてできるはずがない」

しかし、厚労省の会議の資料には、以下のように記載されている。

育児との両立に活用するためには、就業時間中は保育サービス等を利用して就業に集中できる環境が必要であるため、例えば、保育所等への入所に当たり、居宅内での勤務と居宅外での勤務とで一律に取扱いに差異を設けることのないよう、保育行政において徹底していくことが必要である。こうした条件が整えばテレワークは、フルタイムで勤務できる日を増やせることも含めて仕事と育児の両立に資するものであるため、

厚生労働省 「第7回今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」論点案より抜粋

つまり、「子どもがいる状態で仕事をする」のではなく、「保育園などに預けて仕事に集中する」ことを想定している。
また、そのためには「保育園の入園に差をつけない」ことも記載されている。

"勘違い"を広げてしまったネットメディア

くだんの厚労省の会議が開催されたのは、5月16日(火)。
(国の働き方の動きをしっかり追っている)記者が会議を傍聴し、翌日の記事やニュースとなった。

ここまでは、問題が無かった。
しかし、これらの報道に対し、上記の"勘違い"から、SNS上で非難が相次ぎ、翌日には「SNSで批判的な意見が噴出している」という、ネットメディアの記事が出てきた。

休刊した写真週刊誌「FLASH」の流れを汲むネットメディア「Smart FLASH」に掲載された、岸田総理の写真入りの記事のタイトルは、
岸田首相「子ども3歳まで在宅勤務」に集まる異論
「リモートワークが既得権か」「在宅勤務で子育て無理」さすが「異次元」皮肉の声も』

この記事が、ほぼ同時に、Yahoo!ニュースに転載され、より多くの人の目に留まることになった。

上記2つはタイトルも内容もまったく同じ(転載)だが、「Yahoo!ニュース」には、300以上のコメントがついている(5/19時点)。

時間があれば、ぜひ「Yahoo!ニュース」の記事に対するコメント
ご覧いただきたい。
"勘違い"がいかに多いか。また、少数派ではあるものの、まともな「賛成意見」も多く、非常に勉強になる。

ちなみに、SmatFLASHの記事は、他のネットメディアにも多く転載されている。
以下のようなオリジナル記事もご紹介しておく。

厚労省の資料から見る「正しい解釈」

では、現時点での“正しい解釈”は、どうなのか。厚労省の資料からひもといてみる。

現行の育児休業制度や短時間勤務制度の単独措置義務は維持しつつも、現在、努力義務となっている出社・退社時間の調整などに加えて、テレワークを努力義務として位置付けることとしてはどうか。

また、短時間勤務が困難な場合の代替措置の一つに、テレワークも設けてはどうか。

厚生労働省 「第7回今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」論点案より抜粋

短時間勤務制度」とは、多くの子育て社員(特に女性)が利用してきた、いわゆる「時短」である。子が3歳未満の社員が希望すれば、1日の所定労働時間を6時間にするよう、法律で定められている。

一方、「出社・退社時間の調整」(勤務間インターバルのこと?)は、「努力義務」となっている。
つまり、ここに「テレワーク」を追加するという話だ。

そして、もうひとつ。「短時間勤務が困難な場合の代替措置」にも、「テレワーク」を追加する。現在の法律で定めれている代替措置の内容は、以下の3つである

  • フレックスタイム制

  • 時差出勤制度

  • 労働者の養育する子に係る保育施設の設置運営等

短時間勤務ができない場合に、企業が実施すべき項目の中に、これまで「テレワーク」が無かったのだ!

コロナ禍を経て、多くの人がテレワーク(特に在宅勤務)を実施し、子育て中の人がそのメリットを体感したのであるから、今回の「努力義務」と「代替措置への追加」は、至極、当然の流れである。

なぜ「3歳」まで? 小学校までにしてほしい

今回の報道で、SNSには「子どもが小学生低学年のときのほうが、在宅勤務だと助かる」という声が多く寄せられている。

保育園は預けてしまえば、終業時間までお世話をしてもらえる。
しかし、小学校、特に低学年は、早い時間に帰宅する。親が共働きなど、家に誰もいない児童は、「学童保育」を利用するのが一般的だが、保育園と同様、都市部で不足している地域も少なくない。

私も子育て時期は、家で仕事をしていた。小学校の子どもに「お帰り」を言えることは、本当にありがたかった。
娘たちからは「背中向けて、お帰りかい」とディスられたがww、そばにいるだけで母も子も安心感がまったく違った。
世のママさんたちが「3歳まで」でなく、「小学生まで」にしてほしい。というのは、私も100%同意だ。

ただ、「小学生まで」でいいかというと、そうではない。「中学」になっても「高校」になっても、家に大人がいることは、子どもの心の成長にとても重要だろう。

もっといえば、「少子化対策」ではなく、「すべての人」にテレワークという「選択肢」がある社会になってほしい。

なぜ「3歳まで」か。

大きな変化を、急激に起こすのは難しい。
何事も、順序と準備が必要なのだ。

日本は法治国家だ。本気で日本社会を変えるためには、ここから取り組まなくてはいけない。
とは言え、突然、新規に法律にすることは、現実的ではない。
そこで、すでにある枠組みに追加するこで、テレワークによる両立支援を実現しようとしているのではないか。(田澤の想像)
つまり、両立支援策の「短時間勤務制度」という法律に追加する形をとる以上、「3歳未満」という大元の『枠』にに従うのは、仕方ないことなのだ。

資料では、そこに発生するであろう課題(保育園の入園差別禁止やメンタル対策など)へも、しっかり配慮している。

国は、これを第一歩として、テレワークを広げて行こうとしているのではないか。(田澤の超希望的感想)

ここは、あきらめず「小学校まで」と、声を出していきましょう!

『3歳まで』と『3歳未満』の謎

さて、ここまできて、謎にぶつかった。

『3歳まで』って、3歳は入るの?入らないの?

普通に考えると、3歳も対象になるのではないか。
しかし、ここまでお話ししてきたように、現在の法律に準じれば、『3歳未満』となり、3歳は入らないのだ。

最初は報道のミスかなと思ったが、厚労省の文書には、この二つの表現が混在している。

この謎の答えは、「名探偵ゆりりん」に依頼することにする。→細かいことにこだわって調査する私の分身ww

続きをお楽しみに。


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