見出し画像

名勝負 2005年第10回 都道府県駅伝7区 上野裕一郎vs北村聡「必殺死んだふり」

どのスポーツにも「名勝負」と呼ばれるものがあると思うが、陸上競技も例外ではない。誰もが知っている名勝負からコアなファンしか知らないような勝負まで、いくつか紹介したい。
※考察などすべて私の偏見が含まれております。

上野裕一郎(長野)vs北村聡(兵庫)
「必殺死んだふり」

もうこのサムネイルを見るだけで熱くなる。
長年のライバル、長野県代表の上野裕一郎と兵庫県代表の北村聡、ともに大学1年でのアンカー勝負だ。

ご存知の方も多いと思うが、この世代はいわゆる四天王と呼ばれる選手がいる。当時高校生ではほとんどいなかった5000m13分台を持ち大学に入学してきた、北村聡、上野裕一郎、伊達秀晃、松岡佑起の4名だ。私の3つ上の世代なのだが、もう私にとって彼らはヒーローだった。

そんな中でも、この二人は何かと名勝負を生み出してくれる。その代表的なレースがこの都道府県対抗駅伝である。
7区でタスキを受けた直後から並走を続けるが、北村聡と上野裕一郎は見た目や走りも対照的で見るものをワクワクさせる。上野裕一郎は身長が高くストライドも広く躍動感のある走りであるのに対して北村聡は小柄であるが地面をしっかり捉える力強い走り。

上野裕一郎という選手はとにかくレースを面白くしてくれる。トラックレースでは前半後ろに控え様子を伺っているかと思えば中盤に一気に外から加速し先頭を引っ張るようなレースをよくするのでレース全体が締まる。そしてハマると別格の強さを見せる。

その上野裕一郎が最も得意とする戦法が「死んだふり」である。

死んだふりとは、まあ文字通りなのだが、一度キツくて落ちていくor離れてしまうが実はこれは死んだふりで、ゴール前突如血相を変えて切れ味鋭く追い込んでくる。過去、10回は見ているがこれはもう伝統芸能の域だと思う。

また、彼は同年代のライバルや長野県の選手に対して絶対的な強さを誇る。「こいつだけには絶対に負けたくない」というのが表情に現れているのだ。

この2つの戦法(?)を組み合わせて生まれた名勝負は上野裕一郎に軍配が上がる。

残り1kmから北村聡がじわじわと仕掛ける。しかし上野裕一郎も苦しいながらも粘り決定的な差を広げることができない。
残り500mで北村聡の粘り強さが勝ち、かなり苦しい表情をした上野裕一郎が離れ始める。この時解説者が「北村君、もう少し離しておきたいですね。。」という名解説を繰り出しているのも見ものだ。

残り300mで勝負あったか。と思われたその瞬間上野裕一郎のスパートが炸裂。北村聡だけには負けまい。という想いが伝わってくるスパートであった。

ゴールで祈るように見つめるミスター長野、帯刀もこの表情である。

画像1

上野裕一郎といえば激しいガッツポーズも有名だが、今回はかろうじて両手を上げるがかなり疲労が感じられ吠えることもなかった。それだけ極限の勝負だったということだろう。

すでに二人とも引退をしてしまったが、北村聡、上野裕一郎を語る上では欠かせないレースであることは間違いないし、個人的にも陸上競技イチの名勝負だと思っている。

ちなみに私は北村聡の方が好きです。

#名勝負 #駅伝 #陸上競技 #上野裕一郎 #北村聡 #四天王

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?