最後の晩餐

シマ:4月2日

お開きになったあとに、そのまま帰宅するのも呆気ないなと思い一人で飲み直すことがある。
せっかく飲酒しているのだからもう少し酔っぱらわないと勿体ない。という貧乏性が故の悪癖である。
昨夜もそのような習癖で飲み屋のカウンターに一人流れついていた。
左隣には、自分よりひと回りほど年上に見える男性が座っており、マスターとの
会話の内容から「麺好き」ということが伺えた。
男性は、その日の昼に食べたつけ麺の特徴などを嬉々と話しており、そこから派生して今まで食べた麺のTOP3を発表していた。
1位に、南阿佐ヶ谷にある蕎麦屋の「カレー蕎麦」がランクインしたところで、
「ここのカレー蕎麦は、私の最後の晩餐ランキングの二位なんです。お兄さんの最後の晩餐は何ですか?」
と、話を振られたのである。
突然の事で少々驚いたし、「最後の晩餐ってランキング形式とかなの?」とやや疑念を持っていたところに急に球が飛んできたのでドキっとし、「なんですかね、今まで一度も考えたことがなかったので。なかなか難しい質問です。」
と、アドリブ力0のなんとも盛り下がる返答をしてしまった。
そこで話は終わるかと踏んだが、マスターが
「君も三十半ばなわけだし、そろそろ最後の晩餐を決めておいた方がいいんじゃないか?今ここで決めておきなさい。」
と謎の追い込みをかけてきて逃げ場がなくなった。
まぁそれもそうだなと思い、しばらく考え
「中華屋にある卵とトマトを炒った料理。あれにします。それにビールを付けるか白ごはんにするかはその時が来たら考えます。」と結論を話した。
すると、今までまったく会話に入っていなかった逆隣に座っていた若い二人組の女性のうちの片方が、「あの、ビールやご飯をつけたら一品にならないからそれはダメだと思います。そんなのが許されたら漬物も味噌汁もって無限に増やせるじゃないですか。」と急に反論してきた。
(なんだこいつは。いきなり会話に入ってくるや否やルールまで規定して失礼だな。)などとは大人なので思わずに、
「それならお姉さんの最後の晩餐は何ですか?」
と聞くと、
「私は太巻き!中身はなんでもいい。」
と言って帰って行った。

かっこよかった。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?