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【雑記】タイザン5先生と浅野いにお先生の話

現在深夜2時43分。花粉症なのかカビなのか分からないが、喉はかゆいわ目はかゆいわ、鼻はかゆいは鼻水は止まらないわで大変なことになっている。

眠れない時間が続いてこう夜も更けてくると、呆っとした頭にも何か思うところが段々と出てくる。

私のiPhoneはだいたいおやすみモードに設定されているので通知を見落としがちで、特に日付が変わるのと同時に公開されるコンテンツにおいては、日付が変わってしばらくたってからふと通知センターをみて更新に気づいたりすることも少なくない。今日のジャンププラスにおける「タコピーの原罪」もその一つだ。

数ヶ月前までは「名前だけ知っている」漫画の一つで、大学の講義で先輩と話している時にたまたまその話になり、かなりの「鬱漫画」であるという情報を知り得てかなり興味をそそられた。帰ってから例のごとくしばらく忘れていたが、ふと思い出した深夜、当時の最新話まで読んだものだ。当時はまだ、話数も浅かったように思える。

読み始めた当初から一貫して意識していたことが一つある。それが、「鬱漫画」の代表格ともいえる「おやすみプンプン」を描き上げた、浅野いにお先生の存在である。心のどこかで、人の心の闇を漫画に投影するときには浅野先生の技法が一番似合う、それ以外は考えられないという考えがあった。そして、タイザン先生自身も浅野先生に影響を受けている点は少なからずあるのだと、そう思っていた。しかし、それらの考えはつい先ほど完全に破綻した。そして、新たに作りあげられた。(以下、「タコピーの原罪」及び「おやすみプンプン」のネタバレが含まれるのでご注意いただきたい)



いわゆる「鬱漫画」の話の内容としては、どの鬱展開のある作品にも共通して人間の闇、いじめ、虐待など、ある程度まとまったテーマが提示されることが多いが、此度、ジャンププラスにてタイザン先生のロングインタビューを読んで、テーマ及び内容以外に重要な点を完全に見落としていたことに気づく。絵である。

今思えば、絵は漫画になくてはならない存在で、漫画のテーマやシナリオのみが存在していたとしても、それはテーマやシナリオでしかなく、絵が存在しない限りは単なる文章もしくは文字列でしかない。絵はその漫画家の最上のアイデンティティ、命ともいえる要である。それを完全に見ていない風にして、これまでの考えはなされてきたのだ。考えられない。

タイザン5先生はインタビューの中で「表情を大きくかいて」としている。ここで私は、作画の技法が浅野先生とまるで違うということに気づく。浅野先生は、背景に力を入れて作画することに注力し、対して登場人物はデフォルメかつわかりやすいものが多い。おそらく、そういった部分でタイザン5先生と浅野いにお先生は違うのだと思った。しかし、これも違ったのだ。

私は以前から「タコピーの原罪」を読むたびに、この人は浅野いにお先生から多大なインスピレーションを受けているのだろうな、と思っていたのだが、違う、と確証の持てる証拠が見つかった。Twitterである。タイザン5先生がもし浅野先生を意識しているとしたら、フォローしてらっしゃるはずだ。なのに、タイザン5先生のフォロー欄には浅野いにおの文字はない。それだけの理由で、完全にタイザン5先生の眼中には浅野いにお先生はいないものだと勘違いしていた。でもそれは違ったのだ。インタビューの中でタイザン5先生は確実に、「浅野いにお先生が大好きです」と答えられている。ここで、私が一度は構築して破綻した考えが、再び作り上げられたことになる。

つまり、今までの絵の話も、むしろ逆に浅野先生を意識しての「表情」だったのだ。他にも背景をリアルに、キャラはデフォルメかつ繊細に、コマ割りや背景はプンプンに影響など、ありとあらゆる部分に浅野先生の成分が含まれている。背景がさほどリアルに感じない、というのは当たり前で、浅野先生は写真を元に、タイザン5先生は書き込みのみと、制作方法が全くもって違うのだ。さらに、浅野先生は誌面に載っているのを読む前提で見開きのエゲツないイラストを描いたりするが、タイザン5先生はスマートフォンで読む前提で描いている手前、その限られた中でできる限りの工夫を凝らしている。絵柄が違うことは、全くもって当たり前の話だ。

話の内容も同様である。日記では「あのシーン」と濁したが、おやすみプンプンのクライマックスの、愛子ちゃんが首を吊って死ぬあの有名な見開きのことだが、浅野先生はあれを後半も後半のクライマックスに持ってきたのに対し、タイザン5先生は逆も逆で1話に持ってきた。読んだ当時は「本当に少年誌なのか?」と疑ったが、ロングインタビューを読んだ今は「たしかに少年誌向けではないが、少年誌に掲載されている作品としての評価はされるべき」という意見に変わった。本当に素晴らしい。


「タコピーの原罪」の原作者であるタイザン5本人が大好きとおっしゃった「おやすみプンプン」、読んだことのない方は読んでからタコピーを読むと、また違った世界が見えるかもしれない。私ももう一度読みたくなった。あの感動を、あの絶望をもう一度味わいたくなった。

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