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輪島塗の引出物(弟の結婚式その2)

弟は、ちゃんと実家のことを思ってくれているんだなと感じたのが、引出物でした。
誰よりも実家への愛が強かった弟は、僕が実家を継がなかったら自分が継ごうと、大学に入る前はひそかに思っていたみたいです。

今回、やっぱり引出物は、高くても輪島塗が良い!と言って、注文してくれました。
昔は、輪島塗の引出物としての需要はかなりあり、お客様とお話をしていると、いまだに60代、70代の方から「引出物と言えば輪島塗が憧れだった」とよく言われます。
輪島塗の古典的な図案は、日本のおめでたい席を演出するには、確かにステキだと思いますが、残念ながら需要は落ちています。
今回は、弟がデザイン、予算、外箱も全て決めて、オーダーメイドで作りました。

あまり知られていませんが、輪島塗はオーダーメイドができます。
器にこだわりのある方は、自分のライフスタイルに合った器をオーダーされることが多いです。
今回弟は、どんな用途にでも使えるトレイを、少しかわいいデザインで作っていました。
輪島塗は沢山の職人の手を経て、一つの商品になります。
そんな職人の思いがこもった器を、大切な参列者にお渡しするというのは、本当に心のこもった引出物だと、手前味噌ながらに思いました。

この結婚式を終えて思ったことがあります。
それは、輪島塗が僕たち家族を繋いでいてくれたということです。
新郎側として参列した親戚は、かなり多かったです。
これは、祖父母や両親に兄弟が多いためです。

そして、祖父が法人化させた田谷漆器店があったからこそ、全員がここまで生きてこられたということは、間違いありません。
田谷という家族が繋がっていたのはもちろん愛情ですが、その後ろには輪島塗があったのだと気付きました。

そして、そのことを誰よりも理解していたのが弟で、実家の家業から離れた今でも、輪島塗を大切にしてくれています。
そんな祖父が作ったこの家族の大切なつながりに自分よりも早く気付けた弟は、自分より早く結婚するのが当然で、きっと新しい素晴らしい弟なりの家族を作りあげると思います。

輪島塗×田谷に気付けた自分は、輪島塗に感謝して、次の世代に引き継げるようにすることこそが、使命だと感じています。

弟の将来と輪島塗の将来に幸あれ!


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