不死人 「人たる事」

いつの間に人であることを辞めたのかはわからない。

少なくとも1000年前は記憶している。

時代年号的には平安か。

歴史には興味はなくただ命が続くというままに生きていた。

戸籍は同じような存在に頼って適当に作った。
詳しいことは知らないが、命に関して研究してる不思議な友人には、俺の身体は常に細胞更新をし、年齢をずっと保つという特性があるらしい。

最初生まれた時はただの人だったはずだが、気づけばそういう者になっていた。

少しばかり人より回復力が高く、普通の病院では常人より細胞が活性するだけで見破られない。

この命に終わりがあるのかはわからないが、少なくとも劣化はない。

とりあえず不死人と友人は俺の種族をそう位置づけたが、少なくとも俺の種族においての先輩は一定数いるわけで、社会において俺たちほど異質なものもいないし、人間社会において波風は出さない方がいいだろうという話も俺たちのはじまりの人がいっていた。

会ったことはあるが、見た目は妖艶な水商売をしている色気のある女性で、女優のような見た目だった。なるほど。彼女のような美しく知性のあるような女性をある種の男はいうのだろう。

実際その手のスナックをしていた。やっていたのは茨城の水戸の駅前の目立たぬ場所。聞けばおもいがあった男との思い出があるようで、思い出を少しでも残そうというそんな感じらしい。

美味いハイボールを作ってくれたせいか、覚えていた。俺達は人間と大差なく命の制限がないだけで、感情もあるし性交もするし、子供も作れる。大体が普通の子供として生まれるが、1割くらいは俺たちと同じだ。なぜだか知らないが、ある程度年齢を重ねたら不死となる。だがそれは年齢バラバラだ。10代でなる奴もいれば60代でやる奴もいる。

俺は20代前半で不死になった。はじまりのあの人は20代後半か。病に耐性があり、回復力も高い。性的行為であれば20回は平均してできる。

日常に溶けこめる奴は上手いこと社会に溶けこんで、芸能の世界に入ったり、なんらかの会社を起業したり、政界に進出したりする。

永遠を生きるということはあらゆる経験を研磨できること。障害を持とうとも病気を持とうとも時間が無限にあるわけだから、回復や障害の不具合は克服できるわけだ。生来のものであれば困難かもしれないが。

少なくともその不具合がないなかで不死になったわけだから、それは幸いなのかもしれない。

少しだけ面倒だなと思うのは、人間的な感情が消耗していくということだろうか、長い人生、長く生き続けると、人に会いすぎてある種の新しい感情が生まれにくくなってくる。そうするとコミュニケーションがわかりにくなるし、見た目からしてみたら年若い青年なので、空気感が合わないといわれる。

不死になったとしても、仕事や人の関わりからは逃れられないので、煙草も覚えてなんだかんだずっと吸っている。世の中は禁煙ブームなので、ちゃんと吸えた日々が懐かしい。

まあ子供や女性や老人を大事にするというならば、健康に関して考えるのは大事だろうなあと思うが、俺の肺は煙草の煙にすら耐性があるらしく肺はきれいなままだ。

数少ない人間の友人達には羨ましいと言われた。俺としては死という概念を持ち終われる人間達の方が尊いとは思うが、まあ種族的に善し悪しはあるのだろう。

死にたいかと言えば別にだし、生きたいかといえばどうかなあだし、少なくともこの時間に終わりがない限りは地球が終わるまでは生きるのだろうし、人間社会や仕組みが変わればまた合わせるだけだろうし、面倒がないようにまた病死かなんかして名前を変えて戸籍を変えるだけだ。

昔に比べて政府にも俺たちの存在を知る人間達もいて、秘密裏にそういう部署もある。

まあ孤児で毎日を生きるのにも必死だった時代に比べれば天国ではあるし、なんだかんだその時代に合わせて人を観察し生きるのは楽しい。

何が正しいかどうかよりも、人として暮らす日々をそれなりに気に入っているので、今は個人経営の便利屋として過ごしている。なんだかんだ人として生きてきた経験は自分を支えているし、なんだかんだ関わることは嫌いではない。

たまに好みの女性に声をかけ、自宅で過ごしたり、好きな酒を飲んだり、たまに旅したり。元々最低限の生き方しか望んでないから。それなりに気にいってる。

住んでる所は茨城のひたちなか市の端っこの海辺近く大家が今どき珍しい個人経営の喫茶店を下の階でしていて2階を間借りしてる。

8畳一間でベッドがおいてあり、トイレと風呂は別。部屋はフローリングで、キッチンもある。基本的に依頼は喫茶店で受けている。50過ぎのダンディなマスターのブラックコーヒーがお気に入りだ。

家賃は格安の3万、賃貸は趣味だということで安くしてもらえて感謝している。

ちなみに保証人は俺が話していたスナックのママ、なんだかんだ世話になるようになり、今の時代での名前は鈴村賢治(すずむらけんじ)と名乗っており、理由としてはスナックのママも鈴村恵理子(すずむらえりこ)と名乗っており、一応姉と弟ということにしてある。

血液型も偶然にも一緒であり、それならばという事で、顔が似てないのは父親が違うという話をして、祖父母達と両親は死別という話にした。

同じ種族で何年も擬似家族をしているひともいるが、俺は姉だけで十分だ。多分ボロがでる。

まあ今の時代、一応同じ種族もいた方がいいなという事もあり、茨城に住んでる。

実際に世話になっているし、それなりに格闘技とかも習っていたし、割と体つきはガッシリはしているとおもうし。

自分自身かっこいいとは思わないが、それなりに整っているとは聞いたことはある。基本的にデニム系ばっかしか服は着てないんだけどな。

今は便利屋の鈴村賢治として生活してる。休みは不定休で。やりたい時にしてやりたくない時はしない。

そんな感じ。特定の恋人は作らず、気があったひとだけ。身長が190あると言うと、凄いなあと言われる。

好みのタイプは好きになった子。
恋愛対象は女性のみ。
子供は作ったことはないな。

風俗はたまに。
酒は基本的に姉のとこだけ。

車も持たずぶらぶらするのが趣味でたまに東京いったりする。

人の心の移り変わりを見るのが結構好み。
最近の曲はきくが、会話の種にするため。

恋愛相談はよく聞く。

便利な世の中になった反面生きづらくなった感じもするが。

死がない以上は自分なりに生きるしかないね。

なんだかんだ吸血鬼やら人外には会ったことはあるし、人外と夫婦になった奴らもいる。

異界もあるし、出稼ぎで色んな世界を歩く奴もいる。

目に映ることだけや又聞きで聞く話よりも自らが認知するという考えも大事かもね。

俺は永い時間過ごしてるが、確定的なものはないなと感じてるよ。まあ確定的なものとして扱うのも自由なんだけどさ。

永遠があろうがなかろうと、腹が減れば飯を食うし、やりたくなったらやるし、寝たくなったら寝る。

世の中は都合のいいことばかりできてるし、自分が判断したことでしか動けないのもたくさんあるし、自分を変えるだけでも人は変わることもある。

絶対的な答えばかり求めても意味がないなあとも思うわけで、いちいち受け入れられないものまで精神を消耗する必要もないからなあ。

まあ俺達は不死で、ああ年齢も変わらないから不老もあるか、それだけで、基本的に人間と大差ないよ、まあ回復力が高いだけで鍛えれば人間以上の力は出るだろうが。

魔法やらなんか特殊な技とかはないし、とりあえず致命傷負えば死ぬからな。

永い人生に精神壊して死んだ同類も度々いる。

俺は基本的に孤児だったし、人間社会で過ごせるだけの関係があればいい。

まあ仲良い奴は居るが先に死ぬからな。
ならそいつらが死ぬまでに楽しいことをしてやろうぐらいはあるが。

気楽にいるのが1番いい。

今の世の中は簡単な関係なら繋がれるからな。
だからインスタントでいいといえるけれど。

とりあえず俺は美味い珈琲と美味い煙草があればいい。銘柄はSEVENSTAR。色々変えたがこれに落ち着いた。

とりあえずこの物語は不死である鈴村賢治と取り巻く人間達の話って感じです。

まあ独白みたいな感じなんで見づらいかもしれないが、気が向いたら書いてくよ。

発達障害当事者の詩人が色々と経験しながら生きていくかんじです。興味あれば支援してくださるとありがたいです