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#タクシードライバーは見た「誰でも救うタクシー業界」

「○○さん亡くなったってよ」
タクシー会社では珍しい話ではない。
先週まで元気にお酒を飲んでいたような人がぽっくりと亡くなるなんて話はよくある。
今はコロナの影響でどこでもそんなことがあり得るが、タクシー会社にはとってはそれで驚くことはない。60を超えたおじちゃんたちだって沢山いる。
ぽっくりがあると言うだけではない、職場で老いを見ることもある。
それはタクシー会社ならではのことだと思う。

ならでは、なんて良いことかのような表現に聞こえそうだが、もちろん嬉しくはない。
僕は入社から4年ほど経つが、4年前から今まで亡くなった人もいるし、身体がやせ細り、出会った頃より段違いに表情が変わり生気が失われているおじちゃんを見ることもある。

更に言うならば、そんなおじちゃんたちにとって居場所はここしかない。
身体を悪くして辞めていったおじちゃんの中には、家族と連絡を取れない状況で1人で暮らしているという方もいる。
この先、ずっと一人で死ぬまでこの状況が続くだろう。

なんというか、SNSやネットを利用したサービスはどんどん普及するし次から次へと世の中は進化していくがその波が及ばないような場所って存在する。
社会に上手く適合出来ない人のためのセーフティーネットを深夜のドキュメントで見たことあると思うが、タクシー業界も一種のそういった存在とも言える。
タクシー運転手は職を失った人や失敗した人がなる職業といったイメージがあるが、それは事実。
悪く言いたい訳ではなく、取り繕ったってしょうがない。
人手不足の影響で若年の採用を積極的に行っているし、
「稼げる」と謳っている人材紹介業の広告もよく見るが
実際のところ、歩合で収入が変動するため大卒1年目から600~700万だって可能。
特に都市部はだんだん洗練されてきたイメージもあるが、
そんなのはほんの一部でしかない。
断言して良い。

そんなタクシー業界は雇用を守るための存在としてだけでなく、居場所を失った人にとっての存在でもある。
家族ではない、親戚でもない、会社であるが会社ではない、
そんな居場所として存在している。
よくある考え方でいえば、ラットレースの中であるのだがそれすらも脱落しかけているような、不器用な人もいる。
そういった人を支える職業として存在しているのも事実。

雇用を守ることで、お金を貰っていると言う話も聞く。
だから、会社側から一方的に解雇が出来ないとも。
真相は分からない。

だからといって、タクシー会社が社会の底辺のような闇の中の存在かといえば全然違う。
通勤の際、周りにいる鬱屈した表情の大人たちのような人は中々いない。
少なくとも自分の会社の中では見かけない。
仕事終わりの疲れた表情は見る事はあるが。
朝の通勤で満員の中疲れて、会社に行き、残業をし、帰っても自分の時間がない中また明日会社に行く。
その中には人間関係の悩みだって存在するだろう。
そんな日々を送るよりも断然良い収入を得て、快適な日々を送れると捉える人だっている。

それを外から見ると「職を失った人や失敗した人」となるのかもしれないが、そのように見る方だっていつどういう状況に立たされるかは分からない。
少なくとも、どれだけタクシー会社を底辺と言い、蔑んだとしても
そんな人も救う準備が出来ているのがタクシー業界。

知れば知るほど面白い業界もだと感じる。


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