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ガーシー議員が除名になった時、国家賠償請求は出来るのか?
※お知らせ※
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こんにちわこんばんわ。
全ての増税に反対し、全ての減税に賛成する自由人、七篠ひとり(@w4rZ1NTzltBKRwQ)です。
今日はこちらのニュースから。
NHK党から党名を改称した政治家女子48党の大津綾香党首(30)が10日、国会内での定例会見で、同党のガーシー参院議員(51、本名・東谷義和)が除名された場合、国に対して賠償を求める訴訟を起こす考えを明らかにした。
~中略~
続けて「有権者からガーシー個人だけで30万票近くの票を得た中で、それはやはり罰として重いのではないか、ということで国賠をする。国民が選んだ人を国会議員によって罷免される。私たちの声の代弁者として国会議員を送り込んだのに、なぜ代弁者である国会議員が除名されたのか。それが国家に対する国家賠償請求をやるというところ」と説明した。
減税には全く関係のないニュースなのですが、国会と司法の立ち位置を学ぶ良い機会なので取り上げたいと思います。
そういった趣旨の記事ですので、ガーシー議員の除名に賛成か反対かとか民意がどうとかいう話は無関係ですので、そういった議論は他所でお願いします。
さて、冒頭のニュースでもあるように、
ガーシー議員が仮に除名となった場合、党は国家賠償請求を起こす
としています。
この除名処分は、憲法58条2項の
両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。
但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
を根拠に行われる処分です。
一方、憲法55条には
両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。
但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
とも書かれています。
この「両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する」と書かれている通り、
議会には議員資格に関する裁判
というものが存在し、この裁判については各議院の自律権によって「各議院が自主的に決定できる」となっています。
ものすごく簡単に言うと
議員資格に関する裁判は議院で行うものであって、裁判所は判断しない
ということです。
「司法権の限界」といって、憲法55条で定められた「議員資格争訟裁判」には裁判所による司法権は及びません。
司法権の限界
具体的な争訟であったとしても、「他の権利との関係」や「制度上の理由」から裁判所が判断を回避する場合があります。
これを司法権の限界と言います。
下記については、裁判所による司法権は及びません。(裁判所は裁判をしない)
議員資格争訟裁判(55条)
![](https://assets.st-note.com/img/1678530117165-lGUSOYf8Ej.png?width=800)
ということなので
ガーシー議員が仮に除名となったとしても国家賠償請求を起こすことは不可能である
と言いたいところですが、実はそうとも限りません。
なぜなら、除名処分は憲法55条ではなく、憲法58条2項の
両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。
但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
を根拠に行われる処分だからです。
両憲法とも「出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする」というものですが、なぜわざわざ分けてあるのでしょう?
その秘密はどうやら
憲法55条の「議員の議席を失はせるには」
と
憲法58条2項の「議員を除名するには」
の違いにあるようです。
憲法55条は「議員の議席を失わせる資格に関する争訟」の「議員資格」とは「資質」ではなく、「被選挙権年齢を満たしていない」とか「外国籍だった」などの「法に定められた資格」を指すとされています。
一方、憲法58条2項の「議員の除名」は、議院規則を破ったり、院内秩序を乱したりしたことに対してのものです。
そして議員の処分に関して、過去の判例では
議員の除名処分については、司法審査が及ぶ
というものがあり、「国家賠償請求を起こすことは可能」という解釈があります。
「議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らない」として議員の除名処分については、議院内部の話ではなく、司法審査が及ぶとしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1678530778955-zuamiOiUiV.png?width=800)
ただ、前述した判例は地方議員のもので、国会議員の除名に対する国家賠償請求は前例がありません。
なので「国会の議院の自律権」は別レベルの話だとして
ガーシー議員が除名されても司法介入は出来ない
という解釈もあります。
裁判所が参議院の懲罰の効力の是非について判断することは、参議院の議院自律権と正面から抵触するため、「司法権の範囲外」として訴えが「却下」すなわち内容の審理にすら入らず「門前払い」されることが明白です。
なお、最高裁判所は、地方議会の議員に対する懲罰については、「出席停止」「除名処分」については司法審査が及ぶと判示しています(岩沼市議会議員出席停止事件最高裁判決(最判令和2年11月25日)参照)。
しかし、これは、地方議会の自律性は「部分社会の法理」とよばれる理論に基づくものにすぎないからです。
これに対し、国会の議院自律権は、憲法において明言されている強固なものであり、その行使の是非について裁判所が審査することは憲法上「越権行為」ということになります。
したがって、地方議会における懲罰について判示した上記判例は、ガーシー氏の訴えが却下されずにすむ根拠にはなりえません。
これはこれで大いに考えられる話かと思います。
私はこれになるんじゃないかと考えています。
どうであれ、このままいくと除名の回避はほぼ不可能であることと、国会議員の除名に司法が及ぶかどうかの前例はないということ、仮に国家賠償請求が争われるならこういった点が論点になると思って頂けたらと思います。
最後の付け加えておくならば、もし機会があれば別で記事にまとめてもいいですが、ガーシー議員の処分は決して強引なものではなく、手順を踏んで慎重に行われてきました。
また3月8日に用意された本会議での陳謝に登院せず、前日の7日にその代わりにとしてガーシー議員の意思で公開された「陳謝動画」において
「ゆえなく本会議に出席しなかったことにより、院内の秩序を乱し、本院の信用を失墜させたことは誠に申し訳なく、深く自責の念に耐えません。ここに謹んで陳謝いたします」
と自分の口で謝罪し、さらに
できればもう一度だけチャンスを、猶予をいただけたら
と語っていますから、これまでの自身の行動が憲法58条2項の条件を満たしていること、そして8日の本会議場での陳謝が事実上の最後のチャンスだと理解したうえで登院しなかったと指摘されても言い逃れは出来ないでしょう。
ですので仮に国家賠償請求によって司法権が及んだとしても、それが認められる可能性は限りなくゼロだと思います。
ということで、この先しばらくはこのニュースが世間を騒がせると思うので、国会と司法の関係を考えながら報道を追うと違ったものが見えるかもしれません。
この処分の件は登院しなかったことによって「院内の秩序を乱し、本院の信用を失墜させたこと」のみが論点です。
彼にかけられている容疑などの話は全然別の話ですので、混同せずに客観的に見ることが大切でしょう。
あと、私は法律の専門ではありませんので、解釈等違う点があればご指摘頂ければと思います。
では、今日の記事はここまで!
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