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2.昭和のオンナ

「結婚はしないよ」と宣言しているにもかかわらず、合コンの人数が足りないときにはとりあえず独身なので都合良くかり出される。ただ、先日の婚活パーティで仲良くなった女性、ハナシが進み食事くらいどうですかと誘うと「すみません、わたしダンナいるんです」と。オマエなにしにここに来た。

その日のパーティは50~60代とまぁまぁ年齢のいった男女の集まりだった。目をつけたお相手は65歳の美女。小綺麗にしていたので年齢ほどに見えず、まぁ一度はデートしてみるのも良いだろうと「クラブに行きませんか?」と誘ったらオーケー戴いた。

「独り暮らしだからカレー作ると3日も4日も食べているの。元々そんなに料理得意じゃないしね」

「それなら今度お目にかかるときにいくつかオカズ作って冷凍にして差し上げますよ」

「ホント!嬉しいわ-」

なんて会話をしたモノだから、いつも3人分作るオカズを4人分にして一人分をジップロックに入れて冷凍した。でもよく考えたら最近はコンビニで一人分のおかずがスゴイ種類あるからソレでまかなえるんじゃないか?とも思ったが、まぁ、約束したんだからと「筑前煮」「カボチャの煮付け」「肉じゃが」等々年配のヒトが好みそうな5種類の冷凍食品を作った。

当日いつもの席に座って「ハイ、プレゼント」と言って渡すと「え、ホントに!もらって良いんですか?ウレシイ!!」と結構な喜び方をしてくれたのでコチラも『まぁ、たまには年上も悪くないかも』なんてとてつもなく甘い考えを持っていた。

食事も終わりデザートも頂きお腹が満たされた。頃は良しと

「さあ、そろそろ帰りましょうか。もう一軒行きますか?」

なんて軽く誘ってみた。帰って来たのは自分の中にはメモリーされていないセリフだった。

「あのー、ここオゴってもらってイイですか?」

はぁ?

自分の中では『オカズいっぱいもらったからココは私がお支払いします』という言葉が来たら『いや、それは申し訳ないのでワリカンにしましょ。そして次の店はボクにごちそうさせてください』というセリフを準備していた。チョット想像していなかったのと甘い考えも吹っ飛んだのでこんな言葉を投げかけてみた。

「いいオトナなんだから初めてお食事する相手にソレは無いと思います。『せめていくらか払わせて下さい』と言うのが常識ではないでしょうか?」

「えー、いつもオゴってもらっていますもん」

あー、昭和のオンナだ。自分がちょっとキレイだから必ず自分はオトコのオゴってもらう、貢がせる、それが当然で人生過ぎてきた。とうに旬は過ぎているから婚活パーティに参加しても男性から声がかからない。そして、なぜ60過ぎていまだに独身でいるのか自分で分かっていない。そういえばこのヒトのFacebookにまだ王子様は迎えに来るなんてコトが書いてあったわ。

総額1万円ぐらいだったけど「せめて2千円ぐらいは払いませんか?」と言ったらシブシブ払った。もちろんアフターはナシにしたことは言うまでもない。

やたらと軽快なピアノが流れているなと思ったら曲は「Someday My Prince Will Come」邦題は「いつか王子様が」きっと彼女はチヤホヤされた昔が忘れられないんだろうな。

後日彼女のfacebook投稿には「私が死ぬときは親友が手を握ってくれるって言ってくれた」と書いてあった。

あ、やっと現実が見えたのね。王子様は来なかったんだ。

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