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6スケコマシな夜

今日はコンサル仲間の飲み会。いつもの居酒屋からチョット趣を変えてジャズクラブにしないか?と言ったら、みんなノッてきた。8人くらいなので2階席でテーブルを二つ使わせてもらうくらいが良いだろう。このお店は「オカワリいかがですか?」なんて店員に言われず、まぁまぁお客を放置しておいてくれるのでありがたい。

さて、当日。セミナー受講者の質問に答えていたら結構時間が過ぎてしまった。「完全に遅刻だな」と思いながらお店へ急ぐ。店のチーフにもその旨お願いしておいたので、みんなには先に始めてもらっていた。

音符になっているドアノブの扉を開けて2階へ駆け上がる。いつもの面々で貸し切り状態になっていた。「遅いぞ~」「久しぶり~」等々声もかかるが、飲み過ぎて正体無くしている面子も二人くらいいた。そのうちの一人がボクが師匠と仰ぐコンサルタントの坂井先生だった。まぁ酒の席なのでそう真剣な話は出来ないだろうと思ってはいたが、ここまで正体を無くすと話どころではない。帰りの電車は大丈夫だろうかと心配したが、師匠の降りる駅は終点だ。車庫まで行かない限り乗り過ごすことはないから大丈夫だろう。

正体は無くしていないが目の据わっているヤツもいた。スケコマシの中村だ。コイツは女に対していろいろな武勇伝を持っているが、最高はコンビニで初めて会った女性をそのままホテルへ連れ込んだことだ。「袖すり合うも多生の縁」というが、ホントにすり合っただけでモノに出来るテクニックはぜひともコンサルティングして欲しいものだ。

そのヘベレケの中村がボクを見つけて近くに寄ってきた。

「タワダさん!」

うん?

「オレはアンタに言いたいことがある!」

なにを?

「アンタはオレと同じ臭いがする!」

ゲッ、みんなのいる前で言うなよ。と周りを見渡してみると坂井先生はベロベロ状態で居眠りしている。間近で聞いていた新美さんは女性だけど長年の腐れ縁でお互い口説く気もなければ、お互いの本性も熟知しているからただただ笑っている。あとのみんなはそれぞれの話し相手に夢中になっているから聞いていなかったみたいでチョット安心した。

「でもさぁ」

まだなにか言うか。

「オレとアンタの違いが分かるか?」 

???

「オレはアンタの10倍口説く」

すごいな。でもそこまで言われるとなんか対抗したくなってきた。

「オマエほどではないが知り合った女子にはほとんど『クラブに行きませんか?』と誘いはするぞ」

ヤツがニヤリと笑ってこう言った。                                         
「そこだよ」

「うん?」

「ほとんどだろ」

「そうだ・・・あ!」

「そう、オレは知り合った女子全員をホテルに誘う」

「・・・」

「好みかどうかは二の次だ」  
          
なるほど・・好みはどうでもいいんだ・・・ヤレるなら。

                
「そりゃ勝てないわよねぇ」

新美さんがケラケラと笑った。

でもまぁコイツには勝たなくてもイイかな。
負け惜しみかもしれないけど。

BGMに流れていたのは「My One And Only Love(ただひとつの恋)」

いいメロディーだが俺たちとはほど遠い歌だな。

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