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山羊座の結晶 ーアンリ・マティス 【ホロスコープから見る芸術家のひとかけら④】

前回はシーレでした。
否応なしに、内面の葛藤や不安を突きつけてくるタッチや色彩。
鑑賞者もそのうねりの中に入ってしまい、見ていて苦しくなるようなことも。


ですが、今回は打って変わって、

「安定した、純粋な、不安がらせも困惑させもしない美術」を、求め、

「 労苦に疲れ果てた人が、私の絵の前で、平安と休息を味わうこと」を、願い、

自らの作品が、「気持ちの良い肘掛け椅子のようなものでありたい」と願った、アンリ・マティスです。

はー、気持ちのいい肘掛け椅子。
いいですね〜。
座りたいですよね〜。



◎アンリ・マティスという人


そんな癒し発言のマティスさん。
簡単な解説はこちら。

フランスの画家。フォービスムの中心的人物。
色彩と形態の持つ可能性を追求し、20世紀美術の発展に大きな影響を与えた。

『101人の画家』より

「色彩の魔術師」なんて呼ばれています。

気持ちのいい肘掛け椅子を作る魔術師・・・なんかいいですね。

画家でタロットを作るなら、魔術師は肘掛け椅子を作るマティスに決まりですね。


・・・と、話がそれました。


「気持ちのいい」といっても、マティスの絵はふわふわ要素はありません。
ゆるキャラも猫も出ません。
(金魚はよく出てくるようです)

どちらかというと、色彩は極彩色
色の組み合わせも、調和的というより相反したものが多く、ぐっとこちらに迫ってくる強さがあります。

そもそも、「フォービスム」=「野獣派」ですしね。
猫じゃなく、ライオンです。

さて、そんなマティスさんのどこに、「気持ちのいい肘掛け椅子要素」があるのでしょう。


◎マティスのホロスコープ

アンリ・マティス(Henri Matisse)
1869.12.31生まれ    Le Cateau  France                                   
(Astro seek参照)

(Astro Gold より)

山羊座♑️に個人天体(太陽、水星、火星)が集まっています。
とても実直、真面目な人という印象です。

そして、社会的な目的のために頭を使い、個人としてできることを徹底的にやり遂げる強さを感じます。

(もしアセンダントの獅子座♌️の位置を信じるとするならば、ルーラーは太陽。さらに山羊座♑️が強調されます)


実際、マティスの制作に対する姿勢は、真面目そのものだったようです。
デッサンをするときは、対象を真に理解したと思えるところまで何度も(マティスの言葉を借りると「精魂尽き果てるまで」)繰り返したり、
形や色彩についても、自分の表現したいものを生涯かけて追求していきました。

この、積み上げていく感じ。
山羊座♑️を感じますね。

また、名門美術アカデミーの入試に何度落ち続けても、正式入学するまでの5年間ずっと諦めずに挑戦したとか。

不屈。
山羊座♑️を感じます。


また、

「私の芸術があるのは、あらゆる画家のおかげである。私は若いとき、ルーヴルで過去の巨匠たちの模写をし、彼らの考えや技法を学んだ。」

『マティスのロザリオ礼拝堂(巻1)』マティス [作] ; 尾野正晴, 関直子監修・文    より


というように、伝統から学んでいったというところも、山羊座♑️の水星らしい学び方だなと感じました。

で、ですね。
そんな山羊座♑️。
なんでそんなに頑張るかというと、やはり結果に重きを置いているからでは、と思うのです。

目指すべき山がはっきり見えていて、それが高かろうが険しかろうが、そこに実際に登りつくために日々を費やす。

だとすると、マティスにとっての山の頂はどこだったのか。

それを成し遂げた作品はあるのでしょうか。



◎マティスの到達点 ー「気持ちのいい肘掛け椅子」に相当するもの


それについては、マティス自身がこう言っています。

この礼拝堂は私にとっては全生涯の仕事の到達点であり、莫大な、真摯で困難な努力の開花であります。

『マティスのロザリオ礼拝堂(巻1)』マティス [作] ; 尾野正晴, 関直子監修・文    より


《ロザリオ礼拝堂》(1951年 ) 

マティス、最晩年の作品です。

東京都美術館で、
2023年4月27日(木)~ 8月20日(日)に行われている《マティス展》のサイトには、こう解説されています。

最晩年にあたる1948年から1951年にかけて、マティスは、ヴァンスのロザリオ礼拝堂のためのプロジェクトに没頭します。建築、装飾、家具、オブジェ、典礼用の衣装などを含むこの総合芸術のために、マティスは、ドローイング、彫刻、切り紙絵など、これまで探求してきた技法を駆使して、光と色と線が融合する空間の創出を目指しました。

私は、この礼拝堂を画像でしか見たことがありませんが、「気持ちのいい肘掛け椅子要素」をじっくりと堪能できました。

単純化された線、厳選された色彩、色彩を浮かび上がらせる光、その空間。

全てが心地よく、落ち着くのです。

徹底的に目的地を目指し、一見泥臭ささえ感じる山羊座♑️らしいマティスの制作の姿勢は微塵も感じられません。

静かにそこにあって、居るものの心を溶かしてくれるような作品です。

自分の(山羊座♑️的)情熱はひけらかす必要はない、ただ、目指すものを表現しただけだ。

とでも言っているようです。



◎おわりに  ージャック・マリーの言葉


シスター・ジャック・マリーは、晩年の病身のマティスを側で支えた人です。
(修道女となる前、看護士のモニカ・ブルジョアであった頃から、マティスを支え続けてきました)

礼拝堂を作り上げたマティスに、主治医が語った言葉が、彼女の手で残されています。

そんな彼に、主治医は、こんな風に話しました。
「心の底からわいた何かが、表現されていますね。と言うよりも、あなたはこの礼拝堂に、あなた自身を捧げてしまったのでしょうね。」
マティスはこうやって、私たちに、熱意とは、根気とは、意志の力とはどういうものかを、身をもって教えてくれたのです。

『マティスのロザリオ礼拝堂(巻1)』マティス [作] ; 尾野正晴, 関直子監修・文    より


この言葉を見た時、もしかしたら山羊座♑️は、作品に自分自身を表現するのではなく、目指す作品の方に身を投じるのではないかと思わされました。

その姿勢こそが山羊座♑️であり、
だからこそ、その作品は個人的なものではなく、長く長く、普遍的であり続け、これからも多くの人に残っていくのかもしれません。

◎現在見られるマティス展

東京都美術館で現在開かれている「マティス展」では、ロザリオ礼拝堂の4K映像が見られるそう。
一日の光の移ろいを感じられるようです。

体験してみたいです…

終了しました!

☆今はこちらが見られます↓↓↓

切り絵にフォーカスした展覧会!
なんと、ロザリオ礼拝堂が一部再現されて、体感できるらしいですよ。
すごい!!


◎おまけ

マティスのホロスコープはほかにも、移動の多かった生涯や、さまざまな画家たちとの活発な交流などが現れていておもしろいです。
旅行や人々との交流から、制作のインスピレーションを得て変化していくさまは、太陽と水星・天王星・海王星のTスクエアの流れが生きている気がします。